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桜田ヒロキ2026年7月25日 5:57 pm

技術を見るのではなく、生徒が見ている世界を見る。

ここ数年、僕がレッスンで一番意識しているのは、
「生徒の耳では、今何が聞こえているのか」
ということです。

例えば、ビブラートが揺れない生徒さん。
その時に「ビブラートを揺らそう」と考えるのではなく、
「この生徒さんは、そもそもリズムを感じられているのだろうか?」
というところに目を向けます。

また、一度音程(同じピッチを繰り返すフレーズ)でも、生徒さん自身が「ここは同じ音程を維持する」という認識を十分に持っていないことがあります。
つまり、技術ができないのではなく、その技術を成立させるための「音楽の認識」がまだ育っていないことがあるのです。

現象だけを見るのではなく、生徒さんが何を聞き、何を認識しているのかを見る。
そうすると、一つの課題を修正しただけなのに、ビブラートやピッチ、リズムなど、複数の課題が同時に改善することがあります。

僕にとって「「できない感覚」を知っていることは、大きな財産でした。
僕は、リズムトレーニングを本格的に始めたのが20代前半。
ピッチトレーニングを本格的に学び始めたのは20代後半です。

だから、
・リズムがわからなかった頃の感覚
・リズムがわかるようになった感覚

そして、

・ピッチが聞こえなかった頃の感覚
・ピッチが聞こえるようになった感覚
その両方を、自分自身の経験として覚えています。

だから、生徒さんが「今どんな世界を見ているのか」「何が聞こえていて、何がまだ聞こえていないのか」を、自分の体験と重ねながら考えることができます。

遠回りだったからこそ、見えるものがあります。

僕は5歳からピアノを習っていたわけでも、幼い頃から音楽教育を受けていたわけでもありません。
音楽的な感覚のほとんどは、大人になってから身につけた「後付け」のものです。
演奏家として考えれば、遠回りだったかもしれません。

でも、ボイストレーナーという仕事では、この経験が大きな財産になりました。
「できなかった感覚」と「できるようになった感覚」。
その両方を知っているからこそ、生徒さんが今どんな世界を見ているのかを想像し、その視点からレッスンを組み立てることができます。

ボイストレーナーの仕事は、技術を教えることだけではありません。
生徒さんがどんな世界を見て、何を聞いているのかを理解すること。
それが、良いレッスンの出発点だと考えています。

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