桜田ヒロキ2025年7月21日 11:32 pm
【楽曲練習の順番、ちゃんと考えてる?】
「歌が上手くならない…」「練習してるのに成果が見えない…」
そんなときは、どう練習しているかに目を向けてみましょう。
楽曲練習には4つのステップがあり、このうち①〜③のプロセスに、全体の7~8割の時間をかけることが理想です。
⸻
① Listen(聴く)
まずは丁寧に聴くところから。
・伴奏とのバランス
・どこで抑揚がついているか
・ビブラートや間の入れ方
・音のニュアンスや語尾の処理 など
耳を鍛えることで、歌に必要な情報がどんどん見えてきます。
⸻
② Learn(学ぶ)
楽譜や音源をもとに、音楽的な構造や演奏意図を考えます。
・和声とメロディの関係
・なぜそこに表現が入っているのか?
・どんな感情を込めているのか?
「なぜそう歌ったのか?」を仮説でいいので考える習慣を持ちましょう。
⸻
③ Experiment(試す)
ここでは実験的にいろいろな歌い方を試してみます。
・音量のバランスを変える
・タイミングやリズムをずらしてみる
・母音の響きを変えてみる など
この段階で歌が一時的に崩れてもOK。
むしろそこから新しい発見が生まれます。
⸻
④ Play(演奏する)
最後に、これまでの試行錯誤をまとめて、一曲として仕上げていきます。
人前で歌っても恥ずかしくないレベルにまとめながら、今の自分に必要な課題も明確にしていきましょう。
⸻
練習=「歌う」ではない
「とにかく何度も歌えばいい」という練習では、インプットも少なく、改善もしにくくなります。
歌うことは、学びと試行錯誤の集大成です。
だからこそ、まずは聴く・学ぶ・試す、という時間をしっかり取りましょう。
それだけで練習の質が大きく変わってきますよ。
金子 恭平2025年7月21日 10:35 am
【プロでも多い“隠れプルチェスト”】
地声のトーンのまま高音域まで歌えていても、かならずしもミックスボイスが完璧とはいえません。
実は、プロ歌手の方でも、プルチェスト(張り上げ発声)を経由してミックス発声に到達しているパターンが多いのです。
「経由して」とはどういうことでしょうか?
―――――――――
▼声の切り替わりポイント
通常の歌唱音域において、ブリッジ(換声点)と呼ばれる声の切り替わりエリアはふたつあります。
テノールの男性歌手の場合、1stブリッジはD4~G4あたり、2ndブリッジはG#4~B4あたりです。
声帯の振動パターンが本格的に地声振動から裏声振動に変わるのは、基本的には2ndブリッジ以降です。
※女性の場合は、1stブリッジから裏声にチェンジしていく歌唱も多く聞かれます。
―――――――――
▼隠れプルチェストとは
一聴するとミックスボイスが使えている歌い手でも、1stブリッジ付近で音量が上がったり、母音が広がったりしがちです。プルチェストの典型的な症状です。
声帯や声道への負担が大きい発声で、たいていの場合は本人も苦しさを感じています。
この方たちの声は、2ndブリッジに突入するとようやくバランスのとれた――つまり声門閉鎖の加減が適切な――ミックスボイスに聞こえはじめます。
―――――――――
▼対策例
チェストボイス(地声)からヘッドボイス(芯のある頭声)まで、声は段階的に軽くしながら使っていきます。
ちなみに1stブリッジにおける「軽くする」は、音量を落とすことでも、細くすることでも、裏声にすることでもありません。
※練習段階で助けになるなら、あえて小さな声や細い声、場合によっては裏声を出すことは多々あります。
ブリッジングを軽くするための典型的なエクササイズとしては、GeeやGooという発音を使った1オクターブ下降などが挙げられます。
実際には生徒さんの声は千差万別なので、子音、母音、音階を適宜調合して、適切なバランスのミックス発声を体感してもらいます。
―――――――――
▼まとめ
「隠れプルチェスト」は、ある音域でミックスボイスが実現しているという点で、完成間近の発声といえます。
そこまでたどり着いた方なら、1stブリッジもきっと健康的に乗り越えられるようになるはず。
いっしょにがんばってまいりましょう!
