金子 恭平2025年6月12日 10:38 am
【高音発声時の力みの種類と、その対処法】
ボイストレーニングを始めた際に、「力みが強いね」と指摘されることはよくあります。
過緊張発声とひと口で言っても、じつは二種類あることはご存じでしたか?
それぞれの症状に、真逆の対処法が必要になることも多いです。
ご自身の傾向と対策をしっかり把握しておくと、より建設的な自主練習ができるでしょう。
―――
<過緊張発声タイプ1>
声門閉鎖が強すぎて、地声を張り上げてしまうパターン。
対策:
やわらかいヘッドボイスからの下降スケールなどを使って、全体的にテンションを取り除いていきます。
筋肉の稼働バランスとしては、輪状甲状披裂筋が、甲状披裂筋と外側輪状披裂筋を上回る状態を一時的につくってあげます。
―――
<過緊張発声タイプ2>
声門閉鎖が足りないのを、声道を過度に狭くすることで補おうとするパターン。
対策:
短い三音階や五音階を歌うなどして、しっかりした地声発声を獲得します。
甲状披裂筋の活性化が狙いです。外側輪状披裂筋だけに頼った声門閉鎖にならないよう注意します。
入れるべき場所に力を入れることで、余分なテンションは抜けていきます。
―――
注釈:
輪状甲状披裂筋=CT(声帯を薄く引き伸ばし、靭帯の硬さをつくる筋肉)
甲状披裂筋=TA(声帯そのものに含まれる筋肉。収縮し厚みをつくる)
外側輪状披裂筋=LCA(声帯をうしろ側から閉じ合わせる筋肉)
桜田ヒロキ2025年6月9日 10:47 pm
【劇団四季 研究生オーディション対策】
動画審査、どう攻める?現場からのリアル解説!
劇団四季さんの研究生オーディション、今年も発表されましたね!
長年、受験生をサポートしてきたVTチームでは、毎年の合格・不合格データを蓄積しています。今回はその傾向をふまえて、「動画審査」をどう攻略するか、ポイントをまとめてお伝えします!
⸻
■ 劇団四季の楽曲、歌うべき?
「四季で使われている曲を歌った方がいいですか?」
この質問、本当に多いです。正直、VTチーム内でも意見は分かれますが、基本的には:
👉 自信のある曲なら、どんな曲でもOK!
実際、VTチームの生徒さん達は、四季の楽曲以外を歌って合格している方の割合の方が多い印象です。
これは「自信のある選曲=パフォーマンスが安定している」ということかもしれません。
また、審査を担当しているのは現場で活躍している俳優さんや音楽スタッフ。
何百動画も四季の定番曲を聴いているわけで、少し違う選曲の方が耳に残る可能性もあります。
もし、四季の楽曲でチャレンジする場合、彼らが「知り尽くしている楽曲にチャレンジする」と言うハードルの高さも忘れないように、丁寧に仕上げるようにしましょう。
ただし、歌に自信がない場合は、ファミリーミュージカル系のやさしめな楽曲を丁寧に音取りをして歌うというのも一つの戦略です。
⸻
■ 今から新しい楽曲に挑戦するのはアリ?
👉 基本的にはナシ(NG)です!
本番までに自分がどのくらい仕上げられるかが明確でない限り、今から新曲に手を出すのはリスクが高いです。
むしろ、すでにレッスンで磨いてきた曲をさらに深める方が、完成度が上がりやすく安全。
もし去年の動画審査を通過した方なら、そのときの楽曲をさらにブラッシュアップして臨むのがベストです。
※ちなみに、「去年と同じ曲だったらバレるかな?」という心配は不要です。基本的に記録を照らし合わせてチェックされることはないと思ってOK。
⸻
■ ルックスって見られてる?
👉 確実に見られています。
言い方はとても慎重にしますが、“素材”の印象は強く影響します。
もちろん、四季の舞台はキャラクター性が幅広いので“美形でなければNG”ということはありません。ただし:
•メイクや衣装で「美形→コミカル」は演出できても、逆は難しい。
•体型や雰囲気が気になる方は、今からでもボディメイクやヘアスタイルの見直しに取り組みましょう!
オーディションは「挑戦の場」ではなく、「結果を取りに行く場」です。
ルックスも含めて「仕上げた状態」で臨むことが、印象アップにつながります。
⸻
✅ 最後に:動画審査のコツは「安心感」
審査員が見ているのは、「この人、舞台に立っても大丈夫そうかな?」という安心感。
選曲・歌唱・表情・見た目、すべてがつながってその印象を作ります。
焦って新しいことに手を出すよりも、今できるベストを最大限に魅せることが合格への一番の近道です!
