田栗ななえ2025年5月28日 5:45 pm
【サビ感を作っていこう! / リズムや動きの作り方】
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加藤先生と後輩ちゃんのリズムを作っていくレッスンです。
今回の曲は、「Automatic/宇多田ヒカル」。
リーリースされたのは1998年(27年前!)。年月を経てもなおカッコいい曲☺︎ ポイントを確認していきましょう!
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後輩ちゃんのbeforeです。
サビの盛り上がり部分ですが、全体的に少しサラっと流れてしまっている印象があります。Bメロ最後の「Sun will shine〜〜〜」の伸ばしからの、サビ「It‘s automatic」。ここは、「サビきました!」的な感じを出していきたいところです。
加藤先生のアドバイス(ポイントは2つ!)
1.しゃくりでスピード感をつくる。
→ 声を滑らかに上げていく“しゃくり”で、メロディに勢いが生まれます。
2.裏拍を感じていく。
→ ビートの裏側(2拍目・4拍目など)を意識して、リズムにノリを出していきます。
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今回の「しゃくり」で、声の動きを作ることができます。また、「リズム(裏拍)」でも、休符を作ることでフレーズに動きが生まれます。そのリズムにより歌詞が強調される事でサビ感が増してますよね。そして、この「動きを作る」事がグルーヴに繋がり、サビ感の盛り上がりを引き立てます。
リズムの練習をするときには、今回の後輩ちゃんのようにどこの歌詞とリズムがハマるのかを、ゆっくりから確認して試してみてくださいね☺︎
金子 恭平2025年5月28日 5:43 pm
【歌の支えとは?】
歌にたずさわるなかで、多くの人が一度は「支え」という言葉を聞いたことがあると思います。
その意味を正確に理解しているでしょうか?
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「支え」という用語は、イタリアンオペラにおける「アッポッジョ(もたれかかり)」に由来します。
おそらく歴史上もっとも高名なテノール歌手であるルチアーノ・パバロッティが、支えの方法ついてシンプルな教えを残しています。
1.「まず深く息を吸い込み、横隔膜を下降させる」
2.「歌っているあいだ、可能なかぎりこの吸気時のポジションを保つ」
息を吸って横隔膜が下がると、胴体は樽のようにふくらみます。
そのふくらむ力(腹圧)を維持しながら歌うのが、支えということになります。
腹式呼吸や横隔膜呼吸と聞くと、お腹をへこませながら声を出すイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、まったく逆の動きになります。
歌うとき、とくに高音発声時は、声帯の上側と下側の圧力が拮抗していなければなりません。
このとき必要な声帯下圧を維持するために、横隔膜の急な上昇を防ぐ必要があるのです。
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この呼吸と支えにおいて、体のどこを意識するのがよいでしょう?
教え方はさまざまあるようですが、一流の声楽家たちはしばしば「背中」や「腰」を強調します。
とてつもない声を出す日本人オペラ歌手のレッスンを受けていた時期がありますが、その先生の歌唱時の腰(腰方形筋のあたり)を触らせてもらうと、信じられないくらいに大きくふくらんでいるものでした。
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歌以外の分野でも、腹圧を維持した呼吸が推奨されることは多いようです。
ぼくが知っているものだけでも――
◆スタンフォード大学スポーツ医局の山田知生さんが提唱する『IAP呼吸法』
◆尺八奏者の中村明一さんが提唱する『密息』
といったメソッドがあります。
お二方とも本を出版されています。興味深い内容でしたので、歌手のみなさんも読んでみるとよいかもしれません。
桜田ヒロキ2025年5月27日 9:44 am
【その「声の不調」、水分不足が原因かも?】
「歌い出すとすぐに咳払いしたくなる」とか、「喉に痰が絡んでスッキリしない」っていうクライアントさん、実はけっこう多いですよね。
そんなとき、まず確認してほしいのが水分摂取量です。
実際に「お水、どのくらい飲んでますか?」と聞いてみると、ほとんどの方が驚くほど飲んでいません。
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▶︎ 1日に必要な水分量はどのくらい?
目安としては、
体重(kg)× 30〜40ml
たとえば体重50kgの方なら、1.5〜2リットル程度が目安になります。
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▶︎ なぜ水分が大切なのか?
声帯は、例えるなら“湿った薄膜”のような構造。
水分が足りないと粘液が乾燥しやすく、摩擦が増えて声帯の負担もUP。
結果として「ガサつき」や「声量の低下」、さらには「痰がからみやすい」といった症状につながることも。
実際、水分不足が明らかなクライアントさんに、適切な水分補給と基本的な発声をセットで提案したところ、次のレッスンで声の明瞭さ・張りが格段に改善したという例もあります。
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▶︎ レッスン中の水分補給、忘れてませんか?
