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こんにちは!VTボイストレーナーの三浦優子です。今回のVT-RV第3期講義のテーマは「呼吸」。アメリカを拠点に音声・発声の専門家として活躍するケリー・オバート先生による講義をレポートします。「歌うときは、たくさん息を吸えばいい?」そんな疑問の答えにもつながる、呼吸と声の関係を専門的な視点からわかりやすくご紹介します。

今回の講義タイトルは、「Breaking Free From One-Size-Fits-All Breath Training」。直訳すると、「すべての人に同じ呼吸トレーニングを当てはめることから抜け出す」というような意味です。
つまり、「歌うならこの呼吸法」「腹式呼吸をやっていればOK」と一つの方法を正解にせず、声の状態やフレーズ、音域、音量、声門閉鎖などに合わせて、その人に必要な呼吸サポートを考えるということ。
今回の講義は、そんな「呼吸法は一つではない」という視点から始まりました。
ケリー先生は約20年のキャリアの中で、呼吸器系の医師と仕事をする機会も多かったそうです。呼吸器系に問題がある方では喉頭にも影響が見られることから、これまでの経験も踏まえながら、呼吸と発声の関係を解説してくださいました。
ケリー先生には、VT-RV第2期でも複数回にわたって講義を担当していただいています。第2期では、声帯ポリープや発声障害、呼吸、発声の解剖学について学び、声を生み出す仕組みを身体全体から捉える視点を深めてきました。
ケリー・オバート先生によるVT-RV第2期講義レポート
| 講義テーマ | 講義レポート |
|---|---|
| 発声障害 |
声帯ポリープと発声障害の理解を深める|VT-RV講座レポート第13回 |
| 呼吸法 |
「お腹に力を入れて」を科学で解き明かす呼吸法 |
| 発声の解剖学 |
声道の動きで音色が変わる?「発声の解剖学」ボイストレーナー育成&養成講座 |
呼吸と声帯がどのように関わりながら声をつくっているのかを見ていくことが、今回の大きなテーマです。今回の「呼吸」の講義も、そうした学びの延長線上にあります。

まず解説していただいたのが、声帯と気流の関係です。ここで登場したのが、風船でした。膨らませた風船の先端を指で押さえ、指を少し緩めると空気はゆっくり抜けていきます。反対に、大きく緩めると空気は一気に抜けていきます。
このときの「指」を、声帯に置き換えて考えてみます。声帯の閉じ方によって、流れ出る息の量やスピードは変化します。つまり、声を出すときの息は、単純に「肺にどれくらい空気が入っているか」だけで決まるわけではありません。
声帯側で、その気流をどのように調整しているかも重要なのです。ここからケリー先生が投げかけたのが、「そもそも、本当に息は足りていないのか?」という視点でした。
歌で息が続かないのは肺活量だけが原因ではない
歌っていて息が続かないと、「もっとたくさん吸わなければ」と思いがちです。しかし、十分な量の息を吸っていても、それを効率よく声に使えていない可能性があります。
講義では、一息で風船をどのくらい膨らませられるのかを確認し、自分が使える息の量を可視化しました。ケリー先生によると、風船が16cmほど膨らんだ場合、講義で使用したグラフでは約25秒間、音を保てる息の量に相当するとのことでした。
もし、それだけの息があるにもかかわらず、実際には25秒ほど声を保てないとしたらどうでしょう。そこで考えたいのが、「もっとたくさん吸うこと」よりも、吸った息をどのように使っているかです。声帯の働きや息の流れにも目を向ける必要があります。

