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「伝え方」で声は変わる!「教える力」を実践で学ぶ【ボイストレーナー育成&認定講座【VT-RVレポート第8回】

こんにちは!ボイストレーナーの三浦優子です。 【VT-RV】第2期もいよいよ終盤。今回は、VT代表・桜田ヒロキインストラクターによるフルレッスン見学講義の様子をお届けします。
実際のレッスン映像を、資料と照らし合わせながら丁寧に解説いただいた今回の講義。桜田インストラクターの言葉の選び方や伝え方に触れることで、「教える力」とは、「伝える技術」なのだと実感しました。

チェストボイスの限界点を見極める:バリトン男性の声へのアプローチ

一人目の生徒さんは、声のウエイトが重いバリトンの男性。 事前の【VT-RV】2期生のアンケートでも「バスやバリトンのような低い声で、裏声が開発されていない男性のレッスンが見たい」という声が多く寄せられており、多くのトレーナーが指導に悩みやすいタイプであることがうかがえます。
まずは5toneのAhで声の状態をチェック。 母音の[a]の発音や声の重さに着目しながら、「ここからPULL CHESTになってきているの、わかる?」という言葉とともに、声の変化を一緒に聴き取っていきます。
 
✅ポイント PULL CHEST(プルチェスト)とは?地声(チェストボイス)を、本来の適正音域よりも高音域まで無理に引っ張って使おうとする状態。声を太く、力強く出そうとするあまり、喉に過度な力が入り、柔軟性が失われていく傾向があります。
 
ボイストレーナーとしては、どの段階でこの傾向が出てきているかを“耳で察知”し、適切なアプローチへと切り替えることが求められます。
この生徒さんの場合、地声のサイズ感が一般的な男性よりも大きいことから、桜田インストラクターはファルセット(裏声)を活用したエクササイズを提案していました。 「声のサイズを調整するために、あえて裏声を使う」というアプローチは、“出せる声を育てる”ための下準備でもあり、チェストボイス偏重になりがちな声のバランスを整えるうえで有効です。
とても印象的だったのは、桜田インストラクターがそのエクササイズの「目的」や「意図」を、生徒さん自身にきちんと説明していたことです。

「なぜこのエクササイズをするのか」「どういう意識で声を出せばいいのか」を理解したうえで臨むと、生徒の姿勢も変わり、レッスンの効果が格段に高まっているのが伝わってきました。
VT-RVの講義でも、「先生と生徒の目指す方向性を一致させることの重要性」は繰り返し学んできましたが、今回はまさにその実践を目の前で体感できる貴重な機会でした。
※【関連記事】5toneのAhについては、こちらの記事で詳しく説明しています。

 

経験していない声をどう教えるか?現場でしか得られない「声のデータ」


今回のレッスン前半では、ファルセット(裏声)から地声へと降りていくエクササイズが多く使われていました。 このアプローチには、明確な理由があります。
 
【1】声のウエイトによって必要なアプローチは変わる地声のウエイトが重い男性にとって、裏声と地声をスムーズに行き来するのは簡単ではありません。 喉に力が入りやすく、高音が苦しくなる傾向があるからです。
そこで、一度ファルセットで声を緩め、そこから地声に戻すトレーニングが効果的になります。 声帯の柔軟性を引き出しながら、チェストボイス偏重を整えるアプローチです。
【2】「自分が通ってこなかった声の課題」は、現場で学ぶしかない一方、女性が高音を出す場合、地声のウエイトが軽いため、こうした切り替えの難しさを感じにくいこともあります。そのため、今回のようなアプローチが必須ではないケースもあります。
つまり、自分が通ってこなかった声の課題は、理論だけで理解するのが難しいということ。
だからこそ、レッスン見学や実際の声を聴くことが、自分の“引き出し”を増やす手がかりになります。
【3】経験の差を、理解の差にしないために学ぶこと私自身、ボイストレーナーになりたての頃は、特に男性の生徒さんの指導に苦労しました。
「どうしてこれができないんだろう?」と感じる場面にたびたび直面したのですが、それはまさに、自分がその苦労を体験したことがなかったからです。
当時は桜田インストラクターのレッスンを見学して、声の傾向やアプローチ方法を実地で学んでいきました。今回のバリトンの生徒さんのレッスンもまた、まさにその学びのひとつ。

“自分にないタイプの声”をどう理解し、指導に活かしていくか。トレーナーとしての視野を広げてくれる貴重な体験でした。
 
 

