桜田ヒロキ2026年1月18日 11:27 pm
【歌手の発声障害。医療チームから発声治療を受けたのに「治らない」と感じる理由】
発声障害で医療機関を受診した歌手や声を使う仕事の方から、
「治療を受けたが、思ったように改善しなかった」
という声を聞くことは少なくありません。
検査では大きな異常が見つからず、それでも歌うと声が詰まる、思うように出ない。
こうした違和感は、決して珍しいものではありません。
【現場で多く聞かれる治療内容】
これまでの治療内容を尋ねると、
「喉頭マッサージを受けた」
「ストロー発声などの練習をした」
という回答が非常に多く見られます。
これらは安全性が高く、短時間で声が楽になる感覚を得やすい方法です。
発声治療の現場で広く用いられているのも、自然な流れと言えると思います。
【治療が似通ってしまう背景】
喉頭マッサージやSOVT(ストロー発声など)は、患者にとって効果を実感しやすく、医療側にとっても再現性が高いリハビリ手段です。
そして研究でも一定の成果が上げられています。
そのため、初期対応として選ばれやすく、結果的に治療内容が画一的に見えてしまう構造があります。
【歌唱が「楽になった」と「治った」は異なる】
声が楽に出るようになること自体は、回復に向かう大切なステップです。
しかし、それだけで発声障害が根本的に解決したとは限りません。
特に歌手の場合、会話では問題がなくても、歌唱のような高い負荷がかかる場面で再び症状が現れることがあります。
このズレが、「治療を受けたのに治らない」という感覚につながります。
【歌唱と会話の決定的な違い】
歌唱は、音域・音量・音色・母音変化など、日常会話とは比べものにならないほど複雑な発声タスクです。
診察や評価が会話中心になると、歌唱特有の問題が十分に評価されないまま治療が進むこともあります。
「異常なし」と言われたが歌えない、という状況は、この評価のギャップから生じることがあります。
【治療を否定したいわけではない】
ここで重要なのは、喉頭マッサージやSOVTが間違っている、という話ではありません。
(桜田の歌唱におけるリハビリでも用いられる手法です!)
これらは発声治療において重要な役割を果たす、有効な手法です。
問題は、それが治療のすべてになってしまったときに、歌手が本当に必要としている改善に届かなくなる可能性がある点です。
【なぜこの問題を整理する必要があるのか】
発声障害が長引いたり、再発を繰り返したりする背景には、治療内容と、実際に求められる発声能力とのズレがあります。
この構造を理解せずにいると、「努力が足りない」「体質の問題」と誤解されがちです。
だからこそ、発声治療の現状を整理し、歌手の立場から考え直す視点が必要になります。
【次に考えるべき視点】
では、なぜ発声治療はこのような構造を持ち、それが「治った気がする」で終わってしまう原因になるのでしょうか。
次回は、機能性発声障害の捉え方や、発声がどのように学習され、固定化されるのかという視点から、この問題をさらに掘り下げていきます。