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VT-RVレポート 2026.07.14 公開

フリップ(声の裏返り)を見極める発声分析とアプローチ法【VT-RV第3期レポート】

こんにちは!VTボイストレーナーの三浦優子です。今回のボイストレーナー養成講座【VT-RV】第3期の講義のレポートは、VT代表・桜田ヒロキインストラクターによる「スケール(音階)のツールデザイン2」をお届けします。

ツールデザイン2の講義スタート|フリップとは声が裏返る現象


前回の「スケール(音階)のツールデザイン」では、ライトチェスト(声が薄くなる状態)とプルチェスト(地声を無理に引き上げる状態)についてのトピックでした。今回はその続きとして、フリップ(声の裏返り)のツールデザインについて学んでいきます。
まずは、フリップでは何が起きているかについて解説がありました。
フリップとは、声が裏返る現象のこと。声の裏返りといっても、原因は人によって異なります。同じ「裏返る」という現象でも、その背景を理解しないと、適切なアプローチはできません。
フリップという現象の「原因を見極める分析力」が、ボイストレーナーにとってとても大切になってくるのです。

フリップ3つのタイプ|原因は人によって異なる
桜田インストラクターからは、フリップの原因を3つのタイプに分けて解説がありました。
フリップの3タイプと原因

このように、フリップといっても、全員が同じツール設計になるわけではありません。

「ひっくり返った瞬間」ではなく「その前」に注目する
フリップの分析で特に大切なポイントとして、桜田インストラクターの視点が印象的でした。それは、フリップが聴こえた時に、ひっくり返ったところだけに注目せずに、その前に何が起きているかに注目するということ。
例えば、次のようなポイントに注目していきます。
✅️ひっくり返ってしまう前に音量が大きくなっている
✅️息漏れが増えている
✅️母音が広がっている
結果ではなく、そこに至るまでのプロセスを見ることが、原因を見極める鍵になるのです。

ボイスサンプルで学ぶ|「原因を聞き取れる耳」を育てる
ここで、フリップが起きているボイスサンプルをいくつか聴きながら、どんなタイプのフリップなのかを受講生みんなで確認していきました。
受講生の回答を聞いて、桜田インストラクターは「耳も育ってきていますね」と感想を述べていました。
桜田インストラクター: 「ひっくり返ったという現象は、一般の方でもわかると思う。大事なのは、どんな原因でひっくり返っているかを聞き取れることです。」
「裏返っている」という現象を聞き分けたら、「なぜ裏返っているのか」を分析できる耳が、ボイストレーナーのスキルなのだと改めて実感しました。

複数エラーへの改善アプローチ
さらに講義では、発声のエラーが複数ある方への改善方法についても教わりました。 例えば「ライトチェストから入り、ややプルチェストになり、その後にフリップする」というように、複数のエラーが重なっている場合。
桜田インストラクターの答えは、まずはライトチェストから改善していくとのことでした。 というのも、先にフリップを直してからライトチェストを直すと、その後プルチェストになってしまうことがあるからだそうです。
低音のバランスを作ってから、ブリッジエリア(喚声エリア)に向き合わせた方が上手くいくことが多いというのは、指導の順序として覚えておきたいポイントです。

「補助」から「チャレンジ」へ|ツールデザインの発展的な使い方


ここまで学んできたツールデザインは、問題のある発声状態を「補正」するための設計でした。声の状態が改善してくると、ツールデザインの目的は少しずつ変わっていきます。
そこで次に学んだのが、「補助」のためだけではなく「チャレンジ」という発展のために、どのようにツールを使っていくのかという考え方でした。

補助の要素を少しずつ外していく
例えば、これまでライトチェストの方に声門閉鎖を助けてくれるような子音+母音を使っていた場合、次のステップとして補助の弱い子音+母音を使っていきます。
つまり、発声を助ける要素を少しずつ外していくというアプローチです。
スケールを変えて実践的な条件に近づける
さらに、音階も次のように使い分けていきます。
・1.5オクターブのスケール(声区移行が起こりやすい)
・5toneのスケール(声区移行が起こりにくい)
このスケールでも安定しているのかを見ていきます。
そして「チャレンジ」したときにエラーが起きれば、また「補助」の要素を入れるなどして調整しながらステップアップしていくことで、より実践的な条件に近づけていきます。

