高音の間違った出し方!叫び上げを科学で考察。その1
2015.05.06
こんにちは!VT Artist Developmentの桜田ヒロキです!
「なんで高音を叫び上げてしまうのか?」を科学的に検証するをテーマにお届けしようと思います。
この「叫び上げ」は特にポップ系の歌唱や、場合によってはオペラの男性を含む多くの歌手達が悩まされる発声の問題です。
「なぜ叫び上げが起きるのか?」と言う事を考えて行く時、
まず避けられないのは「叫ぶという行為」は、僕たちのDNAに組み込まれた大切な情報だからです。
なぜ僕らは叫ぶのか?(笑)
では「なぜ叫ぶのか?」を考えて見ると、僕たちがまだ狩りをしていた時代に何か天敵に襲われた時、助けを呼ぶのに自分達の仲間に知らせなくてはいけなかったわけですね。
なので、「歌を歌う」とか「美しい声で歌う」とかは一切置いておいて、大きな声を出すためには叫ぶが最も有効だったわけです。
しかしながら・・・
僕たちが考えなくてはいけないのは以下の事だと思います。
歌を歌うのに必要な声とは?
・より音楽的な声である事
・音楽では高い声=叫び声ではない事(叫び声を特殊効果として使う場合は除きます)
・そして、声を嗄らさない事(プロユーザーにとっては最も重要です)
なぜ高音域になると僕たちは叫んでしまうのか?
それには倍音が関係しているわけです。
ここに母音の「あ(AH)」をA3(中央のCの下)とA4(中央のCの上)で歌っているスペクトラルグラムがあります。
これを見て見ると1オクターブ上で歌うと倍音間の距離が倍になっているのが見えますね。
倍音と言うのはその名の通り倍の音ですので、
A3(220Hz)の次の倍音は440Hzで、
A4(440Hz)の次の倍音はさらに倍の880Hzになるわけです。
つまり高くなればなる程、倍音感の距離は広くなりフォルマント(声のブースター)をそこに合わせるのが難しくなってくるわけです。
・・・と言われてもちょっと難しいですよね!
そこで図を作ってみました♪
(写真はクリックすると解像度の良いものがご覧頂けます)
※図1
低い音(話し声音域)で作られた声帯の原音の倍音同士の距離は狭いわけです。
声帯で作られる原音はブザーのようなビーっと言う音です。
※図2
なので簡単にフォルマントを使った声をブーストし、「母音を作る」「大きな声を効率的に出す」事は比較的簡単なわけです。
※図3
高い声(ポップスで使われる最も盛り上がる場所で使われるような音域)で作られた声帯の原音は倍音の距離が広い。
※図4
そうすると共鳴腔でブースト出来る周波数帯域が倍音と倍音の間に落ちてしまっていますね。
こうなってしまうと共鳴腔で声を大きくすると言う事が出来なくなってしまうわけで・・・。
※図5
喉は「やばい!このままじゃ強い声は出せない!ひっくり返っちゃうかも!」となってしまい声帯を強烈に合わせ(LCA)、声帯のテンションを上げ(TA)首回りの筋肉(Outer Laryngeal Muscle)に力を込めなくてはいけなくなり、結果「叫び声」になってしまうわけです。
※図6
そうすると、「倍音」以外の雑音も声帯から作り出されザラザラ割れたような音になってしまうのです。
叫び声を多用する歌手は一般的に「何を歌っているのかわからない」と言われてしまうのは倍音が崩れる=母音が崩れてしまう事に原因があるわけですね。
実際、桜田ヒロキがミックスボイスで歌った場合のスペクトラルグラムと叫び声で「あ」母音でA4の音を歌ったのを観てみてください。
ほら、さっきの図と同じだったでしょ♪
ちなみに僕らの言うミックスボイスとは単純に「母音が綺麗に聞き取れる叫んでいない地声」と考えてくれていいわけです。
1番上の写真のA3を歌っているものと倍音の形状がほとんど変わらないですよね?
だから「あ」という母音に聞こえてくれるわけです。
では叫び声を防ぐためにはどうすればいいのでしょう?
・フォルマントをコントロールして倍音が1番集まっているポイントをブーストしてあげる
・フォルマントは口、舌、喉の位置を使ってコントロールする
・つまりフォルマントは母音を使ってコントロールする
このステップさえ上手くいけば、「高音を叫ばないと出ない!」と言う事はなくなるわけですね。
VTのコーチ達が「母音が違う!母音が違う!母音が違う!」って連発するのは、これが理由なわけです。
さて「叫び声」のメカニズムはご理解いただけましたか?
次回は「叫び声」を筋肉的なバランスから観てみようと思います。
それではまた♪
ちなみに「倍音」「フォルマント」「声帯で作られる原音」に?ってなってしまう方は、下の関連トピック集をご覧下さいませ。
・声帯で作られる原音について
・共鳴腔の役割 倍音の基礎知識
・共鳴腔の役割 フォルマント編
・高い声を練習するメリットはなに?
・高い声はどこまで練習すればいいの?
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解説しているインストラクター
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セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。
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