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HOME/ ブログ一覧/ プロボイストレーナー養成と指導技術(VT-RV)/ ボイストレーナーの楽曲選定法|発声課題に合わせた課題曲の選び方【VT-RV第3期レポート】
★ プロボイストレーナー養成と指導技術(VT-RV)
VT-RVレポート 2026.08.21 公開

ボイストレーナーの楽曲選定法|発声課題に合わせた課題曲の選び方【VT-RV第3期レポート】

こんにちは!VTボイストレーナーの三浦優子です。ボイストレーナー養成講座【VT-RV】第3期、今回の講義レポートは、VT代表・桜田ヒロキインストラクターによる「楽曲の選定法」についてです。
こちらは【VT-RV】初登場のコンテンツとなります!レッスンでどのように課題曲を選ぶのか。生徒さんのボイスタイプやレベル、発声課題に合わせた課題曲の選び方を学びました。

楽曲選定は、生徒さんの納得につながる大切な提案


まずは、今回の講義の目的について説明がありました。実は、生徒さんがレッスンに持ってくる楽曲が、その方の今の状態に合っていないケースは少なくありません。
そのようなときに、「あなたのレベルに合っていないよ」と一言で伝えてしまうと、生徒さんは納得しづらく、傷ついてしまう可能性もあります。
だからこそボイストレーナーには、なぜその曲が今の状態に合いにくいのかを説明し、今のレベルや課題に合った楽曲を提案する力が必要になります。

レッスンで行う楽曲選定は2種類ある
「歌いやすい曲を選ぶ」ことが楽曲を選ぶ基準ではありません。生徒さんの声を聴き、目的を整理し、今必要な経験ができる曲を選ぶことが大切になります。レッスンで行う楽曲選定には、大きく分けて2つの目的があります。選曲の種類とポイントを以下の表にまとめました。

1️⃣パフォーマンス・オーディションのための選曲
パフォーマンスのための選曲では、本人が最も得意なところを見せることが大切になります。そのため、今できるベストパフォーマンスを届けられる楽曲が好ましいとされています。
オーディションの場合では、自由曲であれば、限られた時間で何を聴かせるかが重要になります。1分から1分30秒ほどで時間が指定されていることも多いため、抜粋する区間も慎重に選ぶ必要があります。
★オーディション自由曲の選曲ポイント
・その人にとって一番おいしいところ(映える部分)。
・声の魅力が伝わるところ。
・キャラクター性や表現まで伝わるところ。

2️⃣技術課題のための選曲
一方、技術課題のための選曲では、発声練習でスケールを処方するときと同じような考え方が必要になります。たとえば、次のような課題です。
★技術課題のための選曲ポイント
・声区移行
・音域
・ロングトーン
・グルーヴ
・発声バランス
・音楽的な表現

上記のような、今後必要になる発声や音楽的課題を、楽曲の中で経験させる目的があります。エクササイズでやりきれなかったことを楽曲で行うこともできますし、楽曲で出てきた課題をエクササイズに戻って補うこともできます。
桜田インストラクターからは、「エクササイズと楽曲を上手に組み合わせることで、相乗効果が生まれ、歌唱技術の向上にもつながっていく」との解説がありました。
ボイストレーナーとして、「技術課題のための選曲方法」を理解することは、とても大切だと感じました。

技術課題のための選曲|目的を決めて課題曲を選ぶ


次に、特にボイストレーニングの現場で重要になる「技術課題のための選曲」をさらに深掘りする解説がありました。課題曲を選ぶ際に大切なのは、まず「何を目的にするのか」を決めることです。

このように目的を整理すると、課題曲の選び方がとても明確になります。たとえば、ライトチェストの方でチェストボイスを強化したい場合、高音域ばかりの楽曲を選んでしまうと、チェストボイスがあまり出てきません。
その結果、ライトチェストのまま歌ってしまう可能性があります。このパターンは、特に女性に多いとのことでした。つまり、課題曲を選ぶときには「その曲が好きか」「歌いたい曲か」に加えて、今の発声課題に必要な経験ができる曲かどうかを見ることが大切になります。