目的を持ってツールを選ぶ
慣れてくると、なんとなくの流れでツールを回していくことはできてきます。ですが、どんな目的のために、どんな母音・子音・音階を組み合わせてエクササイズを行っていくのかを意識するのが、指導の質を左右すると改めて感じました。
ここまで理解が深まると、桜田インストラクターがどんな目的でエクササイズを処方しているのかを、より深く読み取れるなぁとも思いました。

レッスン見学|プルチェスト気味の女性へのバランス調整


後半はレッスン見学の時間でした。今回の生徒役の方は、プルチェスト気味であり、そうならないようにしようとすると逆に薄くなってしまいがちで、声のバランスを探している女性でした。

エクササイズでバランスを探る
まずはいくつかエクササイズを行いながら、「下りはもう少しチェストを入れて」など細かい指示を出しながら調整を行っていました。
次に、母音だけでロングスケールを行いました。というのも、女性はバランスを探してはいるものの、スキルのある方なので、自分でエラーに気づかせるようにという目的もあったと解説がありました。
生徒さんのレベルに応じて、指導のアプローチも変わってくるというのは、とても勉強になるポイントでした。

ハイラリンクス+5toneでチェストのバランス調整
そして次に、桜田インストラクターはハイラリンクス(喉頭を上げた状態)でのエクササイズを多く取り入れていました。その際に、ショートスケールである5toneを使っていました。
このアプローチには、次のような狙いがあったそうです。

①チェストに居着いてほしい
②声のウェイトを使わないようにしたい
③でも、ファルセット(裏声)に行かないようにしたい

すると、女性は「喉が軽い」という感想を話していました。話し声も軽く感じていたそうで、「普段落としすぎなのかもしれない」と体感を話されていました。
ハイラリンクスのエクササイズをいくつか行なったあと、喉頭の位置をニュートラルに戻すと、最初のような厚くなったり薄くなったりというばらつきがなくなっていて、全体のバランスが良くなっているのがよくわかりました。

楽曲での応用|「Precious」でキーチェンジと母音調整


エクササイズの後は、伊藤由奈さんの「Precious」を歌いました。「ふたりだから~」というところの上昇していくフレーズが少し押し上げていたので、調整を行っていきました。

キーチェンジで応用する
一度、ハイラリンクスのダウンスケールのエクササイズを取り入れ、その後に先ほどのフレーズをハイラリンクスのNayで歌いました。
ここではフレーズのキーを少しずつあげていくことを行っていました。これには、重くなってしまうエリアから外していく目的があります。
このようなキーチェンジは、これまで学んだスケールの考え方を歌唱で応用しているので、積極的に取り入れると良いと解説がありました。
 
母音の細かい調整でヘッドボイスを探る
キーを高くしたあと、この感覚をキープするようにと元のキーに戻しました。さらに、細かく母音を調整してヘッドボイスがハマるところを探していきました。
今回の楽曲は、地声で持ち上げるか、裏声に逃がしたままになってしまうかのどちらかに偏ってしまいやすいメロディラインになっているとのお話がありました。
声にウェイトがあるタイプにはこのような楽曲は難しいからこそ、普段の発声練習で地声と裏声の行き来を上手にコントロールしていく必要があるとのことでした。
 
 

レッスン見学のまとめ|同じボイスタイプでも人によって違う


今回のレッスン見学は、ここまで学んだツールの考え方を歌唱でも応用しているのがよく理解でき、とても勉強になりました。
大まかに同じボイスタイプであっても、細かく分析していくと人によって全然違います。どんなエクササイズを処方するのかというのは、ちゃんと目的を持って行うことが大事だと感じました。
桜田インストラクターの講義では今後、選曲についてのトピックもあるそうなので、とても楽しみです。
 
 

次回は、【VT-RV】初登場の講師による講義

次回は、【VT-RV】初登場の講師による講義があります!テーマは「幼少期から高齢までの体と声の変化について」です。
これまでの講義で学んできた発声のメカニズムに加えて、年齢による体と声の変化という新しい視点が加わっていくのが楽しみです。
こちらもまたレポートしますので、お楽しみに〜!

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