桜田ヒロキ2026年1月22日 12:46 am
【なぜ発声治療は「喉頭マッサージとSOVT」に偏りやすいのか】
発声障害の治療内容を振り返ると、喉頭マッサージやSOVT(ストロー発声など)が中心になっているケースが非常に多く見られます。
これらは安全性が高く、短時間で声が出しやすくなる変化を感じやすいため、初期介入として選ばれやすい合理的な手法だと思います。
【即効性が生む「治療の錯覚」】
喉頭マッサージによって喉周辺の緊張が下がると、声が軽くなった、楽に出る、といった変化が起こります。
SOVTも発声効率を一時的に高めるため、患者にとっては「良くなった」と感じやすい治療です。
加えて喉頭マッサージ、SOVT共に効果が”研究で実証されています。”
しかし、この即効性こそが落とし穴になることがあります。
【機能性発声障害の本質は「筋緊張」ではない】
機能性発声障害は、しばしば「喉の筋肉が固い状態」と理解されます。
しかし実際には、多くのケースで発声の使い方そのものが誤って学習され、固定化している状態であることが問題になります。
発声の誤学習により起こった筋緊張は結果であり、原因ではない場合も少なくないと考えています。
【発声は「動作」であり、学習される】
発声は反射ではなく、運動制御を伴う行動です。
誤った発声パターンで歌い続ければ、その使い方が身体に学習され、無意識に再生されます。
この状態では、いくら緊張を取っても、歌唱という高負荷な状況で同じエラーが繰り返されます。
【会話レベルの改善では歌手は救われない】
多くの発声治療は、日常会話の改善をゴールに設計されています。
しかし歌唱は、音域、音量、音色、ダイナミクスなど、会話とは比べものにならないほど高度なタスクです。
会話が改善しても歌えない、という状況は、治療のゴール設定そのもののズレから生じます。
【なぜ「治った気がする」で終わってしまうのか】
喉頭マッサージやSOVTによって一時的に声が楽になると、治療が完了したように感じてしまうことがあります。
しかし発声行動が変わっていなければ、本番や強い発声環境で再発する可能性は高いままです。
この「感覚的な改善」と「機能的な回復」のズレが、発声障害が長引く大きな要因になります。
【必要なのは発声行動の再学習】
機能性発声障害の根本的な改善には、発声の使い方そのものを見直し、再学習するプロセスが欠かせません。
喉頭マッサージやSOVTは、その準備段階として有効ですが、それだけで完結するものではありません。
歌手にとって重要なのは、歌唱環境でも再現可能な発声動作を獲得することです。
【まとめ】
喉頭マッサージやSOVTは、発声治療において重要な役割を果たします。
ただし、それらを「ゴール」にしてしまうと、歌手が本当に必要としている回復に届かなくなる可能性があります。
治療の役割と限界を正しく理解することが、発声障害からの回復を現実的なものにしてくれる、と考えています。