金子 恭平2025年10月2日 2:11 pm
【なぜ、あえて曲で使わない声で練習するのか?】
ハリウッド式ボイストレーニングでは、ときに極端な「あくび声」や「キンキン声」、場合によっては「鼻声」などを使ってレッスンします。
しかし、それらのおかしな声を楽曲の歌唱に直接生かしたいわけではありません。
では、なぜそんな練習をするのでしょう?
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▼全ては「効率的な発声」の疑似体験のため
たとえばあくび喉――極端に喉頭が低い状態――を作ると、声道が強調する周波数帯域が下がります。
すると地声的な成分が少なくなるので、低音から高音までを均等に扱いやすくなります。つまり、声区間の移動がスムーズになるのです。
一方、喉頭を極端に上げてキンキン声を出しているときは、狭まった咽頭のスペースにより高い周波数が強調されます。
するとその共鳴の影響を受け、声帯同士の合わさりが自然と強くなります。このときの声門閉鎖が、筋力による努力でない点が重要です。
上記のふたつの例において、普段の発声よりも効率のいい歌い方が部分的にですが実現しています。
おかしな声を使うのは、楽で効率的な発声を疑似体験するためなんですね。
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▼疑似体験を取っ掛かりにして上達しよう
偶然にでも体験できた動きは、やがて意識的に行えるようになる――これが運動学習の基本的な考え方です。
はじめは特定の条件(あくび喉など)でしか実現できなかった声帯まわりの操作が、訓練を続けるうちに自然なポジションで実現できるようになります。
そうして、いつしか美しい発声が完成するのです。
一緒に頑張ってまいりましょう!