レッスン予約

TIMELINEタイムライン

桜田ヒロキ2025年8月30日 9:35 pm

【本当にライトチェスト?無理な閉鎖トレーニングのリスク】

歌の練習では「声門閉鎖(声帯の閉じ方)」がとても大切なテーマです。
最近は「ライトチェスト=閉鎖が弱いから強めるべき」という誤解に基づいた指導を耳にします。
特に女性の声でよく見られる「後方ギャップ」という声帯後方の小さな隙間を、必要以上に矯正しようとするケースです。

実際には、若い女性の約85%以上で後方ギャップが自然に観察されます。
しかも多くは息っぽさを伴わず、健康で問題のない声です。後方ギャップは異常ではなく、女性の発声において一般的な現象だと考えられています。

それを「閉じていないから悪い」と短絡的に判断し、強制的に閉鎖を促すと逆効果になることがあります。
強すぎる声門アタックや、息を押し込むような支えの誤解、長時間の閉鎖トレーニングは、一時的には「閉じた感じ」が出ても、声帯に過度な負担をかけます。
結果として声の硬さや疲労感、声量の低下が起こり、筋緊張性発声障害(MTD)につながるリスクがあります。実際に病院でも「無理な閉鎖トレーニングを避けるように」と指導を受ける例が報告されています。

研究でも、不適切なトレーニングがMTDの原因となることが示されています。
喉を過度に閉じるような練習は、声が硬くなり、疲れやすく、持続力がなくなる「声門過閉鎖パターン」を作り出してしまうのです。
ストロボスコピーでも声帯の振動が制限される所見が報告されています。

重要なのは「閉じていない部分をただ埋めること」ではありません。
後方ギャップは自然で問題のない場合が多いのに対し、前方や紡錘状のギャップは声の不調と関連することもあります。
つまり、声門閉鎖は「どの位置に、どんな形で隙間があるのか」を理解することが大切なのです。

歌手にとって本当に必要なのは、声帯の形や働きを正しく理解し、効率的で楽に声を響かせることです。
無理な閉鎖を目指すのではなく、自然で快適な声の流れを引き出すことが、歌を続けるために一番大切なポイントです。

三浦優子2025年8月30日 9:19 pm

【息漏れしてしまう方】
 
歌っていると息が漏れているような声になってしまう場合、
「息」でコントロールしようとするのではなく、声帯や唇で息の流れを調整することが大切です。
 
なぜなら、呼吸に重要な横隔膜は「吸うとき」にしか能動的に働かず、「吐くとき」に自分でコントロールすることはできないからです。
つまり、息っぽさを改善するには 声帯をしっかり閉じられるようにする訓練 が必要になります。
 
母音や子音を工夫した発声練習も有効ですが、実はフィジカル(身体づくり)からのアプローチも効果的です。
例えば、スクワットやランジといった全身を使う少しハードなエクササイズ。
特に息漏れしやすい女性は、全身の筋力が少なかったり、筋力があっても声にうまく連動していなかったりするケースがあります。
 
そこで全身を使う運動を取り入れることで、体幹や呼吸に関わる筋肉がアクティブになり、喉まわりの働きもスムーズに。
結果として声帯を閉じやすくなり、息漏れが改善しやすくなります。
 
発声でなかなか息漏れが改善されないと感じる方はぜひフィジカルからのアプローチもお試しくださいね♪
 

金子 恭平2025年8月29日 9:55 am

【息は「吐き切らない」のが正解】

VTのボイストレーニングと出会う前は、歌のレッスンで「もっとお腹を絞って息を吐いて!」とよく言われたものでした。
呼気が変換されて声になるわけですから、たしかに吐く息を増やせばよりよい音が出そうなものですよね。

しかし音声学などの知見から、この考え方は正しくないとされています。

―――――――――
歌で呼吸が重要視される本当の理由はなんでしょうか?

