「ミックスボイス」の正体とは?用語に惑わされない“原因”から紐解く歌声評価法 【VT-RV第3期レポート】
こんにちは。VTボイストレーナーの三浦優子です。3月からスタートしたボイストレーナー養成講座【VT-RV】第3期。
今回レポートするのは、VT代表・桜田ヒロキインストラクターによる「歌声の評価法②」です。
今回の講義で改めて感じたのは、ボイストレーニングにおいて、歌声の評価は“知識だけでは完結しない”ということ。用語や分類に当てはめて考えるのではなく、「声帯で何が起きているのか」をどう捉えるか。その判断軸を、実例を通して学ぶ内容でした。
歌声の評価方法は「知識」と「実技」の往復で深まる

講義の冒頭で、桜田ヒロキインストラクターから、今回の学び方についてお話がありました。現在学んでいる「歌声の評価法」は、知識を積み重ねていく内容です。ただし、それだけで完結するものではありません。
実際に1期・2期の受講生の中でも、講義内容は理解していたつもりでも実技でうまく扱えなかったり、逆に実技を通して一気に理解が深まったりする場面がありました。
スライド1枚分の内容が、実技では1時間に及ぶテーマになることもあります。それだけ「実際にどう聴き、どう判断するか」は奥が深い分野なのです。
講義で得た知識は、実技の中で試されます。その中で、自分の理解の曖昧さに気づくこともあります。実際に扱ってみることで、理解が不十分だった部分がはっきりしていく。そうした気づきを重ねることで、理解はより深まっていきます。
まずは講義で知識を身につけ、そのうえで実技を通して理解を深めていく。 そうした流れで取り組んでいけると良い、というお話がありました。
ミックスボイスの“正体”をどう捉えるか

前回の「歌声の評価法①」では、声種と声のアセスメントツールについて学びました。今回はその続きとして、ボイスタイプについて学んでいきます。
その前段階として、発声時の声帯や喉頭の筋肉の動きについて整理しました。地声・裏声それぞれで優勢になる筋肉や声帯の状態を確認したうえで、音楽ジャンルによる声色の違いを聴き比べていきます。
その中で印象的だったのが、「ミックスボイス」「ヘッドボイス」「ファルセット」の違いについての解説です。これらは人によって定義が異なり、現場でも混乱が起きやすい用語です。今回の講義では、声帯で起きていることはあくまで「地声」と「裏声」である、という整理でした。
例えばミュージカルの世界では、地声と裏声が同じように聞こえる音色が多くあります。ディズニー映画『アラジン』の曲「ホール・ニュー・ワールド」を例に、どこで切り替わっているのかを具体的に解説していただきました。
一見すると同じ声色に聞こえても、実際には地声と裏声を行き来しています。観客として聴くのであれば地声と裏声が同じような声色という認識で構いませんが、ボイストレーナーであれば、「どこで切り替わっているか」という視点を持つことが大切になります。
また、声のボリュームによっても地声の印象は変わります。パフォーマンスでマイクを使用するジャンルでは、あえてボリュームを抑えながら、狙った声色を作っていくこともあります。この点については、平井堅さんの歌声を例に、実際の音を聴きながら解説がありました。
「ミックスボイス」は定義がさまざまで、専門用語がかえって混乱を招いてしまうこともあります。実際にレッスンの現場でも、「ミックスボイスって何ですか?」と、さまざまな情報を見て混乱した状態で質問されることがあります。
だからこそ今回のように、用語にひっぱられるのではなく「声帯で何が起きているのか」という視点で整理することで、生徒さんにもよりわかりやすく伝えられると感じました。
4ボイスタイプよりも、目の前で起きている「原因」を見る

