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こんにちは!VTボイストレーナーの三浦優子です。ボイストレーナー養成講座【VT-RV】第3期では、今回初登場の講師、カレン・ブランセン先生による講義が行われました。
カレン先生は、ノースウェスタン大学ビーネン音楽院の声楽・オペラ教授で、世界各国のカンファレンスや講義にも登壇されています。講義のテーマは、「生涯にわたる歌手の声の発達の変化」。
今回は2週にわたる講義のうち、1回目の内容をレポートします。
講義のはじめに、カレン先生からこのようなお話がありました。
カレン先生「2回の講義が終わるときに、声というものは楽器になりえる奇跡のものだということを感じ取ってほしい」
私たちの体や器官は、生まれてから亡くなるまで、年代によって変化していきます。声も同じです。
赤ちゃんの頃の声、思春期の声、大人の声、そして年齢を重ねてからの声。どの時期にも、その年齢ならではの体の状態があり、声の出方にも影響しています。
カレン先生は、体がどのように発達し、変化していくのかを深く理解することで、どんな年齢においても現実的な可能性を俯瞰して見られるようになると話してくださいました。
1週目のトピックは、呼吸と喉頭、その変化についてです。

まずは体にどのような器官があるのかを解説していただいたあと、性ホルモンについて学びました。性ホルモンには、大きく分けて次の3つがあります。

この性ホルモンが、声にも影響を与えているということが、とても印象的でした。
たとえば女性の場合、初経から閉経までの間は、エストロゲン、特にエストラジオールが十分に分泌され、プロゲステロンやテストステロンも適切に働いています。
そのため、声帯の粘膜の潤いや柔軟性、筋肉の状態が保たれやすく、声のコンディションが比較的安定しやすい時期とのこと。
月経周期によって細かい変動はありますが、この期間は「歌うには最適の時期」とも言えるとのことでした。
閉経後のホルモン変化と声への影響
一方、閉経後はエストロゲン、特にエストラジオールが大きく減少します。すると、相対的にアンドロゲン、つまり男性ホルモンの影響が強くなります。その影響で、次のような変化がみられる場合があるそうです。

ホルモンの変化は、声帯の状態や声の高さ、声の出しやすさにも関わっていきます。男性も同じように、年齢によってホルモンバランスが変化し、それが声に影響を及ぼします。
男性も女性も、年齢とともにホルモンバランスは変化します。特に高齢になるにつれて、その変化が声にどのような影響を与えるのかは、なかなか知る機会がありませんでした。
この視点を知っているかどうかで、高齢の生徒さんへのアプローチ方法も変わっていくと思います。
声の変化を「年齢のせい」とひとことで片づけずに、ホルモン、声帯、筋肉、呼吸などの変化として見ていくことが大切なのだと感じました。ボイストレーナーとして、とても重要な学びでした。

続いて学んだのは、呼吸についてです。まず、生まれたばかりの新生児の呼吸や骨、声道がどのような状態なのか。また、赤ちゃんがどのように言語を発していくのかについて解説していただきました。
そして、年齢によって体がどのように発達していくのかも学びました。新生児の肋骨は、まだ骨化しておらず、軟骨組織が多い状態です。スポンジのように柔らかく、扇型に広がっています。
それが10歳頃になると、大人の肋骨のように変化していきます。肋骨の変化に伴って、横隔膜にも変化が起こり、呼吸数も減っていきます。

特に印象に残ったのは、肋骨の形が30〜40代にかけても変化するという点です。
カレン先生によると、年齢とともに歌っているときに息が足りないと感じる背景には、この変化も大きく関わっています。
高齢になるにつれて、骨の細胞の循環は少しずつ悪くなります。死んだ細胞を再吸収しづらくなり、自分の体を支えることも難しくなっていくそうです。
また、肋軟骨などの軟部組織は、使わないと少しずつ萎縮していきます。体はその変化に合わせた動きになっていくため、肋骨の可動域や姿勢にも影響が出ます。
若い頃は肋骨の可動域があるため呼吸しやすい一方で、高齢になるにつれて可動域は減少し、呼吸がしづらくなっていきます。
歌うときの「息が足りない」という感覚も、単に呼吸の練習不足だけではありません。肋骨や姿勢、年齢による体の変化が関係している場合があるのだと感じました。