これから夏にかけては脱水症状にも注意が必要な季節。
「のどが渇いたと感じる前に飲む」くらいの意識がちょうどいいです。
レッスン時には、水分(できれば水や常温のハーブティー)を必ず持参して、こまめに補給できるようにしましょう!
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まとめ
• 声の不調は水分不足が原因のことも多い
• 体重×30〜40mlの水分を目安に
• 小まめな水分補給で声帯を健やかに!
「トレーニングの成果が出ないな」と感じたら、まず楽器(=体)のメンテナンス、チェックしてみましょうね!
金子 恭平2025年5月22日 12:37 pm
【発声エラーは上達をさまたげる?】
効率の悪い発声を繰り返すと体がそれを覚えてしまうので、なるべく非生産的な失敗をしない(させない)ようにする――。
これがハリウッド式ボイストレーニングの基本になります。
しかし、失敗は絶対にNGかというと、そうではありません。
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<失敗なしの練習>
運動学習の分野では、『エラーレス学習』の開発が盛んです。
なるべく学習者に失敗をさせず、最小の反復回数で動作を習得させる方法です。
究極的な形としては、スポーツ競技者にマシンを装着して、無意志で動作させるトレーニングなども行われているようです。
成功したときの体感を、まっさきに獲得させるのが目的です。
「体験したことはできるようになる」という人間の仕組みを利用しているんですね。
ボイトレにおけるエラー回避は、難易度の調整によって実現します。
苦手なエクササイズを避けてメニューを組むことで、失敗を最小限にとどめます。
難所を迂回しながら目的地――ミックスボイスを出すなど――をめざすイメージです。
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<失敗ありの練習>
一方で、失敗の重要性を説く論文も数多く存在します。
たとえばLee氏らによる研究では、「エラーを許容したトレーニングは、練習段階では多くの試行錯誤と苦労を伴うものの、動作記憶保持の点でエラーレス学習よりすぐれている」ことが確認されました。
大切なことですが、Lee氏は「すべての失敗が等価ではない」とも言っています。
ひとつひとつの失敗から学び取るスタンスがなければ、非生産的どころか逆効果な練習になるおそれもあります。
On the Role of Error in Motor Learning
Lee, T. D., Eliasz, K. L., Gonzalez, D., Alguire, K., Ding,K., & Dhaliwal, C.
2016
Journal of Motor Behavior, 48(2), 99-115.
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<理想的な成功と失敗の割合>
ボイストレーナーによって、レッスンスタイルはさまざまです。
難易度を下げてリズムよく進行してくれる先生もいれば、苦手な技術とじっくり向き合うよう促してくれる先生もいるでしょう。
30%程度の失敗率が、学習効率を最大化するという研究もあります(Al-Fawakhiri氏らによる)。
生徒さんたちとのレッスン経験からも、成功7:失敗3はいい塩梅だと感じます。
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<長期的な視野>
ハリウッド式ボイトレでは、特に初学の段階では成功体験を積み重ねることを重視します。そのほうが上達が早いからです。
ですが、仮にミックスボイスが体験できたあとでも、苦手なエクササイズがいくつも残っているような状態ではどうでしょう。それぞれの楽曲におけるメロディと発音の並び、歌う環境や日々の体調の違いに対応できるでしょうか。
長期的には、苦手な技術とも向き合っていく必要があります。
それぞれの発声の悪癖に合わせた、処方箋のようなトレーニングはハリウッド式の魅力です。しかし、本当に発声の上手な人はなんでもできるというのも、また事実なのです。
再現性の高い発声をめざして、いっしょに頑張ってまいりましょう!
三浦優子2025年5月20日 1:59 pm
【首に力が入りやすい方におすすめ!】
歌っていると、首の筋肉「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」が筋張って力んでしまう方、いませんか?
実はこの筋肉、発声には直接関与していないのですが、余計な力みがあると、発声に関わる他の筋肉の働きを邪魔してしまうことがあります。
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そこでおすすめなのが、
「ストレッチしながら発声する」こと!