田栗ななえ2025年7月17日 9:07 pm
歌に統一感を出すには?!『低音と高音の音色を揃える』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
歌を安定させたり、音色に統一感を出していくために、「舌の位置」と「喉の高さ」がとても大きく関わってきます。今回は、声色の統一感を出すためのポイントを見てみましょう。
ーーーーーーーーーーー
ゆうり先生とスタッフちゃんの「歌の音色を揃えるレッスン」
僕のこと/ Mrs. GREEN APPLE
【今回の課題】
サビの高音から低音に降りてくる時の音色が声がこもってしまていることが勿体無い。
・母音を深く取りすぎているので、声がくぐもって聞こえる
・高音と低音の音色が離れて聴こえる
ーーーーーーーーーーー
◼️原因
①喉がやや下がりすぎている
②舌の位置が奥まっている
◼️ゆうり先生のアドバイス
①全体的に「え」母音に寄せる。
②明るめのトーンで
→「え」の母音を意識してもらうことで、喉の位置を深くならないように調整
→明るめのトーン=舌が少し前にくるところ、を探してもらう
この2つを意識してもらうことで、高音の明るい音色と自然に繋がる低音が出てきました☺︎
ーーーーーーーーーーー
低音は、高音と繋がる音色を探していきたいですよね◎
エクササイズとしては、
1オクターブdown の下降スケールを使うと良いのではないでしょうか。(高音から、ドソミドの並びで下降していくパターン)
※ポイントは、3音目、4音目の音色が綺麗に繋がって聴こえることです☺︎
小野貴之2025年7月14日 5:41 pm
練習すべきは楽曲の最高音ではなく、「問題の起きやすいエリア」💡 !! 〜スピーチレスの練習方法〜
地声と裏声のチェンジのエリアを「プロブレマティックエリア」(問題が起きやすいエリア、以下PMエリア)と言ったりもします。
曲の中で高音がきついと感じている場合、最高音が高すぎてきついと感じていませんか?
実際には最高音というより、このPMエリアに問題が集約していることがほとんどです。
女性の場合はA4, B♭4, B4あたりを指します。(ラ〜シ)
男性の場合はE4, F4, F#4あたりを指します。(ミ〜ファ#)
※さらに高い音域にもPMエリアはありますが大半の方にはここがポイントです。
⸻
今回は実写版アラジンの楽曲、木下晴香さんの歌うスピーチレスを題材にしてお話しします。
1:40あたりからの2番のサビにフォーカスしてみます。
私は、もう これ以上
黙っていられはしない
心の声 あげて 叫べ!
⸻
この中で出てくる最高音はC#5, つまりド#ですが、この音はPMエリアを抜けている音であり、最もフォーカスすべき音はラ〜シです。
⸻
1️⃣「わーたーし⤵︎はーもぉー」
→「ラ, ラ, ソ#⤵︎ファ#, ド#♒️」
2️⃣「これいじょーだー⤵︎まー⤴︎ってー」
→「シ,ド#, ド#, シ, ラ⤵︎ミ⤴︎シ, シ♒️」
3️⃣「いらーれはしーなーい⤴︎」
→「ラ, シ, シ, ラ, ミ, ミ, ファ#⤴︎」
4️⃣「こころーのこえー/あーげーてー」
→「ラ, ソ, ファ#, ラ, ソ, ファ# / ラ⤵︎ソ⤵︎ファ#♒️」
5️⃣「さけべえー!」→「シ, シ, シド#♒️!」
⤴︎, ⤵︎=音程の持ち上げ ♒️=ビブラート
⸻
これを見ると、ラとシをたくさん歌ってることがわかります。
1️⃣行目の「もぉー」=ド#でひっくり返ってしまう方、無理をしてしまう方、
2️⃣行目の最初の文字の「こ」=シでもひっくり返っていませんか?怒鳴り気味になっていませんか?
