金子 恭平2025年2月24日 11:52 am
【表現力をアップしよう】
表現力のある歌とはどういうものでしょうか?
人によって思い浮かべる歌声は様々かと思いますが、すべてに共通しているであろう要素を抜き出してみましょう。
歌唱の装飾は主に三つの要素で作られます。
1. 音程のベンディング(音の出だしで低めまたは高めの音程からアプローチしたり、切る際に音程の上昇や下降を加えたりすること。この分類ではビブラートも音程のベンディングに含む)
2. 発音のアレンジ(無声子音を強調したり、「ああ」を「ぅぁあ」と歌ったりすること)
3. 呼気と声門閉鎖(音の出入りで、息を吐いたり声門を閉じたりしてノイズやエッジを加えること。声色としてのウィスパーボイスなどは別として考える)
ややこしいので、お手本を聴くのが一番ですね。今日は陽香先生から表現豊かな歌い方を教わりましょう!
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スタッフちゃんが、ちゃんみなさんの『ハレンチ』を歌っています。Before歌唱は丁寧で音程も正確ですが、ちょっと優等生すぎる印象でしょうか。
陽香先生は「音沙汰」の「お」にエッジをかけ、フレーズの出だしを色っぽく装飾しています。無理やり日本語で書くと「ぉぉおとさた」のようになりますが、大きな「お」の部分で若干声を押し出してリズムを強調しているのもポイントです。
※声帯が薄めの人はエッジボイス(Vocal Fry)が苦手な傾向にあります。寝起きで声帯が浮腫んでいるときは出せるけど、ウォームアップが終わると出なくなる、ということもあるでしょう。
気長に練習は続けてほしいのですが、適正の問題もあります。この技術だけにこだわり過ぎないほうが得策かもしれません。
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陽香先生は、エッジボイス以外にもたくさんの歌唱テクニックを提案してくれています。言葉で説明されていない部分も含めて、箇条書きで記していきましょう。
・「音沙汰ないから」の「ない」で音程をゆるやかに持ち上げる。直後、声門閉鎖で一瞬だけ音を止めることで、滑らかさを維持しつつ「から」のリズムを引き立たせる。
・「帰ったの」の「の」で二音の間を往復して、節回しを印象づける。
・「言ってよ」の「よ」はまっすぐ伸ばすのではなく、音程をフォールさせる。
・「タリラリラッタッタララ」は音程をしゃくり上げたり、発音を二重母音気味に変化させたりしてタメ感を作る。
こうして見ると改めて実感しますが、数多い装飾がさりげなくちりばめられることで歌の表現力が増しているのですね。
これらの技術が冒頭で挙げた三要素のうちどれに当たるのかを、ぜひ考えてみてください。
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Afterのスタッフちゃんの歌唱、とても格好よくなりました。「言ってよ」のフォールのあとで息を吐きながら音を切っているあたり、彼女らしさが出ていて素敵です。
こうした個性は、無理やり作り出すのではなく、あらゆる技術を学んだあとで自然に表れるものだと思います。
まずは食わず嫌いせずに、多くの表現方法を試してみたいですね!