金子 恭平2025年9月21日 10:39 am
【自主練習のやめどきは?】
発声の上達には、自主練習が不可欠です。
レッスンは多くても月に4回程度で、残りの時間のほうが圧倒的に長いわけですからね。
ご自身のペースで練習しているときは、知らず知らずのうちに喉を酷使してしまいがち。
一度のセッションで長時間歌おうとせず、休み休み練習するのが大切です。
では、どんなタイミングで休憩を取ればいいでしょうか?
ひとつの目安として、「小さな声を出しづらくなったとき」をお勧めします。
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▼なぜ声量が目安になるの?
まずは声の仕組みから考えてみましょう。
肺から吹き上がる息を、声帯同士が揉んで圧縮するような動きで音波に変えます。
このとき声帯同士はものすごい速さで――高いラの音なら1秒間に440回――ぶつかり合っています。
繰り返される摩擦によって声帯の粘膜が失われたり、声帯そのものが腫れてくると、小さな声で歌うのが非常に難しくなります。
なぜなら、声帯が動きだすために必要な呼気圧(PTP=Phonation Threshold Pressure)が増えているからです。
逆に言えば、小さな声で歌えなくなってきたときは、すでに声帯が消耗していると考えてよいわけですね。
柔らかいチェストボイス、ウィスパーボイス、小音量のファルセットなどが出しづらく感じたり、音が途切れてしまうのは疲労のサインです。
この段階で練習を中断してしばらく休めば、声帯の振動は回復してきます。
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▼対策
ヴォーカルエクササイズをご自身でおこなうときは、強い声で数分歌ったあとは必ず弱声の下降スケールなどをはさんでください(発音はNooなど)。
内喉頭筋群が緊張状態でロックしてしまうことを防げますし、声帯にも適度な休憩が与えられます。
そして何より、このときの音色しだいで、休憩するかどうかの判断ができるのです。