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「鼻の手術は声に影響するの?」等の質問を言語病理学者に質問!part2

「言語聴覚士」「声の研究者」「ボイスティーチャー」でもあるケリー・オバート氏の特別セミナーでの質疑応答パート2をご紹介します!

Q:鼻の骨が曲がっているため鼻をまっすぐにするのと、副鼻腔の手術を予定していますが、これらによって声に及ぼす影響はどのように考えられますか?

A:特に声に大きな影響はないのでご安心してください。
この質問はよく受ける質問で、例えば鼻の整形手術をしたい人など、鼻の形を変えることによって歌声に影響は出るかという質問を受けます。
共鳴は、だいたい軟口蓋を上げている状態で声を出しているので、鼻の手術をしたところでそこの部分にはほとんど関わらないと思います。
逆に、例えば、副鼻腔から声帯に鼻水が垂れている問題があるとすると、それが改善される可能性、もしくは息を吸うときに鼻からも息を吸えるようになるので歌いやすくなると思います。

 

Q:「鼻が悪いから、発声がしづらい」というシンガーがいますが、これはシンガー側の認識であって、実際に起こっていることとは違いますか?

A:先ほどの答えと重複しますが、鼻水が後ろの方から垂れてしまっていると問題はあるかもしれませんがそれ以外には特にないと思います。
恒常的に咳をしている方は喉や鼻の方に問題があると思いがちですが、実際は脱水症状が起きていて粘液がネバネバしている可能性があるので、水を多く飲むことによって症状が軽減することもあります。
ですので、「喉が粘ついている感じがする」と訴える生徒には、鼻の炎症感があったり、鼻をすごく噛んでいたり、鼻水が垂れてくる症状があるか聞きます。
症状がなければ水をたくさん飲んでいないなどそういうところに問題があると考えます。

 

Q:音声振戦症について。これはシンガーに多い病気という感覚はありますか?というのもシンガーは一般の方よりも喉の神経系をいっぱい使ったり、運動制御もあると思うので、それと関連しているなどの推測や研究はありますか?

A:音声振戦症というのは、おそらく関連はほとんどないと思います。シンガーであろうとなかろうとかかる方はいらっしゃいますが、シンガーがより自分の声に敏感になっているためシンガーの診断が多いことにつながる可能性はあります。一般の方はいつも声を気にしているシンガーよりも、例えば10年くらい遅く症状に気づくこともあるからです。
音声振戦症というのは、高い音域よりも低い音域の方が大きく揺れる傾向にあります。高い音と低い音でどのように違いがあるかというと、皆さんご存知の通り、高い音では声帯が引っ張られるためより筋肉を使っているというところです。

 

Q:痙攣性発声障害は診断が難しいと聞きますが、この辺についてはいかがでしょう?

A:そうですね、痙攣性発声障害を筋緊張性発声障害と誤診をされたり、逆に筋緊張性発声障害がある人が痙攣性発声障害と誤診されることもあります。

 

Q:痙攣性発声障害の処置として割とポピュラーな「ボトックスを打つ」という方法がありますが、体はボトックスに対して耐性がついてしまいだんだん効かなくなってくるという認識でいいでしょうか?

A:耐性がついてしまうのももちろんありますが、より進行してしまうこともあると思います。しばらくするとボトックスに対する反応が薄くなる患者がいますが、これが耐性がついたことが原因なのか、より進行してしまったことが原因なのかはわかっていません。
痙攣性発声障害の患者さんには口の前方から後方に向かって声道を狭めてしまう状態を軽減させるために「カーミット」というアニメのキャラクターの声のマネをして痙攣を少し抑えるというアプローチもとっています。
実は私はそんなに痙攣性発声障害は見ていないので十分な統計値は取れてはいませんが、この患者さんに効く方法は確立しているので試していければいいなと思っています。

 

Q:様々なアプローチは、Kerrieの中の理論に基づいてやっているのか、試しながら結果を見ていくようなボイスティーチャー的なアプローチなのかどちらなのでしょうか?

A:そうですね、「完全に助からない」と医者に見放された生徒が可哀想だったので、負荷をできるようにと長年ボイスティーチャーのようにいろんなことを試してきました。そこで「これは効いた」「これは効かなかった」というのを一つ一つ潰していって治療計画の形に仕上げていきました。

 

Q:「50%くらいの患者が3回目のセッションに来ない」という研究を見たことがありますが、これは言語聴覚士などの理論に基づく処置がうまく機能せず、解決しない・ゴールが見えないなどと起因してしまうのが要因なのでしょうか?

A:医学会でも言語聴覚療法士の問題でもあるのですが、この2業界というのはエビデンスを根拠にしている方に偏ってしまい、使えるエクササイズも非常に少ないのが問題だと感じています。
言語聴覚療法士もすべての患者さんに紋切り型の同じエクササイズをやるということで、個別に「この患者にはこういうもの」という処方ができていないのが現状です。
もう一つ言えるのが個人の問題に特化したアプローチが取られていないと感じる言語聴覚士が多いです。半分発声を阻害する発声法やストローエクササイズ、リラックスさせる、深呼吸をするなどのアプローチばかりしている感じです。
言語聴覚療法士からの報告書を受けたら、全く同じことが書かれているんだろうなと私は思っています。

 

Q:声帯の振動は共鳴に影響し、共鳴の影響は声帯の振動に影響すると予想していますが、軟口蓋の位置は声帯の振動に影響はあると考えますか?

A:確かに声帯は軟口蓋の共鳴の働きと連動しているとは思いますが、どういう仕組みで起こっているのかはまだわからないです。

いかがでしたでしょうか?

ケリー氏の長年の経験からわかる対処法や、エビデンスや理論だけでは処置できていない現状などとても貴重なお話を聞かせていただきました。
「言語聴覚士」「声の研究者」「ボイスティーチャー」と様々な角度から声や病気についてなど、本編ではもっと詳しくお話をしていただきました。

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解説しているインストラクター

桜田ヒロキ
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター

アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。

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