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なぜミックスボイスは難しいのか?高音が出づらい理由を解説【ジョン・ヘニー先生 来日WSレポート】

こんにちは!VTボイストレーナーの三浦優子です。VTチームのビッグイベントでもある世界的ボイストレーナーによる来日ワークショップ(WS)が、5月24日・25日の2日間にわたり開催されました。
今回お招きしたのは、ハリウッド式ボイストレーニングの基盤となっているSLS(Speech Level Singing)の元マスターコーチで、ブリトニー・スピアーズなど世界で活躍するアーティストに指導をしてきたジョン・ヘニー先生です。
1日目は4時間に及ぶシンガー向けのWSが開催され、約60名の方が参加されました。今回はその内容を、たっぷりお届けします。

高音が出づらい原因とは?ミックスボイスで解決する3つの悩み


WSの冒頭、ジョン先生は参加者の皆さんに「今困っていることは何ですか?」と質問を投げかけました。そこで挙がったのが、以下のような悩みです。
【参加者の声:3つの悩み】
① 高音が出づらい
② 地声と裏声のチェンジが難しい
③ 声が安定しない

これらの悩みは、「ミックスボイス」を身につけることで、解決できる。
ジョン先生は、そう話してくれました。
ただし、この「ミックスボイス」という定義については、世界でも議論があるそうです。ミックスボイスについて、次の2つの観点から解説がありました。

【ミックスボイスを構成する2つの要素】
1️⃣身体的な要素:声帯という物理的な部分
2️⃣音響学的な要素:声道の中で音波がどのように流れているか

この2つの要素が組み合わさることで、ミックスボイスは作られていきます。

ミックスボイスを作る鍵|CTとTAのバランスミックスボイスは、声帯の使い方と、声がどこで響いているのかという音響のコントロールも関わってきます。ジョン先生からは、身体的な視点からミックスボイスについて解説がありました。
ミックスボイスの身体的メカニズム|輪状甲状筋(CT)と甲状披裂筋(TA)
発声を考えるうえで重要になるのが、輪状甲状筋(CT)と甲状披裂筋(TA)です。

特にミックスボイスを作るには、TA(甲状披裂筋)をコントロールすることが大事になってくるとのことでした。

TAを過剰に使わないためのアプローチ

ここでジョン先生は、TAが必要以上に働かないようにするためのCT優位の発声法や、筋肉の協調性を作るエクササイズの解説をしながら、デモを見せてくれました。
ミックスボイスを作るには、この2つの筋肉のバランスをいかに整えるかが重要になってきます。

ミックスボイスの音響学的メカニズム|共鳴のコントロール
続いて、音響学の視点から「共鳴」について解説していただきました。ジョン先生は絵を描きながら、低音域と高音域では、主に響きやすい場所が変わっていくことを説明してくださいました。
【音域による共鳴の変化】

ミックスボイスでは、この共鳴の場所をスムーズに移動させていくことが大切になります。 ですが、人間の性質上、これが「なぜ難しいのか」を解説してくださいました。
 
【なぜミックスボイスは難しいのか】チェストボイスのとき:舌の奥側の共鳴腔が主に響いています。これは普段、話しているときと同じ感覚でもあるため、コントロールできている感覚になるそうです。
高音域に上がっていくとき: 普段、会話しているときに使われている共鳴腔と違うところも稼働していかなければなりません。すると、安定感がなくなります。
先生によると、「歌うということ」自体が不安定なものでもあり、人の神経系は不安定なものを嫌います。そのため、高音域では安定を求めて無意識に次のようなことが起こりやすくなります。
①TA(甲状披裂筋)を必要以上に使ってしまう
②舌の奥側の共鳴腔に音を留めてしまう
つまり、ミックスボイスが難しい理由の一つは、声の響きが移動する不安定さに対して、体が慣れた感覚に戻ろうとするところにあるのです。
 
