鼻声について徹底的に解説します!
2022.07.31
鼻声は悩まれている方も結構いらっしゃるかと思います。
今回特にお話ししたい事は、鼻が詰まっている鼻声ではなく、鼻に通しすぎてしまっているパターンの鼻声についてです。
鼻声と言っても、部分的に伸ばした時に出てしまう方など人によって度合いは様々かと思いますが、あまり良い声には聞こえませんね。
鼻声になった音色はあまり好まれないので、直せるものであれば積極的に直した方が良いかと思います。
2つの鼻声について
Hyper-nasality(開鼻声):鼻に息が通り過ぎてしまうパターン
Hypo-nasality(閉鼻声):鼻が詰まっているパターン
このように鼻声には種類があります。
Hyper-nasality(開鼻声)は発声時に鼻腔への空気の通過が多すぎることにより鼻の共鳴(反共鳴)を強く起こします。
Hypo-nasality(閉鼻声)は発声時の鼻腔への空気の通過が狭すぎることにより鼻腔・咽頭の共鳴を充分に得られません。
これらがいわゆる鼻声になります。
鼻声子音を言うとわかりやすいかと思います。
「Mum」や「Nan」という子音は一旦「n〜」と言った瞬間に鼻を通す必要があります。
鼻詰まりの声の人の特徴は「m」、「n」が明瞭に言えません。
「マ」の発音が「バ」に変わったり、「ナ」の発音が「ダ」になったりします。
鼻声子音だとわかりやすいですが、母音の発音中でも若干聞き取ることもできます。
Hyper-nasality(開鼻声)の原因について
Hyper-nasality(開鼻声)は多くの場合が発音の癖によって起こることが多いです。
もしくは加齢により軟口蓋が下がってしまっている、もしくは怠け発声です。
年齢が重なってくるとどうしてもあらゆるところが重力に勝てなくなってきます。
軟口蓋も上顎あたりにぶら下がっているものなので、下がってくることによりHyper-nasality(開鼻声)の特徴的な声になってしまったりします。
この特徴的な声で話されているご年配の方は割と多くいらっしゃるのではないかと思います。
余談にはなりますが、こういったことを起こさないために歌唱の訓練をすることや単純に歌を楽しんで歌うことは軟口蓋や喉・舌の運動能力を高く保つことができ声のアンチエイジングにもなります。
喉頭機能が落ちてきてしまうと誤嚥性肺炎になってしまう原因にもなり、それによってお年寄りの方が亡くなってしまうこともあります。
単純に歌を楽しんで歌うだけでも喉頭機能は若く保っていられるため老人ホームで歌ったりするレクリエーションは理にかなっていることだと思います。
Hypo-nasality(閉鼻声)の原因について
原因は発音の癖・鼻腔の狭さ・鼻詰まり・扁桃腺が大きい・アデノイドが大きい・鼻腔ポリープ等です。
鼻腔の狭さは生まれもっての方もいらっしゃいますね。
扁桃腺・アデノイドが大きいと(喉の奥の上側にある組織)口の方に来る響きや空気の流れを阻害して鼻の方に送ってしまうことになるそうです。
Hyper-nasality(開鼻声)の音響特性について
Hyper-nasality(開鼻声)というのは鼻に共鳴がいってしまい、Anti-Formant(反共鳴)を強く起こします。
共鳴(増幅)の逆の現象が起きてしまうパワーのある声を作っていくにはあまり良い発声ではありません。
鼻声の原理としては、口蓋帆を下げ、舌を上げ、軟口蓋と舌の間を狭くすることによって口側の空気をブロックする状態を作ります。
そうすると音・空気が鼻腔の方へいきます。
鼻の穴と口とではどちらが大きいでしょう。
口をしっかり開けると大きくなりますよね。それに対して鼻の穴のサイズは何分の一なのでしょうか。
つまり鼻の穴から音は大して放射されません。
歌っている人側からすると鼻腔の中に音がきているので強烈に響いているように感じるかもしれませんが、この出し方は大して音は外に出力されていません。
音響解析しても鼻声は効率的な発声とは言えません
実際に鼻声にしない声と鼻声(開鼻)をスペクトログラムで表示させてみました。(動画を参照してください)
口がブロックされていること、Anti-Formant(反共鳴)が起こることによって1500Hz〜3000Hz・4000Hz周辺・5000Hz以上のところが著しく音響エネルギーが落ちてしまっています。
1500〜3000Hz・4000Hz周辺のところは人間に強く聞こえる周波数帯域なのでここが落ちてしまうと人間の声はかなり弱く聞こえてしまいます。
5000Hz以上になるとTwangと言う鋭い音が入ってくる成分の周波数帯域なので、ここら辺が落ちているとブリリアントに明るく聞こえる帯域が根こそぎ取られているようなイメージになります。
軟口蓋と口蓋帆の動きが鼻声解消に重要?
鼻声においては口蓋帆(VELUM)の動きが非常に重要になってきます。
口蓋帆が下がりすぎることによって口をブロックして空気を鼻の方へ誘導してしまいHyper- Nasal(開鼻声)となります。
口蓋帆が上がりすぎてしまうことによって空気が鼻の方へ行かないHyper-Nasal(開鼻声)となります。
先程も説明しましたが鼻の穴は非常に小さいのでほとんど音が外部へ放出されません。
ボイトレで鼻声って使わないの?
「歌手の知覚」と言う、歌手の感覚で鼻腔共鳴として説明しているのは、喉頭を上げて咽頭を狭くしたファリンジャルボイスなのではないかと考えられます。
鼻腔共鳴は先程から説明しているような声かと尋ねれば、おそらくどのトレーナーも違うと言うと思います。
彼らが言っているのはもっと喉を上げてタイトに作っているような音色だと思われます。そのような音色でトレーニングするようにと仰っているのではないでしょうか。
解説しているインストラクター
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セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。
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