声帯ポリープと発声障害の理解を深める: ボイストレーナー育成&養成講座【VT-RV講座レポート第13回】
こんにちは、VTボイストレーナーの三浦優子です。【 VT-RV】第2期のラストを飾る講師として、今回から3回にわたりケリー・オーバート先生(ボイスティーチャー/言語病理学者)から学んでいきます。テーマは「発声障害」「呼吸」「声道」。どれも声に携わる私たちにとって欠かせない領域です。
初回の今回は「発声障害」についてのお話でした。
声帯は“どの部分”に病変があるかで見立てが変わる
耳鼻咽喉科医や言語聴覚士は、声帯を前部・中部・後部に区分して診断を行うそうです。
特に声帯の中心部分は最も圧力がかかるため、この部位に病変があると、歌ったり話したりといった発声に直接的な影響が出やすいとされています。
一方、後部は振動しないエリアであり、中心部以外の場所に病変が見られる場合には、発声以外の要因が関係していることも考えられます。
つまり、声帯の“どの位置”に病変があるのかを見極めることが、診断や理解の大きな手がかりになるのです。
声帯ポリープも“一つ”ではない 治療法も異なる
声帯に生じる病変の代表格といえば「ポリープ」。ポリープというのは、血豆のように液体が溜まっていたり、ゼラチン状のものが詰まっていたりする状態のことを指します。
ただし、ひとくちにポリープといっても、その成分や大きさ、発生部位によってタイプがさまざまで、治療法も異なります。
いろんな症例のポリープの資料も見せていただきました。
片方にできたポリープが反対側の声帯を腫れさせてしまうケースや、手術をしても完全には元に戻らないケースもあるそうです。
実際の症例資料を見せていただけたのは、大変貴重な経験でした。
声帯の病変は、発声以外が原因の場合もある
ケリー先生が強調されていたのは、「声帯に病変が現れても、それが必ずしも発声の悪さによるものとは限らない」ということ。
例えば、逆流性食道炎による胃酸の逆流や、アレルギー性の咳。さらには、手術などで喉に管を通した際にできる「接触潰瘍」も、声帯の病変の一つに数えられます。
これらは声帯の後部に発生することが多く、原因となる刺激を取り除けば改善するケースも多いそうです。むしろ安易に切除してしまうと、かえって大きな病変に進行してしまう可能性もあるとのことでした。
シンガーはつい「自分の歌い方が悪かったのでは…」と責めてしまいがちですが、必ずしもそうではないのです。この視点を持つことは、私たちボイストレーナーにとってもとても大切だと感じました。
機能性発声障害という“診断名”
「機能性発声障害」とは、ポリープなどの明確な病変がない場合につけられる診断名です。
たとえば、声に力が入りすぎて喉を締めつけてしまう 過緊張 や、逆に声帯の力が足りず息が漏れてしまう 低緊張 などがその代表例。
見た目に異常がなくても、症状を言語聴覚士に引き継ぐには“名前”が必要になるため、この診断名が用いられるそうです。
またケリー先生は、「優秀な喉頭専門医であっても、歌唱時の咽頭の形を理解していない方は意外と多い」とも話されていました。だからこそ、私たちトレーナーが耳で聴き取り、歌唱時に何が起きているのかを感じ取る必要があると強調されていました。
異常に気づいたら…ボイストレーナーにできること
もちろん、私たちは医師ではありませんから、診断を下すことはできません。「これは機能性発声障害です」といった判断をしてはいけないのです。ですが、声帯に何か異常があることに気づかずレッスンに来られる方もいらっしゃいます。
そのようなときに、症状が悪化する前に専門の音声外来をすすめられるかどうか。そこがボイストレーナーの大切な役割だと感じました。
今回の講義は、異常に気づいたときに専門医へつなげる判断を担うことの重要性を改めて実感する、大変貴重な時間となりました。
次回は、ケリー・オーバート先生の「呼吸」の講義
次回は「呼吸」について学びます。 言語病理学者であり、ボイスティーチャーでもあるケリー先生ならではの視点から、どんなお話が聞けるのか。今からとても楽しみです!
投稿者プロフィール

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大阪音楽大学短期大学部ミュージカルコース卒業
宝塚音楽学校附属宝塚コドモアテネ卒業
幼少の頃からクラシックバレエを習い、毎年行われる発表会やその他数々の公演、業界最大手の舞浜大手テーマパークのショーやパレードに出演。
ダンスパフォーマンスにおいては特に活躍を遂げ、忙しい日々を送ると同時にボイストレーニングを続けるが、自分の悩みを解決できる先生となかなか出会えず「これで上達できるのか?」と不安を感じ、次第に歌を諦めてしまう。
そんな中、発声を科学的に捉え、的確なトレーニングを行えるVTチームの存在を友人から聞き、VTチームのレッスンを受講。
ハリウッド式ボイストレーニングに感銘を受ける。
現在は自身の「踊りながら歌う難しさ」を克服した経験を活かし
「ダンサーとしてミュージカルの舞台に立ちたい」
「ミュージカルに出演しているが、シンガーの枠に入りたい」
という方々を中心としたサポートに向け、勢力的にトレーニングを行っている。
全米ヨガアライアンスRYT200を取得し、ヨガインストラクターとしても活躍中。
クライアント一人ひとりに合った姿勢矯正を行うことにより、発声の改善、呼吸の改善、ダンスの改善を行い、クライアント様から高い評価を得ている。
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