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こんにちは!VTボイストレーナーの三浦優子です。今回のボイストレーナー養成講座【VT-RV】第3期の講義レポートは、ケリー・オバート先生による「音声障害」についてです。
ケリー先生は、言語聴覚士でもあり、ボイストレーナーでもある音声障害の専門家です。生徒さんの声の状態を聞いて、安全にレッスンを進められるのか。それとも、一度医師に診てもらったほうがいいのか。また、声帯にはどのような病変があるのかなども含めて、ボイストレーナーとして知っておきたい実践的なお話を聞くことができました。

今回のテーマのような講義では、いきなり声帯の話から始まることが多いそうです。ですが、声道がどのようになっているのかを話すのであれば、鼻腔から話す必要があるとのことでした。
というのも音声障害の症状は、アレルギーや副鼻腔の問題も声に関わってくるからです。そのため、ケリー先生からはまず、鼻の話・アレルギーの話・その対処法についての解説がありました。
私たちボイストレーナーが「声」と聞くと、つい声帯だけに注目してしまいがちです。ですが、声道全体を俯瞰する視点が、生徒さんの声の状態を正しく理解するために大切なのだと学びました。
軟口蓋4つのポジション|声色を変える上顎の動き
続いては、軟口蓋についての解説でした。軟口蓋は上顎の奥の方にある部分で、低位・中位・高位と高さが変わることで、空気の流れが変わり、声色にも影響が出ます。

ケリー先生はこの4つのポジションごとに、どのような声色になるのかを実際にデモンストレーションしてくれました。また、軟口蓋の筋肉は舌根に繋がっているそうです。軟口蓋の筋肉が安定している状態であれば、舌のコントロールもしやすくなるという解説がありました。
「マスクに響かせる」は誤解?|ボイストレーナーが知るべき発声の真実
ここでケリー先生から、「マスクに響かせる発声」についての重要な助言がありました。歌の世界では「マスクに響かせて」という表現がよく使われます。マスクというのは、アイマスクで覆われる部分を指します。しかし、「マスク=鼻に響かせる」と思われている方も多いと思いますが、実は、鼻に響かせるのは良い音ではないのだそうです。
なぜ鼻に響かせるのはNGなのか
鼻には、埃などをシャットダウンするためのフィルターがあります。実はこのフィルター、音を吸収する役割も担っているのです。つまり、声が伝達しづらい構造になっています。基本的には、「Highのポジション」が良いというお話でした。
「マスクに響かせて」というよく使われるフレーズも、正しい解剖学的な理解があると、指導の質が大きく変わります。ボイストレーナーとして、こうした基礎知識を持っておくことの大切さを改めて感じました。

講義は、声帯のトピックに移りました。左右の声帯の接触が多い部分が、声帯全体のどこら辺なのか。また、声帯の炎症や異変ができやすい場所も、「歌によってなのか、逆流性食道炎などによってなのかで異なる」というお話がありました。
声帯の「層」を発見したのは日本人だった
声帯について学んだことのある方なら、声帯はいくつかの層に分かれていることをご存知かもしれません。この層があることを発見したのは、1970年代の音声医学・喉頭学の研究者、平野実氏なのだそうです。
平野氏の「カバー・ボディ理論」というモデルが提唱されるまでは、声帯にできた病変を取り除く時は声帯自体を切除して処置していたそうです。
ですが、層があることが世に広まってからは、病変のある層だけを切除する処置に変わりました。声帯を切除してしまうと、もう以前のようには歌えなくなりますが、処置方法が変わることで、たくさんのシンガー生命が救われたのではないかと思います。そして、それを発見したのが日本人と聞くと、なんだかとても感慨深いなとも感じました。

講義の終盤では、具体的にどのような病変があるのかを解説していただきました。ここからは、ボイストレーナーとして知っておきたい代表的な病変について紹介します。
■ポリープ|有茎性と広基性の2タイプ
まずはポリープについて学びました。ポリープとは、声帯にできる腫瘤(しゅりゅう)状の病変のことで、声のかすれや違和感などの症状につながります。 ポリープには、有茎性と広基性の2種類があります。

ポリープは基本的には液体が中に詰まっている状態ですが、時間が経つにつれてゼラチン状になったり、もっと硬くなったりするそうです。
■ポリープ様声帯炎(ラインケ浮腫)
ポリープ様声帯炎(ラインケ浮腫)と呼ばれる病変は、声帯全体に影響が及んでしまうものもあります。これは喫煙者に症状が出ることの多い病変で、言語聴覚療法も手術も手立てができない状態だそうです。というのも、上皮組織が伸び切っている状態で、これを全て摘出しても、範囲が広いためまた別の問題が起きてしまうとのことでした。
■結節|両側にできる病変
結節は、声帯に一番負荷が掛かっているところで両側にできるもので、上皮組織が厚くなってしまった病変です。これは言語聴覚療法で改善されていくそうですが、ケリー先生によると4ヶ月くらいかかるとのことでした。
■嚢胞|声帯の深い部位にできる
嚢胞は、声帯の中に粘液や上皮組織の細胞の液体が詰まってできることが多いそうです。
ポリープや結節が声帯の表面にできる病変であるのに対し、嚢胞は深い部位にできるのが特徴です。
そのため、手術をするときは、上皮組織を一度剥がして嚢胞だけを摘出し、また表皮を戻す手法になります。
また、嚢胞が大きすぎると摘出しても問題が発生する場合もあるため、嚢胞があっても歌っていて問題がない場合は摘出しないという判断もあるとのことでした。
■肉芽腫|刺激物によってできる病変
肉芽腫は、刺激物によってできるもので、多くの場合は逆流性食道炎によってできるそうです。手術時にチューブを挿管した時に起きる摩擦などでもできる場合があります。
このように、病変ができている位置に特徴があるため、どういったタイプのものなのかを推測できるとのことでした。
他にも声帯溝症などの特徴や症状を紹介していただき、実際に病変のある声帯の資料も見せていただきました。声帯というのは、とても繊細だということが改めてよくわかりました。

最後にケリー先生からは、印象的なお話がありました。医者は、声帯にある病変を探し、それを切除できるかできないかという目で診ている傾向があるそうです。だからこそ、言語病理学者が「機能」という視点を持っていることは大切だ、というお話でした。
また、「手間はかかるかもしれないけれども、生徒さんが医者に掛かるときは、ボイストレーナーは付いて行ってあげた方が安心」だという助言もありました。
私たちボイストレーナーは、病変を判断することはできません。ですが、どんな病変があるかを知っておくこと、歌声にとって良い声帯を保つ方法を考えること、そして医者と生徒さんの架け橋となること、この3つが大事な役割だと感じました。
次回は、ケリー・オバート先生から「呼吸」について学びます。言語聴覚士とボイストレーナー、両方の視点をお持ちのケリー先生から、どんなお話を聞けるのか、今からとても楽しみです。次回のレポートもお楽しみに〜!
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