田栗ななえ2025年6月7日 7:10 am
恋心をフレーズの緩急で表現しよう!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
課題曲:「桜が降る夜は/あいみょん」
名古屋のなか先生と後輩ちゃんが、フレーズにリズム感を出していくためのレッスンをしています。今回の課題曲は、「桜が降る夜は/あいみょん」。
歌っている歌詞は、
「あぁ 桜が降る夜は 貴方に会いたい、と・・・」。
※まだ微妙な距離感である「あなた」に、桜が降る夜はふと会いたくなる。理由はわからないけれど、私はあなたに恋をしているんだって、確かに感じてしまう…
………というような、淡くて切ない歌詞です☺︎
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
では、声に表情つけていくポイント4つをの見ていきましょう!
①声を入れるところ、抜くところを作る。
→ 音の緩急をつけることで、フレーズの中に動きが生まれリズムを作ります。
→のっぺりした印象が抜け、声に表情が出て来ています◎
②声が強くなりすぎた(喉が上がりすぎた)ところは、喉を下げる
→声が柔らかくなり、聴き手に優しく届きます。
③地声で出せるところをあえて「抜く」。
→優しい切なさが感じられる印象を作れます。
④声を入れたい部分で、母音を広めに調整する。
→無理に地声で押さなくても、地声的なサウンドを作ることができます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どこに声を入れるか/抜くかで、表情もフレーズ感も変わってきます。今回のポイントを参考に、自分なりに「いれる箇所/抜く箇所」のバランスを工夫して、オリジナルの感情表現を作ってみるのもいいですね。
是非試してみてくださいね☺︎
三浦優子2025年6月6日 12:50 pm
【叫んでしまう人、必見!】
スタッフくんが叫ばずに歌えるように、加藤先生とレッスンをしています。
今回は「Gou(ゴウ)」という言葉を使った発声練習に取り組んでいて、
その際に加藤先生は「唇を突き出すように」と指導しています。
実はこの「唇を突き出す」という動き、特に叫びやすい人にとてもオススメのアプローチなんです!
______
唇を突き出すことで、声帯から唇までの声道(せいどう)の長さが伸び、
その結果、共鳴点(=声が響くポイント)が下がるため、
声の音色は落ち着きが出て、深みのある響きになります。
さらに、響きが整いやすくなるため、余計な力みを入れずに発声しやすくなるという効果もあります。
______
また、「Gou」の母音にあたる「ou(オウ)」は、叫んでしまうのを抑制してくれる母音でもあります。
逆に、「a(ア)」母音は勢いよく声が出やすく、叫びやすさを助長する側面があるため、
「Gou」がいつのまにか「Gau」っぽくならないように注意してみてください。
もし「Gau」のようになってしまっているときは、口が横に開いたままになっているケースも多いです。
ぜひ鏡を見て口の形を確認しながら、唇をしっかり前に出すようにして練習してみてくださいね♪
金子 恭平2025年6月5日 2:54 pm
【なぜハリウッド式ボイトレは子音を使うのか?】
ボイストレーニングというと、「アーアーアー」と母音だけで歌うようなイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
一方、Speech Level Singingに由来するハリウッド式ボイストレーニングでは、レッスンで使う発音の多くは「Mum」「Nay」「Goo」など子音込みのものです。
なぜでしょうか?
端的に言ってしまえば、子音によって難易度調整ができるからです。
その理由をご説明します。
―――
子音は、肺から吹き上がる空気の流れを舌や唇でせき止めたり、逆に促すことで作られます。
これがもたらす効果を、もうすこし詳しく考えてみましょう。
―――
まず、声そのものの原音は、声帯二枚が閉じ合わさって空気を圧縮することで生まれます。
声帯は息に対する「ひとつめのドア」というわけです。
このドア(声門)の閉じ加減を音域によって適切に調整できれば、母音だけで低音から高音まできれいに歌えます。
しかしほとんどの発声初学者は、それができずに困っています。
そこで、息をせき止めたり促したりする「ふたつめのドア(子音)」に、発声の手助けをしてもらうのです。
―――
よく歌詞に出てくる子音それぞれの傾向は、以下のようになります。
■息を多く流すもの:Z, F, Sh, H
■息を適度にせき止めるもの:M, N
■息を強くせき止めるもの:G, B, K, T, D, P
―――
以下の動画で、ゆうり先生が子音の効果についても説明してくれています。
ぜひご参照なさってください。
桜田ヒロキ2025年6月2日 10:57 pm
【「どう歌うか?」の先にあるものを教えよう】
僕が米Speech Level Singingのインストラクターだった頃、先輩にこう教わりました。
「“どうやってその技術を身につけるか”を教えるのが、ボイストレーナーの仕事だ」
つまり、“How to(どうやって)”をしっかり体系立てて、生徒が体験として習得できるように導く。
それこそがトレーナーの役目だということです。
⸻
▷ 言葉で理解させるのではなく、体で理解させる
運動学習の観点からも、生徒は説明を聞いて理解するのではなく、できた瞬間に理解するもの。
逆に言えば、言葉だけでいくら説明しても、生徒に“できた体験”を届けられなければ、指導は成立しません。
⸻
▷ 僕が近年重視している「Why(なぜ)」の視点
ここ数年、僕は「How to」に加えてWhy(なぜそれをするのか)を伝えることをとても大事にしています。
たとえば、YouTubeなどでよく見かける「このフレーズでしゃくりましょう」「ビブラートをかけましょう」といった解説。
これらは、What to do(何をするか)のレベルにとどまっていることが多いです。
その技術を持っていない人にとっては、それだけでは何の役にも立ちません。
「どうやってやるか(How to)」がなければ身につかず、
「なぜそうするのか(Why)」がなければ意味を理解できないからです。
⸻
▷ 「なぜそこにしゃくりを入れるのか?」
• それが拍の“強拍”にあたる場所だから?