「胸鎖乳突筋は、そんなに使わなくてもいいんだよ」と、身体に教えてあげましょう。
動画では、胸鎖乳突筋の起始(筋肉のはじまり部分)に指先で優しく触れながらストレッチをしています。
ポイントは
・押すのではなく、そっと“触れる”こと
・起始部に触れることで、余計な力を入れずにストレッチしやすくなること
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さらにこの筋肉、呼吸にも関わる筋肉(呼吸筋)とも言われています。
ここに力みがあると、呼吸が浅くなったり、うまく息が使えなかったりする原因にも。
歌う前のルーティンに、ぜひこのストレッチを取り入れてみてくださいね♪
金子 恭平2025年5月18日 9:53 pm
【やっぱり、はちみつは最強の喉ケアかも?】
歌い手のみなさんにとって、風邪などによる喉や器官の炎症は死活問題ですよね。
こんなときはすこしでも回復を早めたいものですが、役に立つのが『はちみつ』です。
古くから民間レベルでは「喉荒れや咳に効く」とされてきましたが、実際に効果的であるという研究結果が近年たくさん出てきています。
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たとえば、権威ある英医学誌『BMJ Evidence-Based Medicine』に2020年に掲載されたシステマティックレビュー(H. Abuelgasim医師らによる研究のまとめ)です。
はちみつが風邪などの上気道感染症の症状改善に、通常の治療よりも効果的である可能性を示しました。
この研究は14件の研究、1700人以上のデータを分析したもので、はちみつが喉の痛みや咳の頻度を緩和することを裏づけています。
さらに、子どもの咳に対するはちみつの効果を調べた2018年のコクランレビュー(O. Oduwole医師らによる複数の研究の分析)などもあります。
はちみつには、咳止め薬と同程度に咳をしずめる効果があると確認されました。
※ただし1歳未満の赤ちゃんには、乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、絶対にはちみつを与えてはいけません。
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実はぼく自身、この四月に風邪をひいてせきが止まらなくなりました。
早く治す方法を調べるうちに、上記のような数々の論文に行き当たったのです。
はちみつを試してみたところ、これまでにないスピードで咳が引いていった実感がありました。
それ以来、自宅にもレッスンスタジオにもはちみつを常備しています。風邪以外の炎症にも効果があるようですよ。
ちなみに味は苦手です。
三浦優子2025年5月15日 9:57 am
【"身体の力の方向性"を味方につけよう】
「歌っているうちに力んでしまう…」
そんな方にこそ知ってほしいのが“身体の力の方向性"です!
動画では、はるか先生が【骨盤・肋骨・頭】にある「回転の方向」について解説しています。
この3つの回転は、歯車のように連動していて、意識できると、無駄な力みが減り、床をしっかり押せる身体になります。
その結果、床からの反力をうまく受け取り、
声にパワーを乗せることができるようになるんです!
ただし、この“回転”は目に見えない「意識の方向」です。
なので、まずは次の3点を意識してみてください!
・恥骨→床へ向ける
・トップバスト→やや斜め上に向ける
・鼻筋→まっすぐ上へ通す
これらが揃うと、回転の力が働きやすくなります!
※背中が柔らかい方は、トップバストを斜めにしようとする時、胸が前に突っ込みすぎないように注意してくださいね。
まずは今日の立ち姿から、意識してみてくださいね♪
金子 恭平2025年5月11日 7:52 am
【共鳴ってなに?】
「共鳴」という言葉がボイトレ界隈ではよく飛び交いますが、声のメカニズムにおいて正確にはなにを指すのでしょうか。
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声帯で作られた原音は、喉や口を通って唇の外に放出されます。
その通り道(声道)の形状によって特定の周波数帯が強調され、音色と母音が決定されます。
この働きを共鳴と呼ぶのです。
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ボイストレーニングの現場では、「響きをおでこに集めて」「頭のてっぺんを鳴らして」といった指導が聞かれることがあります。
厳密には額や頭頂で音が響いているわけではなく、声の周波数に同調してそれらの骨が震えています。「共振」と呼ばれる現象です。
共鳴そのものは声道で起こります。
大音量で音楽を流すと、スピーカーのそばに置いたアコースティックギターのボディは震えます。これは共鳴ではなく共振です。
――
ちなみにハリウッド式ボイストレーニングでは、特定の体感に導くような指導はあまり行いません。
骨の薄さや各部の敏感さには個人差があるため、誰もが同じ感覚を得られるとは限らないからです。
声を聴きながら、喉頭の高さや舌の位置、唇の開き方を調整することで、適切な共鳴を見つけていきます。これを母音の調整(Vowel Modification)と呼びます。
人間の声は必ず母音を含んでいますので、母音の調整=共鳴の調整と考えて差し支えないでしょう。
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しかし、感覚重視の指導法が間違いというわけでは決してありません。
そこでは「響き」や「共鳴」という言葉は、厳密な定義にとらわれず、発声イメージを喚起するためのスイッチとして使われています。
指導者と生徒の体質が似通っていて、かつ音のイメージをしっかり共有できていれば、最上の結果を得られる可能性も大いにあると思います。
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ボイストレーニングの指導法は多岐にわたり、科学的アプローチを重視するものから、伝統的な経験則や身体感覚を重視するものまで様々です。
何が絶対的に正しいということはなく、個々の学習者によって最適なアプローチが異なるのです。
どのメソッドで発声を学ぶにしても、最適な共鳴を見つけるのは歌手の使命といえるでしょう。