見立てと伝え方で変わる声「Zee」に込められた指導の意図


2人目は女性の生徒さん。ご本人いわく、「息漏れがあるので、声門閉鎖を意識して練習しています」とのこと。 ですが実際に声を聴いてみると、声門はしっかりと閉じている状態でした。
このように、「本人が感じていること」と「実際の声の状態」が一致しないケースは少なくありません。 おそらくこの方は、もともと声門閉鎖が弱かったところから練習を積み重ね、今はきちんと閉じるようになっている。 しかし、その意識が強くなりすぎて、今度は“締めすぎ”に向かっている可能性がありました。
そこで、桜田インストラクターが提示したディレクションが、「ふくよかで豊かな裏声を意識して」。 そして、それを誘導するエクササイズとして提案されたのが「Zee」という言葉でした。
 
✅ ポイント なぜ“Zee”なのか?「Z」という子音は、声門閉鎖を強めやすい音素です。しかし、そこに“ふくよかで豊かな裏声”というイメージを添えることで、実質的には「声門閉鎖を少し緩めてください」というコマンドとして機能します。
意識と身体のバランスを整える、桜田インストラクターの言葉の使い方の妙がここにあります。
 
このように、生徒の「声のタイプ」や「これまでのトレーニングの背景」「今どんな意識で声を出しているのか」を読み取ることで、適切なエクササイズは変わってきます。
VT-RVの講義では、「このタイプにはこのエクササイズがいい」という基礎も学びます。
けれど、実際には誰ひとり同じ声の生徒はいませんし、その日、その瞬間の状態も違います。
実際の声を聴きながら、「この声には、どんなエクササイズが必要か」「どんな言葉で伝えるか」を解説付きで学べるこの講義は、本当に貴重な経験でした。
 
 

「伝える技術」がトレーニング効果を高める

今回の講義では、お二人のフルレッスンを通して、生徒さんの変化のプロセスをじっくりと見学させていただきました。
桜田インストラクターのレッスンで特に印象的だったのは、「生徒さんにしてほしいことを、明確に伝えていた」という点です。 その意図がしっかり共有されていたからこそ、生徒さんの声の変化も早く、トレーニングが効果的に進んでいたように感じました。
また、講義中にはこんな話題も出ました。 「リップバブルができない」「男性で裏声が出ない」といった悩みは、実はボイストレーナーの「伝え方の問題であることが多い」という指摘です。
思い返せば、私自身もトレーナーになりたての頃、リップバブルが一向にできない生徒さんに戸惑った経験があります。 けれど今では、以前できなかった方も、いつの間にか自然にできるようになっていて、「できない生徒さんはいない」と言えるほどになっています。
当時はあまり深く考えていなかったことですが、今回の講義を通して、伝え方ひとつで、生徒の可能性は大きく広がるのだとあらためて気づかされました。
「なぜできないのか」ではなく、「どう伝えればできるのか」。 その視点に立つことが、インストラクターとしての第一歩なのではないでしょうか。
これからも経験豊富な桜田インストラクターがどのように生徒さんに伝えて、どんなエクササイズを行なっているのかを学びながら、 “変化を生み出す伝え方”を追求していきたいと思います。
 
 

次回は、ティーチングクリニックで実践フェーズへ

次回はいよいよ、VT-RVの学びをアウトプットする実践の場、「ティーチングクリニックの体験版」です。 実際に生徒さん役をお招きし、【VT-RV】2期生が「先生役」となってレッスンを行います。
これまでの講義で学んできたアプローチや、言葉の選び方、見立ての視点などを少しずつ組み合わせながら、「自分なりのレッスン」に落とし込んでいく時間になるはずです。
どんな声と出会い、どんなレッスンが展開されるのでしょうか? 新たな学びが広がっていくのが、今からとても楽しみです!
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投稿者プロフィール

三浦優子
三浦優子
大阪音楽大学短期大学部ミュージカルコース卒業
宝塚音楽学校附属宝塚コドモアテネ卒業
幼少の頃からクラシックバレエを習い、毎年行われる発表会やその他数々の公演、業界最大手の舞浜大手テーマパークのショーやパレードに出演。
ダンスパフォーマンスにおいては特に活躍を遂げ、忙しい日々を送ると同時にボイストレーニングを続けるが、自分の悩みを解決できる先生となかなか出会えず「これで上達できるのか?」と不安を感じ、次第に歌を諦めてしまう。
そんな中、発声を科学的に捉え、的確なトレーニングを行えるVTチームの存在を友人から聞き、VTチームのレッスンを受講。
ハリウッド式ボイストレーニングに感銘を受ける。
現在は自身の「踊りながら歌う難しさ」を克服した経験を活かし
「ダンサーとしてミュージカルの舞台に立ちたい」
「ミュージカルに出演しているが、シンガーの枠に入りたい」
という方々を中心としたサポートに向け、勢力的にトレーニングを行っている。
全米ヨガアライアンスRYT200を取得し、ヨガインストラクターとしても活躍中。
クライアント一人ひとりに合った姿勢矯正を行うことにより、発声の改善、呼吸の改善、ダンスの改善を行い、クライアント様から高い評価を得ている。

>>詳しいプロフィールはこちら

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