• 跳躍の先でドラマティックに聞かせる必要があるから?
このように、音楽的・表現的な理由を理解していると、歌はまったく違うものになります。
⸻
▷ Why を伝えなければ、歌が“オリジナルのコピー”で終わる
Why を伝えない指導では、特定の曲・特定のフレーズだけはそれっぽく歌えても、
他の曲になると急に表現が出来なくなる…そんな生徒になってしまいがちです。
⸻
▷ 技術と表現はセットで教えるもの
「How to(どうやって)」と「Why(なぜそれをするのか)」をセットで伝えること。
そして、生徒がそれを実践できた瞬間こそ、本当の意味で歌の喜び・演奏の意義を感じられる瞬間だと僕は思っています。
金子 恭平2025年6月2日 12:26 pm
【発声レベルに合わせた曲選び】
ボイストレーニングの基礎エクササイズと、曲の歌唱は表裏一体です。
エクササイズがそのまま歌唱に役に立ち、歌唱がエクササイズをさらにうまくするような好循環をめざしたいものです。
「歌いたい!」と思える曲を歌うことが上達にもつながりますが、難易度の調整を失敗すると発声バランスを崩してしまいます。
今回は、ボイスタイプ別の曲選びの目安についてお伝えします。
―――
<地声を張り上げてしまう人>
◆特定の音を連発しすぎず、メロディが山なりを描いている曲。
◆中途半端な音域ではなく、いっそ普通の地声では歌えない高さまで到達する曲。
◆難しい音域が、下りのメロディで構成されている曲。
(Da-iCEさんの『CITRUS』など。※要Key調整)
―――
<地声が弱い人>
◆音域が広すぎず、エクササイズで作った地声感覚を持ちつづけられる曲。
◆高い音が出てくる場合は、その箇所が上りのメロディで構成されている曲。
(AIさんの『Story』など。要Key調整)
―――
<急に声が裏返る人>
◆上記ふたつのパターンの両方を、練習の狙いによって行き来します。
◆音域的には、換声点を適度にまたぐ曲を選ぶのが一般的。
(一青窈さんの『ハナミズキ』など。※要Key調整)
―――
お伝えしたような目安を持ちつつ、モチベーションが上がる曲を選べたら最高ですね!
三浦優子2025年5月30日 12:26 pm
【本人の歌い方をマネしてみる】
スタッフ後輩ちゃんと加藤先生のレッスンでは、ヨルシカさんの「春泥棒」を練習中。
加藤先生は、ご本人の歌い方を参考にしながら、スタッフ後輩ちゃんに細かく指導しています。
実はこの「マネをしてみる」という練習、とても効果的なんです!
______
ご本人の歌い方をよく聴いてマネしてみると
・どこで地声と裏声を切り替えているか
・息の量はどれくらいか
・声の強弱や響きの変化
など、普段なんとなく歌っていたり、時には意識しない部分にフォーカスが当たります。
これが、発声の細かなコントロール力を鍛える練習になるんです。
さらに、楽譜には書かれていない「抑揚のつけ方」「リズムの揺れ」「言葉のニュアンス」なども体感できるため、
歌に感情を乗せる“表現力”も自然と磨かれていきます。
そしてもうひとつ!
「そのアーティストが、歌詞をどう受け取って、どんな声色で表現しているか」に気づくことで、歌詞との向き合い方も変わってきます。
______
もちろん最終的には、自分らしい歌い方を見つけていくことがゴールです。
でもその前段階として、「曲を深く理解する」「発声をコントロールする」「表現の幅を広げる」ためのトレーニングとして、マネしてみるのはとってもおすすめです。
ぜひ、お試しください!