母音で共鳴をコントロールする|「あ」と「う」で喉頭の動きを体感歌には共鳴のコントロールが重要であり、これらをコントロールするのに役立つのが母音だとのことでした。
母音によって、声道の形が変わっていきます。ここでジョン先生は喉仏を触りながら「あ」と「う」を交互に発音するワークを実演してくれました。
実際にやってみると、喉頭を上げたり下げたりしようとしていなくても、「あ」の方が喉頭が上がっていて、「う」の方が喉頭が下がっているのを体感できました。
母音の性質を使って喉頭を安定させるエクササイズを教えてくれて、参加者全員で行いました。普段、60名で同じエクササイズを行う機会はなかなかないので迫力もありましたが、ジョン先生のデモ通りに行うことで、高音域に到達しても叫んでいるような方は見受けられず、エクササイズの後は納得されたように頷いている方が何人もいらっしゃいました。
 
「歌うとは、広がること」|緊張ではなく開放の感覚へここでジョン・ヘニー先生が話してくれたのが、歌唱時の身体的な状態についてです。歌うとき、喉頭は必ず上下します。 ですが、これをコントロールできない状態は良くないこと。体が緊張してしまっていきなり動いてしまうのは避けたいことです。
歌唱時に課題がある場合、自分の意識が散漫になったり、体がこわばって収縮してしまう傾向があります。
ジョン先生はこう話してくれました。
「歌うということは、広がること。感覚を開いて、耳で音楽を聴き、エネルギーを開いていくような感覚が大事」
テクニックをマスターしてミックスボイスを安定して使えるようになると、このような感覚につながっていき、体がこわばってしまうこともなくなるというお話でした。
 
 

ライブレッスンから学ぶ|身体の動きと神経系のコントロール


WSの後半では、ライブレッスンが行われました。今回は3名の方のレッスンを見学することができました。特に、2人目の男性のレッスンで印象的だったのが、体を使うようなアプローチがされていたことでした。

①「Pull Chest」になってしまう男性の例男性の悩みは、高音でPull Chest(地声を引き上げてしまう状態)になってしまうことでした。
そこでジョン先生は次のように指導しました。
「頭が風船で空に飛んでいくイメージをして」
身振りをしながら指導するジョン先生に合わせて、男性も同じような身振りをしながら歌っていくと、声の鳴り方も変わっていくのが感じられ、会場からも「おぉ〜!」と歓声が上がっていました。
ジョン先生はこう話してくれました。
「歌は体の動きを司る神経と近いところにあるから、体の動きは大事なんだ」
男性も「思ったより体を使っている」と感想を述べられていました。
 
「声を出さない」という指導方法何回かジョン先生の身振りを真似しながら歌っていくと、途中で上手くいかない場合がありました。そこでジョン先生は、喉の締め付けなどを感じている場合は、いったん止まるように指示しました。理由は「神経系がそれに慣れてしまうから」。
そして身振りはそのままに、声を出さないでイメージトレーニングをさせていました。
ジョン先生はこう話してくれました。
「正しいことができているときに、脳に処理時間を与えることが大事」
何回か身振りのみのイメージトレーニングをして、また歌うととてもよくなっていました。
歌を練習するのに、「何回も声を出して修正していくだけが全てではない」というのは、とても勉強になりました。
ジョン先生は発声や音響学などの知識は豊富ですが、あえて専門知識を全面に出さずに、生徒さんを乗せながら良い方向へ導く指導スタイルをされているのも、とても印象的でした。
 
 

加齢による声の変化へのアプローチ|今の体に「合わせていく」という選択


②声が割れる悩みを持つキャリアのある女性へのアプローチ3人目の方は、これまで数々のミュージカルに出演されている女性でした。「張り切って歌うと声が割れる。年齢とともに声が出づらく、以前のように鳴らないと感じている」というお悩みです。ここで、ジョン先生は次のようにアドバイスをしました。
「今の体で息の量を使ってしまうと、声帯が持たない。だから一歩引いてバランスを見つけること」
そして女性に「今が80%の音量だとしたら、60%に落として歌ってみて」と提案。いつもより抑え気味で歌ったところ、「ひずまず、ピンとなった感じがした」と女性も変化を感じていました。
「そこからちょっとずつ息を増やして、声帯の抵抗を調整していくと良い」
とジョン先生はおっしゃっていました。
 
