3kHzが強調されると何故より力強く聴こえるの?【ヲタク向け】
2017.04.14
みなさんこんにちは、VT Artist Developmentのボイストレーナー小久保よしあきです!
前回の僕の記事では、歌声フォルマントについて取り上げました。
映像で観る歌声フォルマントはこれです↓
主に3kHz付近に出現する強い音の成分が、歌声フォルマントの正体でした。
力むのではなく、声道内のある共鳴腔の条件を満たすことで強調される音色、
ということがおわかり頂けたかなと思います。
詳細は前回の僕の記事をご覧ください。
今回は、
3kHzが強調されるとなぜ大きく聴こえるのか、
その理由について考えてみようかなと思います。
前回以上にオタク向きです。
これを知ったところで発声が良くなるわけでもないので、
興味なければまじで読む必要ないです(笑)。
皆さんにとって一番大事なのは、知識ではないはずですから(じゃあ書くなよw)
聴覚音声学から考えてみる
3kHz強調の根拠について、聴覚音声学の観点からお話をしようと思います。
耳で聞き取ることに関する音声学です。
みなさん、外耳道というのはご存知でしょうか?
耳の穴の入り口から鼓膜までの空間です。
片側が空いたコップのような形で、その形状を筋肉で動かすことはできません。
この空間には、固有の共振周波数があります。
実は、この外耳道の影響により、
人は強調されて聴こえる周波数帯域が周波数によって異なります。
強調のされ具合は次の図をご覧ください。
曲線が低いところほど、
弱い音で聴取できる=良く聴こえる周波数帯域
ということになります。
3kHz〜4kHzあたりをピークに、
徐々に大きく聴こえると捉えることができます。
さて、歌声フォルマントは3kHz周辺でした。
具体的には2.5hz〜3.5Hzです。
この周波数帯域が強く発声できれば、
実際の強さよりも大きく聴こえてくるということになります。
これがこの帯域を強調する根拠のひとつになります。
オケの周波数帯域との比較
オペラ歌手が得意とする歌声フォルマントはなぜオーケストラに負けないのか、
その理由はオーケストラの周波数特性も関係してきます。
以下は
オーケストラ(青)
歌声フォルマントあり発声(赤)
歌声フォルマントなし発声(緑)
それぞれの周波数特性を表しています。
オーケストラと通常会話の周波数特性が高域にかけて徐々に逓減する一方、
オペラ歌手の発声は3kHz付近(歌声フォルマント)が
グイっと飛び出ているのが分かると思います。
これが、歌声フォルマントを強調すればオケに埋もれないという根拠になります。
応用:バンド・サウンドはどうなの?
オーケストラではなくバンド・サウンドの場合、事情が変わってくるかと思います。
その中でもボーカルの邪魔になってくるのがドラム、ついでギターでしょうか(経験上)。
ひとつひとつ片していきます。
・ドラム
幅広い周波数帯域で不特定多数の周波数が、瞬間的に強く発音されます。
従って、他メンバーと比べ強く鳴らさない
(叩き方、ミュート、部屋の大きさ、他メンバーのボリュームを大きくする)
必要最低限に叩く回数を抑える、などがボーカルの抜けに関係してくるでしょう。
特にドラムは、ほぼ唯一電気の力を借りないバンド・サウンドのひとつなので、
部屋を広くするだけでも、ドラムのエネルギーは相対的に小さくなります。
・ギター
特に歪ませた状態がボーカルの抜けと関係してきそうです。
歪ませ具合が強い(ディストーション)と、音程がわからないほどあらゆる周波数がエネルギーを持ち、
結果ボーカルの音声を掻き消してしまうでしょう。
ちなみにその音程がわからないほど歪んだ状態というのは、
実際のそのエネルギーの割に小さく聴こえます。
結果さらにボリュームをでかくしてしまうということが考えられます。
(発声にも同じことが言えます。母音を明瞭に発音できるようにするメリットのひとつです)
また、ギターはEQで音質を調整できるので、
ボーカルと被る周波数帯域を強くしていないか気をつけてください。
ボーカルが歌声フォルマントを強く出せるシンガーであれば、
ボーカルが歌っているときは中高音域(3kHz付近)をカットして、
ギター・ソロのときだけ逆に強調してみましょう。
うまくいけば、思ったより全体のボリューム抑えても、成立することに気づくかも知れません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?最後のバンドサウンドの情報が一番役にたったりして(笑)。
注意していただきたいのは、
僕は歌声フォルマントの強調よりも、
安定した発声技術の習得(=ミックスボイス)が重要と考えています。
フラフラした発声で3kHz付近だけ強くても、
フラフラがはっきり聴こえちゃうだけですからね。
しかし、歌声フォルマントが鳴っているとき、
結構な割合で発声が安定し、
かつ楽と感じる人が多い印象です。
この辺は真摯に研究していかねばなりません。
ミックスボイスに入った上で鳴っているだけなのかも知れないけど(笑)
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