【動画解説】声楽・裏声発声から地声発声を身に付けるボイストレーニング法
2020.12.25
今回のボイストレーニングで解決したい事は「地声の強化」です!
特に声楽、オペラ、合唱を歌ってきた女性で、
「裏声(頭声、レジット)は出来るけど、地声を習った事がない。」
「クラシカルな高音は得意だけど低音や地声的な高音発声が苦手・・・。」
そんな方、特に女性に多いのではないでしょうか?
今回取り上げる動画にご協力いただいたのは声楽経験者の生徒さん。
CCM系(Commertial Contemporary Music)の発声を強化していきたいという課題をお持ちです。
※「CCMスタイル」の音楽とは多くの場合でクラシック系以外の事を指し、近年、欧米では一般的に使われる用語となりつつありますので、音楽留学を考えている方は覚えておいてくださいね。
それでは実際のレッスン動画はこちら!
低音部・地声をしっかりと強化するエクササイズ→裏声での高音から地声での低音へのスライドダウンを繰り返す形でレッスンを組み立てています。
口を開けるときは顎に意識を!
レッスン中、何度か口の開け方について指摘をしています。
口の動きは非常に重要で、発声が卓越している人としてない人では口の動きにとても差が出てきます。
今回のメインテーマ地声に関してだけでなく、歌唱・発声の上でとても大事なこと。
耳の付け根に手を添えて、顎の蝶番部分から開けるように何度もお手本をしていますが、口が思うように開かない人はここから動かせていない場合が非常に多いです!
口を開けて発声をしたときに歯が全部見えてしまう人は「唇」だけで開けようとしている可能性大。
ぜひ鏡を見て確認してみてくださいね。
顎を開く事により、声帯から唇までの距離が短くなり(声道が短くなり)高音発声に向いた共鳴腔の形が出来ます。
地声強化エクササイズ
まずは低音部をしっかりとした地声で出せるようになること。
動画内では地声強化のエクササイズを複数使っています。
「ア(アとエの中間母音)」(1:50)
「ナ(ナとネの中間母音)」(5:15)
「ア」も「ナ」も日本語の「あ」と「え」の中間の音としてよく説明される母音。
動画内では“Cat”の「ア」の発音で例をあげています。
「あ」と「え」の中間母音は歌声で重要な高周波成分を多く含み、音声学的な解析を行っても歌唱トレーニングの方法論の理にかなったメニューと考えられます。
この発音をキープしたまましっかり発声できるように練習していきます。
この発音が思うように真似できない方は「あ」と「お」寄りの発声になっていないか確認をしてみてくださいね。
ネイネイネイ(4:22)
ネイネイ・エクササイズは用途によっては「ハイラリンクス・エクササイズ」と呼ばれ、
喉頭を情報につり上げる事により、
・声道を短くする
・声帯の内転を一時的に助ける
と言う効果があります。
ネイネイ・エクササイズは、Speech Level Singingの開発者セス・リッグス氏が好んで使う事で、今日のボイストレーニングの現場でも多く使われるようになりました。
元々はセスの師匠とも呼ばれるキース・デイビス氏が使ったトレーニング法だそうです。
ガガガ(8:42)
終盤の「ガ」をぐずり声・泣き声で発声するエクササイズも声門閉鎖を強化。
さらに若干小さな声にする事で、息の吐きすぎも抑えてくれるので息っぽい声を抑えることができます。
「んガんガ」と「ん」が入ってしまう方はスタッカートで練習してみたり、奥舌のスナップをしっかり意識してみましょう。
これらのエクササイズでしっかりと地声が固まってくると、高音部でも声帯が閉じている感覚が掴めるようになってくるはずです。
裏声からのスライドダウン
地声エクササイズ→裏声からのスライドダウンを何度か繰り返していますが、回を重ねるたびに息漏れの減った芯のある声になっているのが聞こえてきますね。
動画参照 (2:45→6:07→8:08→9:42)
これが「高音部でも声帯が閉じている感覚」の第一歩です。
さらにここでのポイントは裏声から地声へのチェンジがバレないように降りてくる。
ゴールの地声をしっかり見定めて、丁寧に下降してきましょう。
裏声からのスライドダウンがスムーズにできるようになることで、裏声から地声へ・地声から裏声への急激な変化をなくすきっかけになってくれます。
※バレないようにという心構えが重要で、多くのシンガーは最初から「チェンジを無くす」と言う心構えでトレーニングを行ってしまい失敗する事が多いからです。
根本的には、
歌唱時に地声から急激にひっくり返ってしまう。
歌唱時に叫び声になってしまう。
地声が歌えない。
のは、このトレーニングが出来ないと、かなりの高確率で起こる事です。
VTのスタジオでもトレーニングの最も基本的な練習法として、積極的に取り入れています。
このスライドダウンは「2分でわかる動画」シリーズでも何度か取り上げているので見て練習してみてくださいね。
ブログ「ミックスボイス習得、最初の一歩!」のトレーニング方法を紹介!
裏声発声時だけではなく、地声の発声状態でも、裏声・高音時に優勢になる輪状甲状筋は大いに活躍しています。
低音の地声ばかりを練習すると、地声(甲状披裂筋)優勢の発声となり「音程が下がりがちになる」と行った弊害を起こします。
裏声の発声をコンスタントに挟む事により、輪状甲状筋がサボり出すのを防ぎます。
まとめ
パワフルな高音・裏声を作るにはまず地声をしっかり。
→いきなり高音の練習に入らず、まずは低音をしっかりと正しい形で出せるようになることが最優先。
地声のエクササイズは咽頭を上げて発声できるように
→「あ」と「え」の中間母音でしっかり発声できるようになったら、徐々に母音を変えて歌唱中に使える声に昇華させていきましょう!
魔女のような声で発声する「ケケケ」(7:14)での下降は咽頭の位置をあげる練習になってきますので、「悪い魔女」の声研究してみてくださいね。
スライドダウンでチェンジがバレないようにひらすら練習
→地声と裏声の連動性を高めていきましょう。まずは下降を極めます!
裏声系を主体としたメニューと地声を主体としたメニューを交互に行う事
→地声を強化したい場合でも、地声のみのトレーニングをすると過緊張発声を招く、音程が悪くなる、と言った弊害を引き起こす事があります。
地声の練習をしたら、その半分の時間程度は裏声の練習に地声を使いましょう!
これらをモノにしてからベルティングやミックスで力強い高音エクササイズへステップアップ。
地声的でパワフルな高音を目指して高い音域ばかりの練習をしている方。
一度、反対の低音部分。もしくは小さな声での発声もしっかりと見つめ直してみましょう!
そこに解決策が眠っているかもしれませんよ。
解説しているインストラクター
-
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。
このインストラクターの動画
- VT-RV情報2024.10.31VT Team Recognized Voice Trainer (VT-RV)第2期生の募集が決定!
- 声の健康法・アンチエイジング2024.04.28ボイスユーザーのための加湿方法全ガイド
- VT-RV情報2024.03.28ボイストレーナーのためのレッスンの構成法!
- 動画で解説2024.03.15歌う人のための呼吸のトレーニング方法