ティーチングクリニックで学ぶ“教える力”の磨き方【ボイストレーナー育成&認定講座】VT-RVレポート第9回
こんにちは!VTボイストレーナーの三浦優子です。今回の【VT-RV】講座レポート第9回では、“教える力”を磨く絶好の機会となる【ティーチングクリニック体験】の様子をお伝えいたします。
「教えるって、こういうことか!」そんな発見がいくつもあった今回の模擬レッスン。まさに、【VT-RV】ならではの実践で役立つ学びが詰まった内容です。どうぞお見逃しなく!
教える力を鍛える実践の場|ティーチングクリニック体験とは?
今回の講座では、「模擬レッスン」と「リアルレッスン」の2スタイルでティーチングクリニックを実施。
どちらも、声を聴き取り、状態を見極め、言葉とエクササイズで導く「教える力」が試される場です。
受講生は“先生役”としてレッスンに挑戦し、桜田ヒロキインストラクターのリアルタイムのフィードバックのもと、実践的な学びを深めていきました。
見学者にとっても、他の人のレッスンを客観的に観察することで、指導への新たな気づきが得られる貴重な機会となりました。
模擬レッスンで問われた観察力と伝える力
最初に行われたのは、受講生同士で講師役と生徒役を担う模擬レッスン。講師役は、現役のボイストレーナーでもある受講生です。
「初回レッスンのつもりで、生徒さんの話をよく聴いて進めてください」と、桜田インストラクターからアドバイスを受けてレッスンがスタートしました。
まずは、生徒役の現状や悩みをヒアリングし、「5tone Ah」で声の傾向を確認。その分析をもとに、「柔らかく、豊かな地声を育てていく」という方針が立てられました。
ここで桜田インストラクターからのフィードバック。
桜田インストラクターの手元のメモには、低音域・中音域・高音域それぞれの状態が細かく記されており、「どこをどう聴いているのか」が明確に記されています。その声の診断力・観察力の深さに圧倒されました。
レッスンを再開し、いよいよ実践的なエクササイズへ。
まずは、裏声から地声への切り替えをスムーズにする「Falsetto to Chest」、次に、高音から自然に地声に着地する感覚を養う「Octave Down」、そして、音域を広く使って声のバランスを見る「1.5octaveスケール」などを取り入れて、地声の感覚を丁寧に育てていきました。
桜田ヒロキインストラクターの視点に学ぶ|レッスン設計のコツ
レッスン中の桜田インストラクターのフィードバックで印象的だったのが、「スタートピッチ」の重要性でした。
たとえば、裏声(ヘッドボイス)から地声(チェストボイス)に切り替えるための「Octave Down」エクササイズ。
女性の生徒さんが着地するピッチがG4のように高すぎると、うまく地声に切り替えられず、声が崩れてしまうケースが多くあります。
SLSのセオリーでは、「G#4までは地声で歌える」とされていますが、現実には、特に女性の場合D4を超えるあたりから地声への着地が難しくなることも少なくありません。
そうした場合、桜田インストラクターは「まずはD4に着地する設計から始める」と話されていました。
理論だけに頼らず、実際の声の反応を見て判断するのは、経験豊富な桜田インストラクターならではの視点だと感じました。
さらに、ティーチングクリニックでは他の受講生のレッスンを見学できるのも大きな学びです。 「なぜこのピッチから始めたのか?」「どこに着目して指導しているのか?
