「お腹に力を入れて」を科学で解き明かす呼吸法:ボイストレーナー育成&養成講座【VT-RV講座レポート第14回】
こんにちは!VTボイストレーナーの三浦優子です。3週にわたって行われているケリー・オバート先生(言語病理学者/ボイスティーチャー)の講義。第2回目となる今回は「呼吸」がテーマでした。
呼吸法といえば、歌やボイストレーニングの世界でよく語られる要素ですが、ケリー先生は呼吸器科での臨床経験を活かし、医学的な視点からもアプローチされています。
今回はその専門的な知見から、「呼吸をどう歌に活かすか」について深く学ぶことができました。
肺と横隔膜の“本当の働き”を知る
呼吸というと、「肺に空気を入れる」「横隔膜を動かす」といった言葉がよく使われますが、ケリー先生の解説で、その仕組みを改めて見直すことができました。
まず、肺は筋肉ではないので、自ら動ける器官ではないとのことです。 風船のような袋でもなく、あくまで“受動的”に動く臓器です。 では何によって動かされるのか?
それが、横隔膜や肋骨の動きです。
とくに印象的だったのは、横隔膜の働きについての説明です。
✅横隔膜は「吸うとき」にだけ能動的に働く
✅息を吐くとき、横隔膜をコントロールすることはできない
✅吐くスピードを調整しているのは、声帯や唇の“抵抗”によるもの
つまり、私たちは“吐くときに横隔膜を使って息をコントロールしている”と思いがちですが、実は吐くための主役は横隔膜ではないのです。
よく「お腹に手を当てて横隔膜を感じて」と言われますが、実際に感じているのは横隔膜そのものではなく、横隔膜に押し下げられた内臓の動き。
この事実には、私自身も驚きました。
呼吸法というと、歌の世界だけでなく演劇やヨガなどでも語られるテーマでもありますよね。「誰が言っているか」「どの分野の視点か」によって、表現や捉え方がまったく違うのだと実感しました。
今回のように、医学的・解剖学的に裏付けされた呼吸の知識を学べたことで、呼吸に対する解像度が一段と上がりました。
そして改めて、「声帯をどのようにコントロールするか」がいかに大事であるのかを強く感じました。
「お腹で支える」とは“抵抗を作ること”だった
もうひとつ印象的だったのが、「支え」に関する説明です。歌の指導では「お腹で支えて!」という言葉をよく耳にしますが、ケリー先生はこれを否定し、「支えとは、声道内に“抵抗”を作ること」と教えてくださいました。
たとえば、唇をすぼめて息を吐くと、肋骨がすぐには戻らず、息の流れをコントロールできます。これが“支え”の正体。
つまり、無理にお腹に力を入れることではなく、声帯や唇などでどのくらい抵抗を作るかが呼吸コントロールのカギになるのです。
私も学生時代に声楽の先生から「支えが足りない」とよく言われていました。けれど「支え」とは何を指すのか分からず、とりあえずお腹に息をフッと入れてみるしかなかった…。
今回の説明でようやく、その長年の疑問が腑に落ちた感覚がありました。
曖昧なイメージから、明確な言葉へ
今回の講義を通して、「支え」や「呼吸法」に対するこれまでのモヤモヤがかなり整理されました。
「横隔膜を意識して動かす」「お腹で支える」といった曖昧な言葉から離れて、 “声帯の閉鎖”や“声道内の抵抗”をどう作るかという具体的な視点を持つことで、今後の指導や実践もより明確になっていきそうです。
次回はいよいよケリー先生による「声道」についての講義!【 VT-RV】第2期の最後の講義になります。専門的だけど、ちゃんと実感できる。そんな学びを次回も楽しみにしています!
投稿者プロフィール

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大阪音楽大学短期大学部ミュージカルコース卒業
宝塚音楽学校附属宝塚コドモアテネ卒業
幼少の頃からクラシックバレエを習い、毎年行われる発表会やその他数々の公演、業界最大手の舞浜大手テーマパークのショーやパレードに出演。
ダンスパフォーマンスにおいては特に活躍を遂げ、忙しい日々を送ると同時にボイストレーニングを続けるが、自分の悩みを解決できる先生となかなか出会えず「これで上達できるのか?」と不安を感じ、次第に歌を諦めてしまう。
そんな中、発声を科学的に捉え、的確なトレーニングを行えるVTチームの存在を友人から聞き、VTチームのレッスンを受講。
ハリウッド式ボイストレーニングに感銘を受ける。
現在は自身の「踊りながら歌う難しさ」を克服した経験を活かし
「ダンサーとしてミュージカルの舞台に立ちたい」
「ミュージカルに出演しているが、シンガーの枠に入りたい」
という方々を中心としたサポートに向け、勢力的にトレーニングを行っている。
全米ヨガアライアンスRYT200を取得し、ヨガインストラクターとしても活躍中。
クライアント一人ひとりに合った姿勢矯正を行うことにより、発声の改善、呼吸の改善、ダンスの改善を行い、クライアント様から高い評価を得ている。
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