推奨エクササイズ①:オクターブダウンスケール(画像参照)でPMエリアの音から始まる音階を練習します。
⸻
5️⃣行目の「さけべえー!」→「シ, シ, シ, ド#!」で地声っぽさを諦めてしまう方、無理をしてしまう方、
シの音に連続して綺麗に滞在できるかどうかがトレーニングすべきポイントです。
推奨エクササイズ②:オクターブリピートスケール(画像参照)でPMエリアの音を連続して歌う練習をします。
推奨エクササイズ③:オクターブリピートandサスティーン(画像参照)でさらに伸ばす(ビブラートをかけて)練習をして滞在の力をつけます。
⸻
気になった方はぜひ楽譜を購入して、ラ〜シをどのくらい歌うのかを「視認」してみてください!この楽曲の最難関であるシの音を美しく歌えるように練習してみましょう♬
金子 恭平2025年7月11日 4:11 pm
【鼻呼吸と口呼吸の使い分け】
「歌のときは口から息を吸ってはいけませんか?」
ときおり生徒さんからこんな質問をいただきます。
ボイストレーニングのメソッドによっては、ブレスはかならず鼻から吸うよう指導されることもあるようです。
たしかに、鼻呼吸には以下のような大きなメリットがあります。
1.声帯や声道を健康に保つ
鼻から息を吸うと、空気が温められ、適度な湿度が加わります。
冷たく乾燥した空気が直接デリケートな声帯や咽頭に触れるのを防ぎ、ダメージから守ってくれます。
2.歌の「支え」を作りやすい
鼻呼吸時は自然と横隔膜が下がります。
声門下圧(声帯の下にかかる息の圧力)を一定に保つための「支え(アッポッジョ)」が作りやすくなります。
―――
▼ 実践的な使い分けが上達の鍵
では、歌うときは常に鼻呼吸をするべきなのでしょうか?
わたし個人としては、鼻呼吸と口呼吸を局面によって使い分けることをお勧めしています。
口呼吸のほうが、短時間で多くの息を取り込めます。
曲によってはフレーズ間の休符が短く、鼻からでは充分な息を吸えないこともあるはずです。そんなときは無理せず口を使いましょう。
基本的には「時間的な余裕があるときは鼻呼吸、それ以外は口呼吸」で問題ないと思います。
過剰な力みのない呼吸と発声ができていれば自然とそうなるはずです。
※近年では、日常生活やアクティビティにおいて、鼻呼吸を維持することのメリットが広く知られていますね。わたしも、歌うとき以外はなるべく鼻呼吸でいるよう意識しています。
―――
▼【余談】ディエゴ・フローレスの例に見る呼吸の多様性
ファン・ディエゴ・フローレスという高名なテノール歌手がいます。
彼は歌う曲によって、胸式寄りの呼吸から厳格な横隔膜呼吸まで、その深さを使い分けているそうです。
超一流歌手によるこの証言は、歌唱における「たったひとつの正しい呼吸」が存在しないことを示しているように思います。
楽曲や表現に応じて、最適な呼吸法を選ぶことが大切なのではないでしょうか。
鼻呼吸、口呼吸、横隔膜呼吸、胸式呼吸――何かが間違いなわけではありません。
いろいろと試すなかで、あなたの歌に最適なものを見つけていきましょう!
三浦優子2025年7月11日 3:15 pm
【歌に苦手意識があるダンサーさんへ】
ミュージカルには歌が欠かせません。
たとえダンスがメインの作品であっても、歌えることが求められます。
「ダンスには自信があるけど、歌になると力が入ってしまう…」
そんな方は、普段のダンス中の“身体の使い方”を少し見直してみてください。
★ポイントは【筋肉をしめすぎない】こと
ダンスの指導ではよく
「腹筋しめて」「お尻しめて」「体幹しめて」
という言葉が使われますよね。
でも、この“しめる”=“力む”ことでもあるんです。
普段から筋肉を強くしめるクセがあると、
いざ歌う時にも無意識に力が入りやすくなってしまいます。
★対策ポイントは「身体の流れ」を意識すること
さらに意識を向ける場所を変えてみましょう。
筋肉ではなく、「恥骨」「仙骨」「背骨」など、
“骨”にフォーカスするのがおすすめです!
