ボイトレの上達を変える「運動学習」とは?|練習効率を高めるNY発の指導法【VT-RV第3期レポート】
こんにちは。VTボイストレーナーの三浦優子です。先日からスタートしたボイストレーナー養成講座【VT-RV】第3期。今回は、アマンダ・フリン先生による「運動学習」についての講義をレポートします。
この講義は、VT代表・桜田ヒロキインストラクターが、ニューヨーク大学のVocology(音声学・発声学)認定コースで受講し、強く感銘を受けた内容を、共有いただいています。
「運動学習」とは、人が繰り返しの練習を通して、理解したことを体に定着させ、再現できるスキルへと変えていくプロセスのことです。一見するとボイストレーニングとは直接関係がないように思えますが、実は上達を左右する本質が詰まった内容でした。
ボイトレ上達の前提|学習には2つの種類がある

まずは「学習の種類」についてのお話がありました。学習には大きく分けて2つの種類があります。
1️⃣頭で理解する「宣言的学習」
「宣言的学習」とは、言葉や図解、論理的な説明によって 理解し、意識的に思い出せる「知識」として記憶する学習のことです。「なるほど、そういう仕組みなんだ」と、頭で納得する状態です。
2️⃣体で覚えていく「手続的学習」
「手続的学習」とは、繰り返しの練習を通して、意識しなくても再現できる状態へと変わっていく学習のことです。スポーツや楽器、そして歌の習得では、 この状態に到達することがゴールになります。
では、ボイストレーニングには、この2つの学習はどのように関係しているのでしょうか。
実はこの2つは、どちらか一方だけでは成り立たず、「理解」と「体得」が組み合わさることで、はじめて上達につながります。
例えば、発声の仕組みを知っていても、実際に声が変わらなければ意味がありませんし、 なんとなく理解していたとしても、再現できなければ安定した上達にはつながりません。
つまり、「わかる」と「できる」は別のプロセスであり、どちらも必要不可欠なのです。
ボイトレ上達のプロセス|「わかる」から「できる」へボイトレにおいて最終的に目指すのは、「できる」つまり手続的学習の状態です。ただ、その状態に至るまでには、「頭で理解する(宣言的学習)」▶「実際にやってみる」▶「うまくいかない原因を考える」▶「練習を繰り返す」といったプロセスを何度も行き来する必要があります。
講義の中でも繰り返し強調されていたのが、この「練習」というプロセスの重要性でした。ただ回数を重ねるだけではなく、理解と実践をつなげながら積み重ねていくことで、はじめてスキルとして定着していきます。
私も、これまで「練習が大事」ということは理解していたつもりでしたが、今回の講義を通して、なぜ練習が必要なのかを構造として捉えることができました。
ボイトレの練習方法|短時間×複数回が上達を早める理由

続いて、練習方法についての解説がありました。ここで印象的だったのが、「長時間1回」の練習よりも「短時間×複数回」の方が効果的という点です。アマンダ先生は、1日1回長時間の練習をするよりも、1日に3回、15〜20分ほどの練習を行うことを推奨していました。
歌は声帯の疲労の影響を受けやすく、長時間の練習はパフォーマンスの低下につながりやすくなります。一方で、短時間の練習は集中力を保ちやすく、区切りをつけることで同じミスを繰り返しにくくなるため、結果として効率よく習得につながり、心理的な負担も軽減します。
私自身の経験を振り返ってみても、この考え方にはとても納得がいきました。学生時代は長時間練習することもありましたが、途中で集中力が切れてしまうことが少なくありませんでした。限られた時間の中で練習していたときの方が、目的を意識して集中して取り組めていたように思います。
なぜ「レッスンではできたのに、再現できない」が起こるのか

レッスンでは良い成果が出たのに、後で一人でやるとうまくいかない。この現象は、決して珍しいことではなく、多くの人に起こるものだそうです。その理由をアマンダ先生が解説してくださいました。
スキルの習得には「自分で試し、気づき、積み重ねていくプロセス」が欠かせません。その場で一時的にできたとしても、体に定着していない状態では、再現することが難しくなります。
つまり、「できた」という状態と「できるようになった」という状態は別であり、その差を埋めるために必要なのが練習です。練習を重ねることで、はじめてスキルは維持され、安定して発揮できるようになります。
実際に私の生徒さんからも、「レッスンではできたのに、家でやると同じようにできない」と打ち明けていただくことがあります。これまでも感覚的には理解していたことでしたが、今回の講義を通して、その理由をより明確に捉えることができました。
今後は、このようなお悩みをいただいた際には、練習の意味や必要性も含めてお伝えしていこうと思います。
ボイトレ指導の本質|フィードバックで上達が変わる