次に学んだのは、脊椎(せきつい)についてです。脊椎(せきつい)は、頸椎(けいつい)・胸椎(きょうつい)・腰椎(ようつい)・仙骨(せんこつ)・尾骨(びこつ)が連なったもの。いわゆる「背骨」にあたります。
背骨は、体を横から見るとまっすぐ垂直ではなく、緩やかなカーブを描いています。この脊椎も、年齢とともに頚椎や胸椎の部分が丸くなり、猫背のような姿勢になっていきます。
そのため、高齢の生徒さんに対して、無理に「胸を張ってください」と姿勢を正そうとするのは適切ではない場合があります。
大切なのは、骨の形状を理解したうえで、その人にとって楽に声を出せる姿勢を探すこと。
一方で、幼い生徒さんは、まだ骨格や筋肉が発達途中にあります。大人とは体の状態が違うため、同じ指導法をそのまま当てはめることは推奨できないとのことでした。

年齢が違えば、体の状態も違います。体の状態が違えば、声の出し方や必要なアプローチも変わります。ボイストレーナーは、生徒さんの声に加えて、年齢や体の発達段階も見ていく必要があるのだと感じました。

最後は、肺について学びました。呼吸の空気は気管を通り、肺の中で細かく枝分かれしていきます。その先端にあるのが肺胞(はいほう)です。
肺胞は、酸素と二酸化炭素を交換している器官です。生まれたときには約5,000万〜7,000万個ほどの肺胞があり、成長とともに増えていきます。個人差はあるものの、最終的には約3億個ほどになるそうです。
しかし、加齢によって肺胞は萎縮して後退していきます。そのため、年齢とともに呼吸の効率にも影響が出やすくなるとのことでした。

また、肺には「残気量」といって、息を吐いたあとにも肺に残っている空気があります。この残気量は、40歳手前から80歳くらいまで、少しずつ増えていきます。
メゾソプラノ歌手でもあるカレン先生ご自身も、45歳のときに、今まで問題なく歌えていたフレーズの途中で息を吸わなければならなくなり、そこで体の変化に気づいたそうです。
大切なのは、肺そのものには筋肉がないということです。肺は、周りの筋肉を使って息を吸ったり吐いたりする構造になっています。その吐いた息が、声帯という振動する器官へ伝わっていきます。
呼吸には、肋骨、横隔膜、姿勢、筋肉、肺胞など、さまざまな要素が関わって成り立っているのです。
呼吸は、筋肉・骨格・器官が関わって成り立っている
今回の講義を通して、呼吸は筋肉、骨格、器官など、さまざまな要素が関わって成り立っていることを深く理解できました。
声は、喉だけで作られているものではありません。肋骨の動き、脊椎のカーブ、肺の働き、ホルモンバランスなど、年齢とともに変化する体の一つひとつが、呼吸や声に関わっています。
個人的に解剖学が好きなので、筋肉については勉強していました。ですが、年齢による骨格やホルモンバランスの変化にはあまり触れてこなかったため、新しい視点がたくさんありました。
年齢による変化を知ることは、その年代の声の可能性を見つけていくための大切な視点です。「体は楽器」と言われるように、体が声に影響することは、これまでも学んできましたが、今回の講義を通して、その言葉の意味がより立体的に感じられました。あっという間の2時間でした。
次回は、同じくカレン・ブランセン先生の講義で振動と共鳴について学びます。今回と同じように、年齢によってどのような変化があり、それが声にどのように関わっていくのか、学べるのが楽しみです!
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