歌声フォルマント(Singer’s Formant)について
2017.02.12
みなさんこんにちは、VT Artist Developmentのボイストレーナー小久保よしあきです!
この歳になってようやく勉強が楽しいと思えるようになり(笑)、明らかに学生の頃より勉強しています。
時間も能力も足りなくて困っています!誰か脳みそ交換してください!
さて今回は、歌声フォルマント
(英語ではSinger’s Formant。もしくはCluster Formantと呼ばれています)
というものについて書こうかと思います。
歌声フォルマントって何?
すっごい歌の上手いシンガーって、
「ボリュームがあって響きのある鳴るような歌声を、楽に出しているなあ」と思いませんか?
このような歌声のシンガーは、歌声フォルマントという特定の周波数帯域を強調して歌っています。
この周波数帯域は2500〜3500Hz付近のようです。
歌声フォルマントを聴いてみる
実際に歌声フォルマントの出ている発声を聴いてみましょう。
すごいボリューム出てそうですね。
この動画では、
1 何もしていない状態
2 2500〜3500Hz付近をカット
3 2500〜3500Hz付近をブースト
と言う事をしています。
2500〜3500Hz付近をカットすると、なんか抜けが悪い音になりましたよね。
この歌声フォルマント、いったいどうしたら強調できるんでしょうか?
決して「力づく」では出ない
よくある間違いとして、声帯を激しく強く振動させて、高い音の成分を強く出そうとする方法です。
甲状披裂筋(TA)や声帯閉鎖や呼気をかなり強く使う出し方です。
適度な声帯原音のエネルギーは必要ですが、
実は声帯原音のエネルギーは基本周波数(基音)が最も高く、
基音から数えて、倍音が進む度にどんどん弱くなります。
従って、そもそも特定の音域を強調するような振幅は作れないですし、
3kHzまで強い振幅を起こすとなると、低い周波数は更に強いエネルギーを持つことになります。
声帯原音だけに頼ると、声帯に凄まじい負荷をかけ、怒鳴ったような聞き苦しい音色になってしまいます。
これでは歌の上手いシンガーではないですね。
厳密には「母音」でもない
VTのレッスン受けている人なら「母音の調整じゃない?」と思うかも知れません。
ほぼ正解だし、実際レッスンでは母音を活用して響く発声を作っていくわけですが、
厳密には母音と歌声フォルマントは独立して作られています。
歌声フォルマントは母音の影響を受けやすいものの、あくまで間接的であるということです。
歌声フォルマントの3kHzの周波数帯域は、
母音発声時のフォルマントの位置でいうと、F3やF4の周波数帯域付近になります。
実はF3やF4の高さは、母音による大差がありません。
母音による大差が産まれるのはF1やF2で、人はほとんどF1とF2の周波数帯域で、母音を判断していると言われています。
母音を作るのは、舌の位置、顎の開き、唇の開閉などです。
これらを動かして、咽頭腔や口腔内の空間を変形させることで、母音を作っているわけです。
これらを動かせば母音が作れることを踏まえると、
逆に母音によって大差がない歌声フォルマントは、
舌などと関係ないところで作られるということになります。
声帯から喉頭蓋までの空間が鍵
実は、歌声フォルマントの正体には、声門から喉頭蓋にかけての空間が強く関係しています。
この空間と、声道全体の空間の比率を調整することで、3kHz付近を強調していると言われています。
具体的には長さと断面積の比率を、
【声門から喉頭蓋】1対【声道全体の空間】6くらいにすると言われています。
そう。1対6の比率なのです。
これが上手い発声のシンガーがやっている、歌声フォルマントの正体です。
一方、母音を作るのは喉頭蓋より上の空間なので、歌声フォルマントとは異なります。
つまり、人体構造的に歌声フォルマントと母音は独立しているため、
どの母音ででも歌声フォルマントを強調した”鳴る発声”を作れる可能性があるわけです。
トレーナーと二人三脚で
それではやってみましょう!!
…で出来るとは思えないですよね(^^;;
声帯も喉頭蓋も外から見えないし。(笑)
トレーナー目線の印象としては、人によって歌声フォルマントを強調しやすい母音が異なるようです。
人体構造的に独立していても、母音と歌声フォルマントは関係してしまうと考えられます。
また、発声が安定した状態のときに、”鳴る”状態を得られやすいと感じます。
響くような発声の歌声フォルマント、あなたのボイストレーナーと二人三脚で探してみてくださいね。
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