ブリッジ攻略に合わせた楽曲選定
次に重要になるのが、ブリッジ(換声点)です。ブリッジ周辺をどのように使う曲なのかによって、難易度は大きく変わります。

この中で一番難易度が高いのは、「ブリッジ周辺に居座る」楽曲です。地声で頑張ると重くなりやすく、裏声にチェンジすると薄くなりやすいエリアだからです。
そのため、生徒さんのレベルに合わせて、どの程度ブリッジに触れる楽曲を選ぶのかを考える必要があります。

発声バランスと音楽的課題から曲を選ぶ
発声バランスでは、どの声を強化したいのかを見ていきます。一方、音楽的課題では、楽曲を通してどのような歌唱技術を経験させたいのかを考えます。

このように整理すると、課題曲の選び方には、さまざまな判断軸があることが分かります。その曲の中にどんな音域があり、どんなブリッジの通過があり、どんな発声バランスや音楽的課題が含まれているのか。
そこまで見たうえで、生徒さんに合う課題曲を選んでいくことが大切なのだと学びました。

母音を歌い上げられる楽曲を選ぶ
また、歌声を楽音として安定させるためには、言葉が詰まった楽曲よりも、「母音を歌い上げられる」楽曲を選ぶこともポイントになると解説がありました。
歌では、母音が音色の役割も担っています。そのため、母音のクオリティを上げていくことが必要になります。母音を言葉として発音するだけで終わらせず、音楽の音として扱えるようにすること。これも、歌唱力向上の大事な土台になるのです。

メロディラインから見る、エクササイズと楽曲のつながり


次に、リズムやグルーヴについて解説があり、その後、メロディラインの構成についても学びました。たとえば、コブクロの「桜」のサビでは、F#(ファ#)から始まり、1オクターブ上昇してからまた下降していくメロディラインがあります。
これは、これまでに学んできた発声時の「1オクターブリピート」というエクササイズと似た流れです。
このように、楽曲のメロディラインをエクササイズの構成や目的と照らし合わせて見ると、その曲がどんな発声課題に向いているのかが整理しやすくなります。
「この曲は、どの音域を使っているのか」
「どこで声区移行が起きやすいのか」
「どんな動きが発声エクササイズとつながっているのか」
そう考えることで、課題曲の選び方がより具体的になるのだと感じました。

楽曲を提案するときは、生徒さんの合意をとる
講義では、ボイスタイプやレベル別におすすめの楽曲も紹介していただきました。その中で桜田インストラクターから、生徒さんに楽曲を提案するときに「合意をとること」の大切さについてもお話がありました。
たとえば、ライトチェストの方に対して、チェストボイスを安定させる目的で低音域の多い楽曲を選んだとします。
ただ、その生徒さんにとっては「少し低い曲」「あまり歌いたい曲ではない」と感じる場合もあるかもしれません。そのようなときは、生徒さんにこの曲を選んだ目的を伝えます。

★楽曲を提案するときに伝えたいこと
(ライトチェストの生徒さんに低音域の多い楽曲を選んだ場合)
・今はチェストボイスを構築していきたいこと
・まずは低音域で安定させたいこと
・そこが安定したら、高音域へ抜けていく楽曲も考えていること

このように、目的と今後の見通しを伝えることが大切です。目的がはっきりすると、生徒さんも納得して練習曲に取り組みやすくなります。
これはVTの内部研修でも学んでいることで、実際のレッスンでも、生徒さんの合意をとることを大切にしています。
楽曲を提案するときに目的を共有することは、信頼関係の構築にもつながる大切なコミュニケーションです。

歌唱指導で楽曲につまずいたときのエラーの特定と攻略法


講義の後半では、レベルに合わせてどのような戦略を立てるのか、またそれに合った曲やチャレンジ曲をどう選ぶのかについて解説がありました。その中で特に重要だったのが、楽曲でつまずいたときの攻略法です。
まず大切なのは、エラーを特定することです。ここで桜田インストラクターから、ティーチングクリニックで実際にあったシチュエーションについてお話がありました。
楽曲を聴いて「どこにエラーがありましたか?」と尋ねると、「ピッチが悪かった」と答えるものの、具体的にどこのピッチが悪かったのかまでは答えられないケースがあるそうです。
これでは、生徒さんの発声に対して適切に対処することが難しくなります。どこに問題点があったのかを、譜面にチェックしたり、メモをしたりして把握しておくことが必要です。

