イディナ・メンデルを徹底解説!
ベルティングの女王とも呼ばれるほどミュージカル界では有名なイディナ・メンゼルを解析していきたいと思います。
解析動画では、ミュージカル「Wicked」の曲である「Defying Gravity」のライブの動画を使っています。
これはイディナ・メンゼルが「Wicked」の中でエルファバとして演じているものではなく、ソロアーティストとして歌っている時のものです。
エルファバとしてではなく、ソロアーティストとして歌っているので、微妙に歌い回しが違ったりします。
その違いについても触れていきたいと思います。
そして、実際はどれくらいの頻度でベルティングを使って歌っているのか? どのような作戦で歌っているのか?など、歌い方と合わせてベルティングについても解説します。
動画であげたポイント
・歌い始めはピアノのみの伴奏でフリーテンポ。
・微妙にフレージングを変えている箇所がある。
「2note trill down」を使ったりと、ポップスやソウル系のシンガーがやるようなフレーズの作り方などもしていて彼女の音楽能力の高さが見える。
・バンドインをしてからもフレージングを劇場版と変えている箇所がある。
「3連符系のフレージング」「8分系のシンコペーション」などを使いながらメロディにフックやブレーキをかけたりしている。
・1回目のサビではMIXやFalsettoを使っている。
イディナ・メンゼルは非常にダイナミックな歌唱で定評がありますが、1回目のサビに入っても大きな声を使っていませんね。
むしろ小さな声であったりミディアムくらいのボリュームで表現しているのを見せつけてくれています。
・フレーズをあえて前にずらし突っ込ませ、着地するポイントでは拍の頭に揃え成立させている箇所がある。
この手法は語り歌いのようにして拍を外し歌っていますが、必ずポイントで拍を揃えることが重要です!
これが崩れてしまうとリズムが悪く聞こえてしまいます。
・Verse2に入ると子音を強調して歌っている。
・ピッチを一瞬トリルにして当てたり、アクセントの置き方を工夫して動きのある歌い方をしている。
・2回目のコーラスに入る前らへんから、フレーズを太く出したり引っぱったりしながらしっかりと歌っている感じを演出している。
歌声に躍動感が出てきていますね。
躍動感を持つことで感動を生みやすくなります。
・イディナの喉の柔軟性が感じられるビブラートに注目。フレキシビリティがすごく高い。
一般的に声帯の下にプレッシャーが強く来るとビブラートや声を早く動かすのが難しくなります。
ですが彼女の場合、太く出していてもビブラートが速いですね。
音楽能力だけではなく、声のアスリートとして運動能力が非常に高いと言えますね!
・フレーズとフレーズを加速して繋ぐようなビブラートを巧みに使い、疾走感があり、かっこよく聞こえる。
・大きな口と大きな顎がイディナの特徴で、これを駆使して歌っている。
口が大きい人、顎が大きい人は器質的に高い声のコントロールが得意な人が多く、顎が大きい、口が広い人は口を開けた時に声帯から唇までの距離を短くすることができます。
フルートとピッコロのような楽器をイメージするとわかりやすいと思います。
この2つでは高い音をブーストするのが得意な方はピッコロですよね。
唇を突き出すようにして声帯から唇の距離を長くすると、太く低い音が得意とされます。
また、口を横に開いて声帯から唇の距離を短くすると、高い音が得意とされます。
この時、口を横に開くときのピッチには要注意です。
ミドルボイスエリア(A4ーA5)と言うのは、口を横に開きすぎると怒鳴りやすく、結果ピッチが下がりやすくなるので注意しましょう。
・ここでの息っぽい声の表現方法は、息を漏らすだけでなく、その上から声帯を強く閉じていくようなイメージでシャーという雑音が乗っかり圧の加わった声を演出している。
・Bridgeでは劇場版にはなかった語り歌いをして、「喋り」→「歌い」と交互に取り入れた演出をしている。
・この楽曲は4分25秒ある中で2分45秒でようやくベルティングを使っている。
楽曲が始まり、半分を過ぎたあたりでようやく1度だけベルティングで力強い歌声を使っています。
イディナ・メンゼルといえば「ベルティング」という力強い歌声のイメージがありますが、実際は楽曲の半分に来ても大きな声で歌っていませんね。
非常に学ぶ事が多いではないでしょうか。
これはイディナ・メンゼルが「ベルティング以外のテクニック」を沢山持っていると言う事がわかりますね。
・歌詞に出てくる「Look」は「ア」と「ウ」の中間母音くらいなためベルトでは出しづらくミックスにして声を歪ませて出す工夫がされている。
・イディナ・メンゼルにとってベルトサウンドを得意に出せる音はE♭5である。これを下からしゃくって出している。
ミックスができる人からすると、一発でポンと出すよりも引っ掛けてから上がってミックスの方に入れてしまった方が結構簡単です。
ただし、喉のフレキシビリティや柔軟性がある程度高い状態であることが条件の一つになってきます。
このようにミックスができる人は、引っ掛けて大きくしゃくることでダイナミックにドラマティックに聴かせることができるので、とてもいい技かもしれません。
ベルトを取得するにはまずはミックスボイスがとても重要です。
・曲の終盤「me」のところでは、舌を巻き込んでしまい過剰な舌へのテンションがかかっている。
男性にも女性にとっても「me」(E♭5)のイ母音は歌うには高すぎる母音です。
ここを「イ」で歌うのであれば、舌を前に出すようなイメージを作り、イ母音とエ母音の中間母音でどちらかというと「エ」よりの発音で歌うと舌が奥まらずに済みます。
そして強い音に聴かせることができます。
・「down」の語尾である「n」の発音まで一瞬の隙きもなく歌い上げている。
・ラスト「AH!」ではベルトを使い、A♭からスタートして彼女のシグネチャーサウンドであるE♭に引っ掛けてからD♭に着地してだんだん深くしてビブラートを掛けている。
このようにだんだん深くしながらビブラートをしていくのはよくある手段です。
ビブラートをかけていく時に喉頭が過度に高い位置にあると難しいことが多く、ビブラートをかけている時とかけていない時では息の使う量も変わってきます。
ビブラートをかけている時の方が息の量が多くなるというのは、科学的にも証明されているようです。
やや緊張が強い状態から息を流し始め、良いバランスになった結果、音が柔らかくなりつつ喉を少しずつ下げてリラックスの状態になります。
この時にビブラートが始まっていきます。
まとめ
彼女の卓越した音楽能力や発声能力、そしてSoul・心が完璧に揃っている時に神がかったパフォーマンスに仕上がっていますね。
イディナのエルファバとして歌っている「Defying Gravity」もYouTubeに載っているのでぜひ聴き比べてみてください。
そして何が違うのかなどご自身で掘り下げて見てみると面白いと思います。
フレーズの作り方やアレンジの仕方など、ミュージカル曲をライブとして歌う時に参考にしてみると面白いのではないでしょうか。是非ともチャレンジしてみて下さいね。
解説しているインストラクター
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セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。
このインストラクターの動画
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