さらに、フィードバックについても重要なポイントの解説がありました。特に印象的だったのが、ボイストレーナーが生徒さんに行うフィードバックの「タイミング」です。
歌っている途中で伝えるよりも、タスクが終わった後にフィードバックを行う方が効果的だと説明されていました。その理由は、生徒さん自身が「どう感じたか」を整理し、自分なりに解釈する時間が必要だからです。
運動学習においては、ただ正解を与えるのではなく、自分の感覚をもとに理解を深めていくプロセスそのものが学習になると考えられています。
また、指導者側にとっても、生徒さんがどのように感じているのかを知ることは非常に重要です。実際にアマンダ先生のレッスンでは、生徒さん自身が感じたことを言葉にして伝えている姿が印象的でした。
最初の数回のレッスンで「どう感じたか」を問いかけていくことで、その習慣が自然と身についていくそうです。さらに印象的だったのが、フィードバックの内容です。
ポジティブ・フィードバックが上達を加速させる理由アマンダ先生は、ネガティブな指摘よりも、ポジティブなフィードバックの方が学習スピードが上がるとお話されていました。
例えば、新しいエクササイズを行った際に、指導者側としては大きな変化を感じられなかったとしても、生徒さん自身は「声が出しやすくなった」と感じている場合があります。
そのときにネガティブなフィードバックをしてしまうと、生徒さんの感覚を否定することになり、「自分は間違っているのではないか」と不安につながってしまう可能性があります。
私自身も、このお話には思い当たる部分がありました。
学生時代、ダンスや声楽のレッスンでは、できていない部分を中心に指摘されることが多く、褒められる機会はほとんどありませんでした。 当時は「自分のために言ってもらっている」と受け止めていましたが、振り返ると、自信の持ちにくさや、できていない部分に意識が向きやすい傾向には、そうした経験が影響しているのかもしれません。
だからこそ今は、生徒さんに対して「できていること」や「良かった感覚」をしっかり伝えることを意識しています。今回の講義を通して、その大切さを改めて実感し、より一層ポジティブなフィードバックを心がけていきたいと感じました。
自分で再現する力を引き出す指導が、ボイトレの上達につながる

最後に、アマンダ先生は「教えてもらうことを待つのではなく、生徒自身が学んでいくことが大切である」と話されていました。
そのためには、生徒さんが「どう感じているか」を大切にすることが欠かせません。その感覚をもとに学びを深めていくことが、結果としてスキルの定着につながっていくのです。今回の講義を通して、「自分で再現できる状態に導くこと」こそが指導の本質であると、改めて実感しました。
アマンダ先生のレッスンからは、生徒さん一人ひとりを大切にしながら、信頼関係を築き、安心して学べる環境を丁寧につくっている姿勢が伝わってきました。
生徒さんとの信頼関係については、今後の講義でもさらに深く扱われるとのこと。
これからの講義もとても楽しみです。
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投稿者プロフィール

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大阪音楽大学短期大学部ミュージカルコース卒業
宝塚音楽学校附属宝塚コドモアテネ卒業
幼少の頃からクラシックバレエを習い、毎年行われる発表会やその他数々の公演、業界最大手の舞浜大手テーマパークのショーやパレードに出演。
ダンスパフォーマンスにおいては特に活躍を遂げ、忙しい日々を送ると同時にボイストレーニングを続けるが、自分の悩みを解決できる先生となかなか出会えず「これで上達できるのか?」と不安を感じ、次第に歌を諦めてしまう。
そんな中、発声を科学的に捉え、的確なトレーニングを行えるVTチームの存在を友人から聞き、VTチームのレッスンを受講。
ハリウッド式ボイストレーニングに感銘を受ける。
現在は自身の「踊りながら歌う難しさ」を克服した経験を活かし
「ダンサーとしてミュージカルの舞台に立ちたい」
「ミュージカルに出演しているが、シンガーの枠に入りたい」
という方々を中心としたサポートに向け、勢力的にトレーニングを行っている。
全米ヨガアライアンスRYT200を取得し、ヨガインストラクターとしても活躍中。
クライアント一人ひとりに合った姿勢矯正を行うことにより、発声の改善、呼吸の改善、ダンスの改善を行い、クライアント様から高い評価を得ている。
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