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あなたはどっち?2つのベルティング発声を比べてみよう!

力強い高音や歌声に憧れる方は多いですよね。

この高音域を力強い声で歌うことを「ベルティング発声法」と言います。
「こんな歌声でかっこよく歌ってみたい!」
と憧れる方は多いのではないでしょうか?

ただし、このベルティング発声法は、かなり上級者向けの発声テクニックであるのと同時に、声の種類によってかなり音色に個体差が出ます。
例えば、ベルティング発声について科学の力を借りつつ最新の考察のブログで例に挙げたイディーナ・メンゼル(Idena Menzel)のベルティングを聴いて
「ここまでアグレッシブな音色でないといけないんだ!でも全然出来る気がしない!」
と考えてしまう方は多いと思います。

今回はブロードウェイの世界で一般的に使われる「ベルティング発声」を基準に2つの声種別のベルティング発声を聴き比べてみましょう!

「ベルティング発声」と「叫び声」の違い

ベルティングって力強い声だよね!?
シャウトするって事だよね!?
叫ぶって事だよね!?

落ち着いて・・・・!(笑)
確かにベルティング発声は、「楽曲の中で叫ぶ事を音楽的表現に昇華する技法」も1つの使い方だと考えられます。
実際にDefying Gravityの最後の一声のD♭もそのように考える事も出来ると思います。

ただし重要なのではベルティングは「音楽的表現」であり、「生理現象的な叫び声」とは異なるものなのです。

こちらが二つの特徴的な違いです。

正しいベルティング発声 (High techniqued belt)

・トランペットのような鋭いクオリティを持つ
→Beyonceやルチアーノ・パヴァロッティの声は分かりやすいと思います。

・クリアな音である
・力強い
・音量変化への柔軟性が高い
・聴いていて美しく感じる
・ビブラートをかけらる
・高音に長時間いても大丈夫。音を伸ばす事も出来る
・故障リスクが低い

(音楽的ではない)叫び声 (Yelling)

・生理的に出せる最も大きな声←ただただ、やかましい。
・音量変化を作れない(小さくするとひっくり返る or 音程が下がる)
・聴いていてうるさい
・喉仏が急激に上がる
・音を伸ばすのが不可能・困難
・故障リスクが高い

ここまでは大丈夫ですか?

それでは比較をしてみよう!

比較曲はLive For The One I Loveのクライマックスです。
一人目はCeline Dion(セリーヌ・ディオン)
二人目はTina Arena(ティナ・アリーナ)
どちらも同じキー B♭で歌っています。

【Celine Dion バージョンはこちら】

【Tina Arena バージョンはこちら】

いかがでしたか?
だいぶ印象が違ったのではないでしょうか?
あなたはどちらが好きでしたか?

この曲のクライマックスの特徴はB♭4(シ♭)の音を繰り返し、D5でサスティーン。
Tina Arena バージョン→3:11
Celine Dion バージョン→3:20
この音がクライマックスでベルティング・ノートになります。

どちらも技術的に高いベルティングをしています。
では非常に簡単にですが、分析をしてみます。

Tina Arenaは特別と言って良いくらいの高音の声種

Celine Dionはご存知の通り、パワフルな地声で高音を自在に歌うイメージがありますが、Tinaの方はそれを上回るほどの高音タイプのソプラノと考えられます。
声の軽やかさと、声の動きのスピード感でそれは聴き取れるのですが、あなたは聴き取れましたか?

Celine Dionの方がやや低音の声種 従って技術的にストレス、緊張感のある歌唱になっている

Celineの方がTinaに比べてやや声が低いため、B♭4(シ♭)以上のエリアを技術的に歌うのは負荷が大きいと考えられます。
高音への上昇が坂道だとしたら、Tinaは軽自動車、Celineは大きめのバンで昇ると言った感じでしょうか?
エンジンへの負荷が大きくなりそうですよね。

しかしながらこの負荷や、緊張感が芸術と言う世界では魔法となり、人々に感動を与える事も多々あります。
桜田個人的には、フィギュアスケートの羽生 結弦選手の素晴らしい演技と演技が終わる瞬間の鬼のような形相を思い出しました。
「これが感動を生むんだろうなー!」と。

一方、Tina Arenaは発声的には非常に楽々こなしているように感じられます。
半音2〜3つ上げてもバッチリ歌い上げられる可能性が高いと考えられます。

Celineの方が若干、母音がブレている

この音源は実はSpeech Level Singing内でよく使われていた音源で、
「Celineは母音がぶれているので、発声的には正しくない。Tinaの方が正しい発声である」
と言う説明がされていました。
これも一理あります。
恐らく、Celineの母音はaway(アウェイ)から(アワイ)に近い音で発音されています。
これは母音の純化(Pure Vowels)を重んじるボーカル・メソッドでは嫌がられる発声法ではあります。

しかしながら母音の純化を重じる音楽分野は声楽や特定ジャンルのミュージカル等ごく限られた環境で求められるものであり、
ポピュラー音楽の世界では個体を尊重した母音(Linving Vowel)としてよりカジュアルな発音が許される、、、と言うか求められる事があります。

そして声種の違いもあるので、純粋にはどちらがレベルが高いとは言い難い部分もあります。

実際に目の前で聴かないとわからない事も多い

ここで重要なのは、聴いた音はスタジオでレコーディングされた物であると言う事。

恐らくTinaは実際に聞くと声は軽やかで細い可能性が高いと考えられます。
そこでマイクの種類、EQ(イコライザー)により中低音域の周波数帯域を持ち上げて、声を膨らませる演出、コンプレッサーにより声に厚みをつける演出が施されているかもしません。

一方、Celineの方が実際には、叫び声に近い発声が現場でされた場合、コンプレッサーで音量を抑え、中高音域をEQ(イコライザー)で持ち上げ、声がスカッと抜けるように音作りがされているかもしれません。
つまり音楽制作としては、声の種類、発声法により真逆の音作りをしている可能性があります。

なので、実際に生声を聴いてみないとわからない情報ってたくさんあるんです!

いかがでしたか?
一言のベルティングと言っても個性がある物なんだと言う事が伝わればうれしいです!

”あなたの声色”でベルティングが出来る日が来ますように!

追伸。。。
ちなみに、、、ですが、10名の方にCeline Dion, Tina Arenaの歌。どちらが好みかと聞きました。
7名は「Celineの方が良い!」 3名は「Tina Arenaが良い!」
との事で多数決ではCelineに軍配が上がりました。

解説しているインストラクター

桜田ヒロキ
桜田ヒロキ
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター

アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。

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