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桜田ヒロキ2025年6月20日 10:13 am

【ボイストレーナー向け】お手本(モデル)はどこまで有効?〜初心者と上級者での違い〜

ボイストレーニングで「お手本(モデル)」を見せるのは定番の指導法。
でもその効果は、生徒のレベルによって変わってくることを知ってますか?


1. 初心者には「熟練者モデル」が効果的

初心者にとっては、優れた歌声=理想のイメージ。
プロの歌声を聞かせることで、「こうなりたい!」という明確な目標が生まれ、学習意欲も高まります。

2. 初心者には「学習者モデル」も有効

初心者が、同じく初心者がどのように注意され、どのように改善していくかを見ること自体が学びになります。
たとえば、「この歌い方はNG → こうやって修正する」…その一連の流れを観察するだけでも、学習のヒントが詰まっているのです。

3. 上級者には「エラー比較型モデリング」が有効

上級者になると、すでに正しい基本は身についています。そこからさらに上を目指すには、「間違い」と「正解」の微細な違いを聞き分け、修正する力がカギ。

僕はよく、A/Bデモ(NG例とOK例を続けて聞かせる)を使います。
「君は今こう歌ってるよ(NG)。こうするともっと良くなるよ(OK)」といった形で、違いを“耳で体感”してもらうのです。

4. 上級者には「自己モデリング」も効果的

上級者には、自分の歌を録音し、それを一緒に聞きながらディレクションすることも効果的です。
楽譜や歌詞を見ながら、「このフレーズのここを変えてみよう」とポイントを絞ってアプローチすると、理解も深まりやすくなります。

上級者に“熟練者モデル”が効かない理由?

上級者になるとモデリングは効果的でない事があるそうです。
理由のひとつは、モデルが高度すぎて比較や理解が難しいこと。
情報が多すぎたり、自動化された動作に上級者にとっても意味がつかみにくいのです。

Wulf & Shea(2002)は、「モデルを見るだけでは不十分。意図や注意の方向を示すことが必要」としています。

実際、僕のクライアントには僕よりも優れた歌手も多くいます。
だからこそ、僕は細部を言語化したり、イメージで伝えることにも力を入れています。単にお手本を見せるだけでなく、「どこに、どう注意を向けるか」を一緒に探るのです。

最後に

「うまく教えられたかどうかは、
あなた(教師)がやったことではなく、
生徒が“できるようになったか”でしかわからない。」

この言葉を胸に、今日もレッスンに臨みます。
ボイストレーナーには、ひとつの方法論にとらわれない“引き出しの多さ”が求められますね。

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