それは呼気の量を増やすためではなく、声帯の下側にかかる圧力(声門下圧)を維持するためです。
声門下圧に支えられてはじめて、声帯は効率よく振動し、安定した声を生み出せるようになります。

息を吐き切る歌い方では、フレーズの後半に向けて声門下圧が大幅に下がっていくことになります。
これでは声が不安定になったり、喉に不要な力みが生まれてしまいます。

―――――――――
なぜ昔は、息を吐き尽くすような指導が多かったのでしょう。

一説には、ヨガなどの健康法におけるブレスワークと、歌唱のための呼吸が混同されていたためと考えられています。
ひと口で「呼吸」といっても、心身のリラックスや浄化を目的とする呼吸法と、持続的でパワフルな発声のための呼吸法は、その目的とメカニズムがまったく異なるので注意が必要ですね。

桜田ヒロキ2025年8月24日 6:34 pm

【変声期の子役を支えるために知っておきたいこと】

ミュージカルの舞台に立つ子役にとって、変声期はとても大きな壁です。舞台の中心を担いながらも、「この高い声を失ってしまうのではないか」という不安を強く感じる時期。
親御さんも、子どもが積み上げてきた経験や夢が壊れてしまうのではと心配されるかもしれません。

しかし、変声期は声のトラブルではなく、誰にでも訪れる自然な成長の過程です。声帯や喉の構造が大人へと変化していく中で、以前と同じ発声を無理に続けると、かえって不安定さや声の疲れ、さらには発声障害につながってしまうことがあります。

実際に、変声期前にソプラノで歌っていた少年が、裏声ばかりを使い続けた結果、声の立ち上がりが不安定になり、舞台後半には声が疲れきってしまうケースも見られます。これは「高音を維持したい」という気持ちと、身体の自然な変化との間で生じるギャップが原因です。

大切なのは、「声を失う」のではなく「新しい声へ移行していく」という視点に立つことです。そのためにできるサポートはいくつもあります。

・息と声帯のタイミングを整えて声を安定させる練習
・喉の緊張をほぐす手技療法
・地声を安全に再導入するトレーニング
・声帯への負担を減らす共鳴のトレーニング

これらを組み合わせることで、変声期を安心して乗り越え、新しい声を自分のものにしていけます。

変声期は決してキャリアの終わりではありません。
むしろ、大人としての声を手に入れる大切な第一歩です。
正しい知識とサポートがあれば、その後の舞台人生において、より豊かで表現力のある歌声を育てていくことができます。

不安に感じるのは自然なことです。
でも、その不安を一人で抱える必要はありません。声の専門家と一緒に向き合うことで、変声期をチャンスに変えていけるのです。

三浦優子2025年8月22日 12:20 pm

【椎間板ヘルニアは声に影響する!?】

声の不調を「喉の問題」と捉えがちですが、
椎間板ヘルニアのような腰部トラブルも
発声に大きく影響します。
 

 
《なぜか?》
・腰椎の不安定さにより体幹(腹横筋・多裂筋・骨盤底筋)の協調性が低下
→ 腹圧が十分にかからず、声が支えにくい

・姿勢保持が難しくなり、胸郭の可動性が低下→ 呼吸が浅く、吸気量が減る

・腰部の疼痛回避姿勢で胸椎が固まりやすい
→ 息の流れと共鳴腔の自由度を失う

結果として・・・
「息が続かない」「声が安定しない」「高音で喉に力が入る」などにつながります。

そしてよくある誤解が、「ヘルニアだから動かさない方がいい」という考え。
 

 
《急性期を過ぎたら》
背骨と骨盤を連動させた小さな動きを取り入れることが重要。(無闇に動かして腰を痛めないように専門家に指導してもらうことをオススメします)
動きを止めてしまうと筋の協調性がさらに落ち、
呼吸や発声に必要な土台が崩れていきます。
 

