桜田ヒロキ2026年8月23日 10:33 pm
【本人の体感としては、とても不自然。
でも録音すると、めちゃめちゃ良い。】
某大手事務所からボイストレーニングをお任せいただいている、才能あふれる若手シンガーソングライターのレッスンで、こんなことがありました。
本人のオリジナル楽曲を使って、もともとは
「この曲、一番おいしく聞こえるキーはどこだろう?」
というところからスタートしました。
ただ、歌を聴いているうちに、キーだけではなく声色も少し実験してみようという話になりました。
まだ20歳前後の青年なので、声には若さが残っています。
普段は少し細く、少年っぽさのある声色。
一方、今回の楽曲はメロウで、大人っぽく、少し色気のある世界観でした。
そこで、
「今日はちょっと、大人の男の声を探してみようか」
という実験を始めました。
具体的にやったことは、かなりシンプルです。
僕から、
「結構あくびをしているようなモードで歌ってみて。今日は実験だから、“これやりすぎじゃない?”くらいまでやって大丈夫」と伝えました。
そしてiPhoneのボイスメモで、実際に録音しながら何パターンか歌ってもらいました。
本人の体感としては、
「いや、これ結構やってますよ。かなり不自然な感じします」
という状態。
でも、録音を聴き返してみると……
声に豊かさが出て、少年っぽさが少し減り、楽曲に合う大人っぽい色気が出ていました。
本人も聴いた瞬間、
「え、めっちゃこの声いいですね」とびっくり。
自分では「やりすぎ」と感じていた声が、外から聴くとちょうど良かったんです。
歌っている本人の体感と、実際に外へ聞こえている声は、必ずしも一致しません。
新しい声色を使えば、本人にとっては当然「いつもと違う」ので、違和感があります。
でも、違和感がある=悪い声とは限らないんです。
だから声色を探す時は、
・少し極端なくらい試してみる
・録音する
・外から聞こえる結果を確認する
・そこからちょうどいい場所へ戻していく
という実験がとても役に立ちます。
レッスンの最後、そのアーティストがニコニコしながら、
「今日、家帰ったらすぐ録り直してみたいです。もう早く作業したいです」
と言って帰っていきました。
こういう瞬間はとてもいいですね。
新しい技術を一つ覚えたというより、
「自分の声って、こんな音も出せるんだ」
という新しい可能性を本人が発見した瞬間だったと思います。