ボイストレーナーのためのレッスンの構成法!
今回は、John Henny氏のワークショップから、「レッスンの構成について」ご紹介します!
John Henny氏が教えてくれたのは、アリストテレスやイーロンマスクも使う手法である第一原則というコンセプトに基づいたレッスン構成の考え方についてでした。
「いろんな事象を一番単純な要素に落とし込む作業」これを音楽の第一原則で考えるということです。
声の”物理現象”とは
まずは声の第一原則から考えていきます。
声の第一原則は振動です。これは音の第一原則でもあります。
声は振動から始まり、気流のエネルギーと声帯の抵抗を共鳴させて拡大させることが必要です。そして母音によって声をチューニングしていきます。
このように声は気流・声帯・母音で成立します。
The 3Cとは?
次に教えることの第一原則です。
「The Three Cs」という考え方です。
これは3つの「C」を表していて、「CONDITION(観察)」「CONSIDER(考察)」「CONSULT(共同)」を意味します。
CONDITION(観察)
声の3つの要素から考えていきます。
要素1:気流が多いか少ないか
要素2:声帯の筋肉に対する抵抗が多いか少ないか
要素3:母音が狭まりすぎたり開きすぎたりしていないか
シンガーが歌っている時にその瞬間何が起こっているのか定かではない時にこの3つの要素に注目します。
声のバランスが整っていない時、この3つの要素のどれかが正しくない可能性が高いです。
CONSIDER(考察)
ここでも3つの要素があります。
要素1:What (何が聞こえているか)
要素2:Why(何で聞こえているか)
要素3:How(どうやってこれを直すか)
自分に問いかけます。
特にこの中では要素2の「Why」が一番大事になります。
これは声のことを知っていれば知っているほどどうやってそれを直すかというのがわかってきます。
理解が進めば進むほど、耳の聞こえが良くなります。
CONSULT(共同)
ここで「教えるツールキッド」を使います。
これも3つの要素があります。
要素1:子音
要素2:母音
要素3:スケール
このように何が起きているか診断したあと、生徒に相談して教えていく流れになります。
常にこれを考える必要はありませんが、何か行き詰まってしまうことがあれば単純なものに落とし込んでみるということです。
実際にレッスンで生徒を目の前にすると、分析はとても難しいと言う事に気付くかも知れません。
なので、最初は大雑把な視点から見ていくという方法もあります。
例えば「絞った声」「息っぽい」「シャウトっぽい」「弱い」などです。
それを先ほどの「The Three Cs」に繰り返し落とし込み、そこからだんだん細かい部分に注目していく流れになります。
あくまで「The Three Cs」に落とし込むためにあえて大ざっぱに聞くと言う事です。
でも、ここで重要なのはあくまで、大ざっぱなままで分析を終わらせないと言う事です。
では実際の分析方法を考えてみましょう
一つ例に上げてCONDITION(観察)をしてみます。
大雑把に「叫び声っぽい」と感じたとします。
この第一印象から分析していきます。
分析1:「プルチェスト?」輪郭がはっきりしてきます。
分析2:「チェストボイスを引っ張っている状態」
分析3:「声帯の筋肉が働きすぎている」「息の量が多い」「母音が開きすぎている」
ここでようやく何を直せばいいかがわかります。
このように「叫び声っぽいな」で終わってしまうと、どうやって直すかというのがわかりません。
今でも「叫び声をやめろ」と指導する先生はいますがこれは何の助けにもなりません。
CONDITION(観察)の部分では生徒の声で何が起こっているのかを「よく聞くこと」が重要です。
印象という俯瞰的な部分から見て、そこからトーンや音色、酷使していないかなどに注目します。
そして最終的に気流・声帯・母音に着目することです。
例えば、息を押しすぎなのか、足りないのか。声帯が圧着しすぎなのか、抵抗が少ないのか。母音はどうなのか。
この3つを聞き分けることがとても大切です。
音声学はボイストレーナーの強い味方!
そしてCONSIDER(考察)のために音声科学を学ぶ必要があります。
解剖学や音響学を学び続けることによって、だんだんと感覚的にわかるようになってきます。
声を理解できればできるほど、気流・声帯・母音がはっきりとわかるようになっていき、知識によって耳が良くなります。
ですので、「What」「Why」「How」この3つの質問に対してできるだけ良い答えを出す必要があります。
この3つの質問をクリアにすることによってCONSULT(共同)、相談に持っていけます。
ここで初めて子音・母音・スケールという教えるツールを使うことができるのです。
いかがでしたか?
このように細かく分析していくことの大切さを教えていただきました。
声というのは人それぞれ違うので、どのように導くのがいいかわからなくなってしまったら「The Three Cs」に落とし込んで考えると整理されそうですね。
今回はボイストレーナー目線でお話していただきましたが、これはシンガーの方にもとても役立つ考え方ではないでしょうか。歌っていて上手くいかなかったり納得のいかなかった部分の原因を探るツールに役立つと思うので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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解説しているインストラクター
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セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。
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