金子 恭平2025年3月6日 2:12 pm
【深い声の出し方、本当にそれで合ってる?】
―――
ミュージカル畑の生徒さんが初回レッスンに見えると、非常にふくよかな声で歌ってくれます。それ自体は素晴らしいことなのですが、多くの場合は声がこもってしまっているのです。そしてそのこもりの原因は、舌の動きにあります。
典型的なエラーは主に以下の二つです。
1.舌先が巻いてしまって、「R」の発音のように口腔を塞いでいる。
2.舌の後ろ側が下がって、咽頭の空間が広くなりすぎている。
舌がこのように動くと、声の第二倍音が強調されなくなり、どんよりと暗い響きになってしまいます。また、独特の濁りが聞こえてくるのも特徴です。
こうした声を、イタリアンオペラではクネーデル(団子が詰まったような声)と呼んで忌み嫌うそうです。
声楽を見習って深い声を作ろうとしているのに、勘違いのせいで団子声になってしまうのは、たいへん勿体ないことだと思います。
―――
ではどうすればいいか?
喉頭はある程度下がっているが、舌は高い位置にある――。
この共鳴腔によって作られる音が、ジャンルを問わず、多くの人が心地よく感じる声の特徴といわれています。
「喉を開いて歌って」は歌の指導ではよく聞かれる言葉です。共鳴の具合により、そのように知覚するのも確かです。しかし実際には、高音発声時には声楽家の咽頭も狭くなっているのです。
超一流のオペラ歌手であるAntonino Siragusaの声を聴いてみてください。明るく華やかな声で、驚かれると思います。
深く、かつ明るい発声を実現するには、舌先を前のほうでキープしなければなりません。特定の子音を作る瞬間以外は、舌先が下の歯の裏から離れないよう注意します。
―――
この動きを習得するためのエクササイズを、奈央子先生から教わりましょう。次第に、割り箸を使わずとも舌を前方に――そして高い位置に――保てるようになるはずです。
舌の悪癖は中高音発声そのものの障害にもなりがちで、顎の力みとして感じられることが多いです。音質改善ではなく音域拡張に興味があるという方にも、効果の高い練習法ですよ!