桜田ヒロキ2025年4月13日 10:14 pm
【ボイストレーナー向け】
ハリウッド式に学ぶ“子音”の戦略的活用法
多くのボイストレーニングでは、
1.母音だけで練習する
2.子音をランダムに使う
というスタイルが主流かもしれません。でも、ハリウッド式では子音を「声帯の操作装置」として戦略的に使うのが大きな特徴です。
音声学や発声生理学の視点から見ると、子音ごとに声帯・声門・共鳴腔に対する働きがまったく異なり、それがトレーニング効果に直結します。
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■ たとえば、有声破裂音([b], [d], [g])
これらは**声門下圧(subglottic pressure)**を一時的に高め、閉鎖→爆発的開放という動きを作ります。この過程で声帯の閉鎖感覚が一気に強化されるため、
•声が息っぽくなる
•ミックスで地声が薄まってしまう
•ファルセットに逃げやすい
といった傾向を持つ生徒に対して、声門の閉鎖感覚と圧の維持を身体に覚えさせるのに非常に効果的です。
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■ 一方で、無声帯気音([h], [f], [s]など)
これらは声帯の開放傾向が強く、声門閉鎖のプレッシャーがほとんどかからないため、次のようなタイプの生徒に有効です:
•声に過剰な力みや圧がかかっている
•常に張り上げたような声になってしまう
•共鳴腔のコントロールが苦手
つまり、無声子音は力みの抜けたアタックを作りやすく、「やわらかい入り口」から声を整える手助けになります。
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■ 子音は“筋トレツール”である
子音をただの発音記号と捉えるのではなく、発声筋(声帯筋、外側輪状甲状筋、声門閉鎖筋群など)をターゲットに鍛えるためのスイッチと考えると、トレーニングの幅が一気に広がります。
実際にハリウッド式(Seth Riggs)では、生徒の声のタイプや習慣に応じて「処方箋のように子音を使い分け」ているのが特徴です。
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■ 実践時の注意点
子音の選び方を間違えると、逆効果になることもあるので注意が必要です。
•声門閉鎖が強すぎる人に有声破裂音を与えると、喉を潰す危険性がある
•声が薄い人に無声子音を多用すると、さらに声がスカスカになる
トレーナー側には、「聴き分け」と「子音の処方」の両方において高いスキルが求められます。
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声の質感を整えるには、子音というツールを**“声のマニュアルシフト”**のように活用することが鍵。
ぜひ、生徒の声の傾向に合わせて、科学的な視点で子音を選んでみてください!