講義の後半では、ハリウッド式ボイストレーニングでおなじみの4ボイスタイプについて学びました。
【4ボイスタイプ】
①Pull Chest
②Flip
③Light Chest
④Balanced(Mix)
それぞれの特徴について解説がありましたが、その中で特に印象的だったのが、Flipというカテゴリーの捉え方です。
Flipとは、地声から裏声へ移行する際に、声がケロッとひっくり返ってしまう現象を指します。ただ桜田インストラクターは、「Flipはあまり重要ではない」という考えを問いかけました。
音域ごとの状態を見ることが手がかりになるその背景として、まず重要になるのが音域ごとの状態の見極めです。低音・中音・高音それぞれのエリアで、過緊張なのか、あるいは低緊張なのか。 そうした状態を見ていくことで、その人の声の傾向が見えやすくなるという解説がありました。
例えば、地声から裏声に切り替わる際に声がひっくり返る場合。その直前の音で、過緊張が起きているケースが多く見られます。つまり、Flipは原因ではなく、結果として起きている現象です。
「ひっくり返る前の段階で何が起きているのか」に目を向けることで、はじめて適切なアプローチが見えてきます。そのため、あえて4ボイスタイプに当てはめることよりも、「どの音域で、どんな問題が起きているのか」を見ることの方が重要である、という考え方です。
この視点は、これまでの内容ともつながる重要なポイントだと感じました。
声の出力は一つの要因では決まらないまた、近年のハリウッド式メソッドの指導傾向についても言及がありました。声の出力が弱い女性に対して、Light Chestに分類し、強く発声させる指導が行われるケースです。しかし、声の出力が弱い原因は一つではありません。
【声の出力が弱い主な原因】
・声門閉鎖が弱い
・逆に強すぎる
・舌の位置
・喉頭の位置
これらのさまざまな要因が関係しています。
そのため、「声の出力が弱い=声門閉鎖が弱い」と単純に判断するのは危険です。原因を見誤ると、結果として非効率な発声を促してしまう可能性があります。この点も、ボイストレーナーとして、あらためて注意したいポイントだと感じました。
最後に、エラーが起きやすい音程のエリアについての解説があり、この日の講義は終了しました。
講義理解を深める「質疑応答」の時間

【VT-RV】第3期では、新しい試みとして、桜田ヒロキインストラクターによる講義の補足として、平日夜に質疑応答の時間が設けられています。
受講生が講義の中で疑問に感じたことや気になった点について、その場で質問することができる時間です。初歩的な質問からマニアックな内容まで幅広く扱われ、ひとつひとつ丁寧に解説していただきました。
質問内容も、誤嚥に関するものから、これまで扱ったことのない音楽ジャンルへの指導方法までさまざまです。講義中には扱いきれない視点や、声をどう捉え、どう考えていくかといった内容まで踏み込んだ解説があり、理解を深める時間になりました。
また、次回講義に関するヒントも共有され、どのような点に注目して声を聴いていくべきか、事前に意識を持つことができました。
講義とはまた違った角度で学びを深められる、充実した時間だったと感じています。
3期生の方には、引き続きこの質疑応答の時間を活用していただければと思います。
次回は、Vocologyアマンダ・フリン先生の講義をレポート
今回の講義では、「歌声の評価は知識だけでは完結しないこと」「ミックスボイスは用語ではなく現象で捉えること」「発声は分類ではなく原因で見ること」といったボイストレーニングで歌声を評価する際に、重要な視点を整理できました。
次回の【VT-RV】第3期は、アマンダ・フリン先生による第2回目の講義が開催されます。
ニューヨーク大学でVocology(音声学・発声)を専門とされている先生のお話を、前回の「運動学」の学びを踏まえてどのように聞けるのか、今からとても楽しみです。
こちらもまたレポートしていきますので、ぜひお楽しみに!
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投稿者プロフィール

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大阪音楽大学短期大学部ミュージカルコース卒業
宝塚音楽学校附属宝塚コドモアテネ卒業
幼少の頃からクラシックバレエを習い、毎年行われる発表会やその他数々の公演、業界最大手の舞浜大手テーマパークのショーやパレードに出演。
ダンスパフォーマンスにおいては特に活躍を遂げ、忙しい日々を送ると同時にボイストレーニングを続けるが、自分の悩みを解決できる先生となかなか出会えず「これで上達できるのか?」と不安を感じ、次第に歌を諦めてしまう。
そんな中、発声を科学的に捉え、的確なトレーニングを行えるVTチームの存在を友人から聞き、VTチームのレッスンを受講。
ハリウッド式ボイストレーニングに感銘を受ける。
現在は自身の「踊りながら歌う難しさ」を克服した経験を活かし
「ダンサーとしてミュージカルの舞台に立ちたい」
「ミュージカルに出演しているが、シンガーの枠に入りたい」
という方々を中心としたサポートに向け、勢力的にトレーニングを行っている。
全米ヨガアライアンスRYT200を取得し、ヨガインストラクターとしても活躍中。
クライアント一人ひとりに合った姿勢矯正を行うことにより、発声の改善、呼吸の改善、ダンスの改善を行い、クライアント様から高い評価を得ている。
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