他のインストラクターのレッスンを見ることで、これまで“なんとなくできていたこと”が言語化され、自分の指導にも落とし込めるようになっていく。そんな発見の多い時間でした。
生徒の「クセ」とどう向き合う?|ボイストレーナーのための指導のヒント
続いて行われたのは、スタジオにお招きした実際の生徒さんを対象にしたリアルレッスン。講師役を務めたのは、立候補した【VT-RV】の受講生です。
まずは、生徒さんの声やお悩みを丁寧にヒアリング。「合唱部での発声のクセが抜けず、ポップスらしい歌い方ができない」との相談がありました。
「5tone Ah」での声のチェックでは、
・低音域には息漏れやネイザル(鼻にかかった響き)
・中音域は比較的バランスが良好
・高音域ではやや緊張が見られる、といった傾向が明らかに。
ディスカッションの結果、今回は「Light Chest((繊細な地声)」タイプと仮定し、講義で学んだアセスメントツールを使ってレッスンを構成していくことに。
桜田インストラクターの伴走のもと、生徒さんの声の状態に応じてどのエクササイズを選ぶか、どこにどのくらいアプローチするかという判断を、実際の声を聴きながら進めていきました。
BestではなくBetterを目指す|ボイストレーナーの判断軸
印象的だったのは、桜田インストラクターの「すべてを修正しようとしない」姿勢。
“Best”より“Better”を重ねていく考え方が随所に見られました。
今回の生徒さんにはネイザルやしゃくりのクセが見られましたが、テーマは「Light Chestタイプ」へのアプローチ。まずはしっかりとした地声を育てることが優先です。
クセに気づいても「今はあえて触れない」という判断には、深い理由があります。ボイスクオリティは時間をかけて育てるもの。特に、レジストレーション(地声と裏声の切り替え)が不安定な段階で細部に踏み込むと、全体のバランスを崩してしまう恐れもあるのです。
「今の段階で十分か」を見極め、“Better”を積み重ねる指導。それが、遠回りを防ぎ、声を育てる近道になるのだと実感しました。
以前、桜田インストラクターのレッスンを見学した際、「なぜネイザルに触れないのか?」と疑問に思ったことがありました。VT内の研修でも「もっと俯瞰で見るように」と指摘されたことがありましたが、今回その意図が言語化され、深く腑に落ちました。
自分のレッスンを振り返ると、「俯瞰で見る」と心がけていたつもりでも、実は見えていなかった部分が多かったと気づかされ、課題が明確になった実感があります。
緊張の先にある成長|ティーチングクリニックがもたらすリアルな実践力
講師役に挑んだお二人は、きっと大きな緊張を感じていたはず。でも、実際に“教える”ことで、引き出しや対応力、言語化の精度が試され、多くの気づきが得られました。
指導してみるという体験を通して、自分の引き出しや対応力、言葉にする力がどこまであるのか、そして何が足りないのかが、浮き彫りになります。
桜田インストラクターのフィードバックを受けながら、自分の指導を見直すという経験こそが、「プロのボイストレーナー」へと一歩近づく貴重な時間だったと感じます。
次回は、海外講師による特別講義のレポートをお届けします
次回はなんと海外から特別講師をお招きしての2週連続講義です。 「レッスン設計の考え方」や「ベルティング技術」について深く学べる予定です。これまでとは一味違う視点を得られる機会に、今からワクワクが止まりません!
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投稿者プロフィール

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大阪音楽大学短期大学部ミュージカルコース卒業
宝塚音楽学校附属宝塚コドモアテネ卒業
幼少の頃からクラシックバレエを習い、毎年行われる発表会やその他数々の公演、業界最大手の舞浜大手テーマパークのショーやパレードに出演。
ダンスパフォーマンスにおいては特に活躍を遂げ、忙しい日々を送ると同時にボイストレーニングを続けるが、自分の悩みを解決できる先生となかなか出会えず「これで上達できるのか?」と不安を感じ、次第に歌を諦めてしまう。
そんな中、発声を科学的に捉え、的確なトレーニングを行えるVTチームの存在を友人から聞き、VTチームのレッスンを受講。
ハリウッド式ボイストレーニングに感銘を受ける。
現在は自身の「踊りながら歌う難しさ」を克服した経験を活かし
「ダンサーとしてミュージカルの舞台に立ちたい」
「ミュージカルに出演しているが、シンガーの枠に入りたい」
という方々を中心としたサポートに向け、勢力的にトレーニングを行っている。
全米ヨガアライアンスRYT200を取得し、ヨガインストラクターとしても活躍中。
クライアント一人ひとりに合った姿勢矯正を行うことにより、発声の改善、呼吸の改善、ダンスの改善を行い、クライアント様から高い評価を得ている。
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