金子 恭平2025年11月6日 10:21 am
【風邪を引いたときの練習】
風邪やインフルエンザの季節になりました。
上気道炎(風邪の症状)を患うと、やはり発声が難しくなります。
ぼくも10月の終わりごろに風邪を引いて、なかなかにつらい思いをしました。
ファルセットがかすれて出ないようなら、その場合は声帯そのもののダメージが深刻であると考えられます。
無理をせず、なるべく声を出さないようにして過ごしましょうね。
逆に、ファルセットが問題なく発声できるときは、ぼくは風邪を引いていてもある程度の練習をします。
長時間のセッションや強い高音などは控えますが、ヘッドボイス寄りの声によるブリッジング(換声点の乗り越え)などはおこなっておいたほうが、調子を崩さないですむ感覚があるからです。
では、どんな練習法が上気道炎の罹患時にふさわしいのでしょうか?
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▼SOVT
真っ先に推奨されるのが、Semi-Occluded Vocal Tract exercises(声道準閉塞エクササイズ)です。
リップバブル、タングトリル、パフィーチーク、ストローエクササイズなどの象徴的なバリエーションのほかに、ZやVの発音を用いる方法もあります。
これらの練習法の共通点は、その名のとおり声の通り道を半ば塞ぐようにしておこなうこと。
それにより、唇から声帯方向に向かう適度な逆圧が得られ、無理のない声門閉鎖の感覚を思い出させて――あるいは教えて――くれます。
また、肺からの呼気圧と口からの逆圧が声帯を挟み込む形になるため、マッサージ効果が高いとされています。
上気道炎でなくとも、疲れた声帯のリカバリーなどに最適なエクササイズです。
以前にも書きましたが、発声が上達するほどリップバブルなどを上手に練習として使えるようになります。
発音をつけて歌うときの感覚がリップバブルと似通ってくるからです。
以前なら違いましたが、現在のぼくが一日にひとつだけエクササイズをおこなうならリップバブルを選ぶと思います。
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▼ポルタメント
音程をスライドさせる練習もお勧めです。
まずは高い高音をファルセットあるいはヘッドボイスで発声して、スムーズに音程を下降させていき、軽いチェストボイスに着地しましょう。
ブリッジングの感覚がつかめていない方は、チェストボイスに切り替えるのはかなり低い音でもかまいません。
すでに高い技術をお持ちの方は、低音(チェスト)→高音(ライトミックス)→低音(チェスト)という方法でおこなうとより効果的です。
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▼無理は禁物
技術を錆びつかせないために、多少の不調のときでも低強度練習を続けることを提案してきました。
とはいえ、上気道炎にかかっているときは声帯や咽頭や鼻腔が腫れているのは事実です。
気分が乗ってきても、強い声を出したりするのは控えましょうね。
「歌っているとどうしても声を張り上げたくなっちゃうんだよね!」という元気いっぱいな方は、風邪のときは歌わないと決めてしまったほうがいいかもしれません(笑)。