 
★声の安定には、喉のテクニックだけでなく「体幹と胸郭のしなやかな連動」が不可欠。
 
腰をかばって動きを制限している人ほど、
身体を正しく使い直すことで
声の可能性は大きく広がります。

金子 恭平2025年8月16日 6:06 pm

【水分補給にコーヒーはNG?】

「コーヒーを飲むと利尿作用でかえって水分が奪われる」という話をよく聞きますが、これは本当でしょうか。

結論から言うと、通常のコーヒー飲用で脱水が促進されることはなく、しっかり水分補給ができます。

―――――――――
英国のキラー(Killer)博士らによる2014年の研究が有力な証拠となります。

この実験は、コーヒーを飲む習慣を持つ男性50人(1日に3~6杯を消費)を対象におこなわれました。

彼らが1日4杯のコーヒーを飲む3日間と、同量の水を飲む3日間を設け、体内の水分量を比較したところ――

コーヒーを飲んだ場合と水を飲んだ場合とで、体内の水分量に有意な差は見られませんでした。

コーヒーには水と同等の水分補給効果があることが証明されたのです。

―――――――――
コーヒーの約98%は水分であり、カフェインによる利尿作用で失われる水分量は、摂取する水分量を上回ることはありません。

脱水を怖がって何も飲まないでいるよりは、コーヒーを飲んだ方がはるかに体によい選択です。

※カフェインの過剰摂取などは別の問題として、それぞれの体質に合わせて対処する必要があるでしょう。一般的に、1日のカフェイン摂取量の上限は400㎎までとされています。

※真夏の炎天下や、激しい運動で大量に汗をかいた場合は注意が必要です。汗とともに失われるナトリウムを補給せずに水やお茶、コーヒーばかりを飲むと、体内の電解質バランスが崩れて「水中毒」を起こす危険があります。このような状況では、ナトリウムなども一緒に補給できるスポーツドリンクや経口補水液が理想的です。

三浦優子2025年8月15日 9:38 pm

【顎が開きにくい原因は背骨かも!?】

顎を開く動きは、
実は顎関節だけの問題ではありません。
背骨や背中の柔軟性と深く関わっています。

背骨(特に胸椎)が硬いと、
頭の位置を自由に調整できず、
下顎骨の動きが詰まりやすくなります。

さらに背中の筋肉
(広背筋や脊柱起立筋)が硬いと、
胸郭が広がりにくくなり、
舌骨や喉まわりの筋肉にもテンションがかかります。

《原因は背骨以外にも》
また、外腹斜筋(お腹の横の筋肉)が硬いと、
肋骨の動きや胸の位置が制限され、
頭が前に出やすくなります。
これが顎の開きにくさを強めるのです。

《まとめ》
顎の開きにくさは、
背骨・背中・お腹の筋肉まで関係しています。

顎が開かないときは、
咬筋をほぐすだけでなく、
背骨を動かす・肩を大きく回す・脇の下を伸ばすことで
根本的な解決につながります!

桜田ヒロキ2025年8月14日 10:36 am

声の疲労、その正体は筋肉疲労だけじゃない!

多くの歌手やボイストレーナーが「声の疲労は筋肉によるもの」と考えがちです。
でも、「筋トレのように声を痛めつけて鍛える」理論は、声帯には当てはまりません。

【声帯にかかる最大の負担は摩擦】
声帯は性能や音域により毎秒100~1000回以上振動。
声帯粘膜がこすれ合う摩擦によって、熱・微細な損傷・組織内水分の移動・浮腫(むくみ)が発生。
この現象、筋疲労よりも大きな負担になります。
高音・大声で歌うと摩擦熱が急増します。
1オクターブ高く歌うだけで、摩擦によるエネルギー損失は4倍。
2オクターブ上げると、16倍になります。
話し声よりも圧倒的に負荷が大きいのは数字からもわかりますよね。
この負荷が声質低下や音域の制限を引き起こします。

【声帯は“壊して強くなる”対象ではない】
筋肉とは異なり、声帯粘膜は修復によって「強く」なることは難しく、摩擦による損傷が硬化・線維化につながるリスクがあります。
声帯結節や出血などが起こった場合、完全回復が困難になることも。
摩擦を抑える“潤滑戦略”を日常に。
適切な潤滑は摩擦のバリアとして不可欠です。

【実践しやすい方法】
こまめな水分補給(常温・1日1.5~2L目安)
ネブライザー吸入(生理食塩水)で声帯の表面水分を補う
室内湿度 40~60% の環境維持(冬やエアコン時は常に注意)

【まとめ】
声の疲労は筋肉だけでなく、摩擦と組織の浮腫が大きな要因。
「声帯を壊して鍛える」は逆効果。
むしろ、摩擦を減らし、潤いを保つ声のケアこそが、安定したパフォーマンス維持には不可欠です。

CONTACT

レッスンをご希望の方はこちらまで。