桜田ヒロキ2026年3月16日 5:48 pm
【ボイストレーニングで「体のパーツ」を意識しすぎていませんか?】
ボイストレーニングの現場では、
「軟口蓋を上げて」「舌が奥に入りすぎている」「顎に力が入りすぎている」
あるいは「喉が高すぎる」「喉が低すぎる」といった、発声に関わる各部位のコントロールについて説明する場面が多くあります。
確かに、これらの知識は発声を理解する上では重要です。
しかし近年、桜田の考え方では、こうした「部位ごとのコントロール」を意識するアプローチは、特に難易度の高い楽曲や、ギリギリの音域で歌うような場面では、あまり役に立たないと考えています。
その理由はシンプルです。
歌っている最中に、注意を向けるべきリソースが多すぎるからです。
音程、リズム、歌詞、表現、呼吸、フレーズの流れなど、歌唱には同時に処理しなければならない要素がたくさんあります。
その状態で「舌の位置」「軟口蓋」「喉頭の高さ」などを細かくコントロールしようとすると、かえって歌が崩れてしまうことも少なくありません。
【外側から発声をコントロールする】
そのため桜田のトレーニングでは、体の内部を直接操作するよりも、外側の要素から発声をコントロールする方法を重視しています。
具体的には
・母音の発音の仕方
・子音との組み合わせ
・歌手それぞれの歌い方の癖
・スケールや音階の設定
・歌うピッチのコントロール
といった「外側の条件」を調整することで、結果として発声が整うようにトレーニングを設計します。
【歌手が集中すべきこと】
このアプローチの目的はシンプルです。
歌手が歌うときに集中するポイントを、できるだけ少なくすることです。
桜田のトレーニングでは、最終的に歌手が意識するべきことは
「正しいピッチで、良い声で歌う」
この一点に集約されるようにツールを組み合わせていきます。
【運動学習でも同じことが言われている】
この考え方は、運動学習の研究とも一致しています。
運動学習の分野では、言語化しにくい身体技術を身につける記憶を「手続き的記憶」と呼びます。
そしてこの手続き的記憶を習得する際には、体の内部の動きに意識を向けるよりも、体の外側に意識を向けた方がパフォーマンスが向上することが知られています。
歌の場合で言えば、体のパーツを細かく操作しようとするよりも、
「自分の声そのもの」に集中する方が、結果として発声は整いやすいということです。
【まとめ】
ボイストレーニングでは、体の細かな部位をコントロールする説明が多くなりがちです。
しかし実際の歌唱では、注意を向ける対象をできるだけシンプルにすることが重要です。
正しいピッチで、良い声で歌う。
その一点に集中できる環境を作ることこそが、効果的なトレーニングにつながります。