加齢による声の変化と「合わせていく」姿勢加齢とともに声が出しにくいと感じる方は多くいらっしゃいます。これは声帯などに加齢による変化が起きるので当然のことでもあります。
ジョン先生は、とても前向きなアドバイスをされていました。
「歳をとっていくと絶対に30代には戻れないから、自分が合わせていくしかない。それでも表現の幅というのは絶対にある」
 
還暦を迎えた男性からの質問ここで還暦を迎えた男性から質問がありました。
「年相応の練習方法があるのを教えていただきましたが、これだけは気をつけておいたほうがいいのがあれば教えて欲しい」
ジョン先生の答えは明確でした。
「年齢を重ねてきたら、力で押し切らないこと。筋肉をどのように使うかということが大事」
全身の体力が落ちていくと、声帯の筋力も落ちていきます。年齢とともに肺の弾力性や肋骨の軟骨の柔軟性も低下するので、ブレスに関わるトレーニングをしていくことなど、具体案を提示してくれました。
「筋肉は鍛えることができるから、声帯をちゃんと使う、筋肉をちゃんと使うことを忘れないで」
 
「体は楽器である」という最後のメッセージそして最後に、身体的な健康というのはすごく大事であることも話してくださいました。
「体は人間の器官であり、歌う人にとっての楽器でもあるから」
ジョン先生は発声のことだけでなく、体のことにも触れられていたのがとても印象的でした。
4時間のWSでずっと話されていたり、パワフルに声を出す場面がたくさんありましたが、終始パワフルに声を保たれていたのは、発声のことと体のことの両方を考えられているからではないかと個人的に思いました。
 
 

次回は2日目|【VT-RV生】限定のボイストレーナー向け講義のレポート

ジョン・ヘニー先生の2日目のWSは、VT-RV生限定のボイストレーナー向けの内容です。ここでは1日目でも出てきた加齢による声の変化についても話してくださいました。ボイストレーナーとしてどのように声について考えてレッスンを行っていくか、目から鱗の内容が盛りだくさんでしたので、次回のレポートもお楽しみに〜!

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投稿者プロフィール

三浦優子
三浦優子
大阪音楽大学短期大学部ミュージカルコース卒業
宝塚音楽学校附属宝塚コドモアテネ卒業
幼少の頃からクラシックバレエを習い、毎年行われる発表会やその他数々の公演、業界最大手の舞浜大手テーマパークのショーやパレードに出演。
ダンスパフォーマンスにおいては特に活躍を遂げ、忙しい日々を送ると同時にボイストレーニングを続けるが、自分の悩みを解決できる先生となかなか出会えず「これで上達できるのか?」と不安を感じ、次第に歌を諦めてしまう。
そんな中、発声を科学的に捉え、的確なトレーニングを行えるVTチームの存在を友人から聞き、VTチームのレッスンを受講。
ハリウッド式ボイストレーニングに感銘を受ける。
現在は自身の「踊りながら歌う難しさ」を克服した経験を活かし
「ダンサーとしてミュージカルの舞台に立ちたい」
「ミュージカルに出演しているが、シンガーの枠に入りたい」
という方々を中心としたサポートに向け、勢力的にトレーニングを行っている。
全米ヨガアライアンスRYT200を取得し、ヨガインストラクターとしても活躍中。
クライアント一人ひとりに合った姿勢矯正を行うことにより、発声の改善、呼吸の改善、ダンスの改善を行い、クライアント様から高い評価を得ている。

>>詳しいプロフィールはこちら

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