続いて、肺・横隔膜・外肋間筋・内肋間筋の働きについて学びました。まず知っておきたいのは、肺そのものは筋肉ではないということです。息を吸うときには、横隔膜や肋間筋などが働いて胸郭が広がります。すると胸腔内の圧が下がり、外との圧力差によって空気が肺へ流れ込んできます。
「空気を頑張って吸い込む」というよりも、胸郭が広がり、圧力が変化することで空気が入ってくると考えるとイメージしやすいかもしれません。
横隔膜は息を吐くときにも関係している?
横隔膜は、主に息を吸うときに働く筋肉です。講義では、ここ最近の研究から、息を吐くときにも横隔膜が一気に弛緩せず、ある程度働いていることがわかってきているという説明がありました。
息を一気に吐いたり、吐きすぎたりするのを抑える働きがあると考えられているそうです。また、息を吐くスピードをゆっくり調整するときには、喉頭側の調整が関わっているのではないかとケリー先生は話されていました。
呼吸の仕組みを知ることで、発声を見るときにも、呼吸と喉頭がどのように連携しているのかという視点が加わります。

今回の講義でもう一つ重要だった言葉が、「安静呼気位」です。安静呼気位とは、自然に呼吸をしているとき、無理なく息を吐き終えた時点での肺気量のことです。この状態では、肺が縮もうとする力と胸郭が広がろうとする力がつり合っています。
そのため、普段の自然な呼気では、息を吐くための筋肉を強く働かせなくても空気を外へ出すことができます。しかし、安静呼気位を下回るところまでさらに息を吐こうとすると、内肋間筋や腹筋群などの呼気筋の活動が加わり、より能動的な呼気になります。
講義では、実際にロングトーンをしながら、どのあたりから筋肉が働き始めるのかを自分の身体で確認しました。知識として説明を聞くだけではなく、自分の身体で変化を感じられるのがおもしろいところです。
前半の風船の実験で使った息の量は、筋肉を積極的に働かせなくても吐き出せる範囲だと知りました。ただし、高音域を大きな音量で歌う場合などは条件が変わります。
だからこそ、「歌うときはいつでも腹筋を強く使う」「常に強く息を支える」と一つの方法に決めつけず、出したい声に合わせて必要な呼吸を考えることが大切なのです。

講義の終盤では、ケリー先生が実際に生徒さんへ指導している3つの呼吸のアプローチを教えていただきました。
扱ったのは、ブレッシーな声(息を多く含んだ、やわらかい声) を出す場合、声門閉鎖を高めたい場合、そして高音域で大きな音を出したい場合です。
ここで印象的だったのは、呼吸法そのものを覚えることがゴールではないことでした。同じトレーニングを行っても、その人の声門閉鎖が強いのか弱いのかによって、必要なアプローチは変わります。
呼吸は、ただ身体に任せておけばいいものでも、強くコントロールすればいいものでもありません。狙っている声色を出すための「戦略」の一つとして呼吸を考える。これが今回の講義で、大きな学びの一つでした。
声門閉鎖と呼吸を組み合わせて考える
ケリー先生は、呼吸の使い方は声門閉鎖の状態によっても変わると話されていました。声門閉鎖が強いのか、弱いのか。その状態を見ながら、呼吸のトレーニングと組み合わせていくことが大切です。
呼吸だけを切り離して考えるよりも、声帯の状態と合わせて見ていくことで、その人の声に合ったトレーニングを考えやすくなります。
呼吸と発声の学びをレッスンに活かす
今回学んだ呼吸のアプローチと、これまで【VT-RV】で学んできた発声エクササイズを組み合わせることで、生徒さん一人ひとりの声に、より細かくアプローチできるのではないかと感じました。
発声を考えるとき、声帯と呼吸は深く関わっています。今回の講義では、その関係を身体の仕組みから学び、実際のレッスンにつながる具体的な方法まで知ることができました。今回もボイストレーナーとして、とても貴重な学びになりました。早速、日々のレッスンにも取り入れていきたいと思います。
次回は【VT-RV】特別講義です!ジュリア・ニーセル先生による「ビブラートの科学」について、2週にわたって学びます。【VT-RV】では初登場となる講義なので、とても楽しみです。次回のレポートもぜひご覧くださいね!
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