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フォルマント同調は母音の判別が難しい??!

みなさんこんにちは、VT Artist Developmentボイストレーナー小久保よしあきです!

今回は、前回ご紹介したフォルマント同調について
もう少し説明していこうと思います。

フォルマント同調とは
発声時の基本周波数と、
フォルマントの1番目(F1)の周波数ピークを
あわせることで起こる爆音でした。

ところで、フォルマントというのは、母音によって
そのフォルマント周波数が変わることが知られています。

というかむしろ、

F1とF2の周波数の組み合わせが変わるから、
母音に聴こえるのです。

僕らは、「あいうえお」と言ったとき、
瞬時に移り変わるF1とF2を聴きとって
「あいうえお」という5母音を認識しているんですね。

あれ?

ということは、フォルマント同調って、
本当に歌で成立するの?という疑問が湧きませんでしょうか。

だって

出している音程とF1が合致してしまう=母音のためのF1が奪われてしまい
「あいうえお」を識別できなくなるんじゃないか?
と。

フォルマント同調は歌詞が聞き取りづらい??

結論から言いますと、

かなり識別困難になります(笑)

多くのソプラノ歌手は、その出したい基本周波数に、
その時の母音のF1を合わせることで、
フォルマント同調を成立させ続けるそうです。

従ってまず、F1はどの音程であっても、
母音の知覚の手助けにはならないと考えられます。

その上で更に、フォルマント同調の効果で
基音(基本周波数)のエネルギーが激増するため、
相対的に倍音のエネルギーは小さいものとなります。

つまり、倍音で構成される
F2のエネルギーはF1より相対的に小さくなり、
結果的にF2による知覚もやや不明瞭になると考えられます。

これが、「あいうえお」などの母音の判別が、
フォルマント同調だと困難になる理由です。

音響的に致し方ないのです。

もしあなたの彼女が

「ソプラノのおばさんって、なんて歌ってるのか分かんないよね〜」

って言ったら、

ソプラノ歌手の名誉のためにも、
必ずこの知識を教えてあげてください。

“確実にフラれます。”

高音発声時のフォルマント抽出について

最後に、ひとつ面白い表をお見せしたいと思います。

昨年の日本音声学会の発表で、
プロのソプラノ歌手の母音をフォルマント座標に記したものがあります。

下が880Hz(ラ5)の高音発声時の母音で、
左下では見づらいので右下で拡大されています。

  • 出典元:日本音声学会創立90周年記念大会, 遠藤希美,
    声楽的発声における母音知覚ー声楽経験およびF0の影響ー
  • ソ5(880Hz)では、母音に関係なく、
    F2が約150Hzの帯域内に収まっています(F2がx軸)。

    ようはほとんど同じフォルマント、同じ母音ということです(笑)。

    一般的な母音でいうF2の帯域幅は1000Hz以上あるのですが、
    もしかして、F2もフォルマント同調的な効果があるってことなのでしょうか?

    実はこれ大した話ではなくて、

    この高さになってくると母音に対応する倍音自体が
    1〜2つと少ないため起こる、当たり前の現象なのです。

    母音がどんな形であろうが、エネルギーは倍音にまず集中するので、
    仮に倍音の周波数にF2が対応していなくても、
    880Hzの高音であればF2は1760Hz付近になるでしょう。

    倍音の幅が広すぎて、
    声道形状をフォルマントとして抽出できないのです。

    もちろん基本周波数とF1を合わせるために
    口腔の形状は限定されるでしょうし、
    少ない倍音を活かすためにF2を
    同調させているかも知れませんが、
    そもそもの理由は倍音の幅が広すぎるから。

    そういう意味では他の
    フォルマント同調以外でも近いものがあります。

    高音では、母音判別できるレベルのフォルマント抽出はそもそも困難。

    母音判別をこの音域で明瞭に行える人がいるならば、
    F3以上の調査、子音の影響(子音にもフォルマントがあります)、
    文脈による思い込み、人間の本質的な母音知覚の仕組みなど、
    F1F2を超えた範囲を考慮する必要がありそうです。

    次回は、フォルマント同調をレッスンで
    集中してやらせない理由を説明してみたいと思います。

  • 参照: Johan Sundberg(原著), 榊原 健一(監訳), 歌声の科学
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