そうすることで余計な力が抜け、
歌とダンスの感覚が自然に結びついていきますよ!
金子 恭平2025年7月6日 9:52 am
【意外と多い“微フリップ”】
一聴すると地声と裏声がきれいにつながっているのだけど、特定の音域で音程がシャープ(高く外れる)してしまう人たちがいます。
何が起きているのでしょう?
この場合は、声帯が地声パターンで振動すべきところで、早めに裏声パターンに切り替わってしまっているのです。
裏声そのもののクオリティは高いため、スカスカの音ではありません。
しかしこれは、厳しく判定すればフリップ(裏返り)と呼ばれる失敗にあたります。
この症状はボイトレ経験者や独習者に多い印象です。
地声の持ち上げを避けて早めにヘッドボイスにリリースできるようになった段階で、声の開発が止まってしまっているのだと思われます。
―――
対策としては、エクササイズの音域を狭めつつ、換声点付近を地声感覚で歌っていきます。疲労を招きやすいトレーニングです。
地声の弱い人がバランスのいいミックスボイスを手に入れるための訓練は、どうしても筋トレ的な要素が強くなってしまうのです。
「微フリップ」を持つ人は、高音発声に苦労していない(と感じている)ことが多いです。
発声技術を次のレベルに進めるには、失敗の自覚と、それを克服するための強い意志が必要になります。
練習段階においては、換声点を乗り越える際にこれまで以上の努力感を強いられるでしょう。
できればボイストレーナーによる負荷調整のもと、声の開発に取り組むのが望ましいです。
楽しいばかりのボイトレではありませんが、長い目で見た歌手人生がより充実するよう、がんばってまいりましょう!
田栗ななえ2025年7月5日 7:09 pm
【ボイトレで出来上がった声を歌唱へうまく応用するには?!】
ーーーーーーーーーーーーーー
エクササイズが上手にできるようになっても、いざ実際の歌に応用しようとすると「叫んでしまう」、「難しい!」と感じることはありませんか?なぜ難しくなるのか。その理由は、、、
◼️エクササイズと歌唱の違い
エクササイズでは…
• 母音や子音、スケールのパターンが決まっていて、
• 一定のリズムで行うため、
• 比較的“安定した条件”の中でバランスを取りやすいです。
一方、歌唱では…
• 歌詞によって母音・子音の組み合わせが複雑に変化します。
• メロディラインも動きが多く、
• リズムやテンポも複雑になるため、バランスを保つのが難しくなります。
ーーーーーーーーーーーーー
◼️今回の動画での桜田先生のアドバイスする「 エクササイズを歌唱に応用する3ステップ」をみてみましょう。
① エクササイズで歌いやすくなった言葉で、メロディで歌ってみる
例:「Mum Mum Mum」「Nay Nay Nay」など、エクササイズで上手くいった言葉でメロディを歌ってみる。
→ 音程やリズムに集中しやすくなり、バランスが取りやすいです。
② 歌詞を母音だけで歌ってみる
歌詞の中の子音(特にS, H,B,Gなど)のアタック音楽声を邪魔していることがあります。
→ 母音だけでしっかり歌えるかを確認することで、響きの土台を安定させられます。
③ 子音をそっとつける
母音が崩れないように、子音は“そっと”加えます。
→ 母音を中心に置き、子音が響きを壊さないように注意するのがポイントです。
※ 実は、人の耳は「母音の美しさ」を通して声の音色を感じ取っているそうです☺︎ 高い音になる程気をつけポイントです。
ーーーーーーー
◼️『ホームベースエクササイズ』
その時その人にとって一番バランスよく声が出せるエクササイズを、「ホームベース・エクササイズ」と呼びます。
例えば、「マンマンマン」や「ネイネイネイ 」、「ノウノウノウ」など、声の響き・息・喉のバランスが一番取りやすいものです。
歌っていてバランスが崩れたときは、このホームベース・エクササイズに一度戻ることで、再び声を整えることができます。
歌唱で困ったときは、「ホームベースエクササイズ」に戻って、声の土台を確認してみてください。
少しずつ応用の幅を広げていきましょう☺︎