このように分析することで、楽曲の中でどのように攻略していくのかを考えやすくなります。
楽曲内での攻略法|歌詞・母音・子音・キーを調整する
さらに、楽曲でつまずいたときの攻略法として、次のような方法を解説していただきました。

歌詞を一時的に変えたり、母音や子音を調整したりすることで、楽曲の中でもエクササイズに近い状態を作ることができます。特にキーを上げたり下げたりするときは、技術的な問題なのか、声種や器質の問題なのかも判断のポイントになります。
また、生徒さんの中には「原曲キーで歌いたい」と思っている方もいます。そのため、キーを変えるときにも、生徒さんの合意が大切です。たとえば、次のように伝えることができます。

★キーを変更するときの伝え方
・「今は喉の緊張が強いため、半音下げて練習しましょう」
・「まずは楽音として歌うことにフォーカスしましょう」
・「別の曲を挟んだあと、元のキーで歌える可能性もあります」

このようにコミュニケーションを取ることで、「この先生は先を見据えて提案してくれている」と生徒さんに感じてもらいやすくなります。生徒さんとの信頼関係を築くうえでも、とても大切な関わり方だと感じました。

その人の声が一番おいしく聴こえる音域を見極める
さらに桜田インストラクターから、「レベルを上げるために、音域の高い楽曲を選んでいく戦略もある」というポイント解説がありました。ここで大切なのは、その声にその音域が合っているのかを見極めることです。
高音が出る方に対して、出せる音域にまったく触れないのも問題です。一方で、歌えるからといって、低音声種の男性にMrs. GREEN APPLEのような高いキーの楽曲を無理に歌わせる必要はありません。もし歌う場合は、キーを下げる必要があります。
その人によって、一番おいしく聴こえる音域は違います。生徒さんの声の魅力が最も伝わる音域を見極めることも、ボイストレーナーとしてとても大切なポイントになるのだと学びました。

練習曲に取り組む期間|デッドラインを決める大切さ


最後に、一つの練習曲にどれくらいの期間取り組むのかについてもお話がありました。桜田インストラクターは、月1回程度のレッスンの場合、1コーラスを中心に3〜4回で一区切りにしているそうです。
これには、いくつかの理由があります。

特に印象的だったのは、本人の練習が足りなかったという悔しさや敗北感を味わうことも、その人にとって大切な学びになるというお話です。
与えられた練習曲は、基本的には「できるであろう曲」です。それでも、時間が取れず練習できなかったり、思うように取り組めなかったりすることもあります。
うまくいっても、うまくいかなくても、どこかでデッドラインを引く。
そこからの経験が生徒さん自身の学びにつながるため、区切りを決めることもボイストレーナーにとって大切な選択なのだと感じました。

楽曲とエクササイズの結びつきがより明確になった講義


今回で、桜田インストラクターが担当する講義は終了となります。講義を通して、桜田インストラクターがどのように声を評価し、エクササイズを処方し、課題曲を与えているのかがより明確になりました。
また、楽曲とエクササイズの結びつきも、とてもよく分かりました。
さらに、桜田インストラクターがどのように生徒さんと信頼関係を築いているのかも、講義を通じて垣間見ることができ、とても勉強になりました。
【VT-RV】第3期の皆さんは、ティーチングクリニックという、実際に生徒役の方にレッスンを行う実技も本格的に始まります。これまでの講義をどのように現場に落とし込むのか。ここから、さらに理解が深まっていくのではないかと思います。
皆さんのこれからの変化も楽しみです!

次回は、ケリー・オバート先生の「音声障害」について学びます

次回は、言語聴覚士でもありボイストレーナーでもあるケリー・オバート先生による「音声障害」についての講義です。音声障害はとても繊細な内容です。
言語聴覚士とボイストレーナー、両方の視点を持つケリー先生から学べることを、とても楽しみにしています!

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