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桜田ヒロキ2025年10月3日 7:30 pm

【歌手の発声障害はなぜ治療やリハビリが難しいのか?】
「病院で異常なしと言われたのに、歌うと声が詰まる」——歌手なら一度は耳にしたことがあるでしょう。会話では問題がないのに、歌になると不調が顕著に出る。このギャップこそが、歌手の発声障害の難しさを物語っています。

医療の評価は「会話」が基準
病院での検査では「地声でいー」「裏声でいー」といった簡単な発声が中心です。これは日常生活で声が使えるかどうかを診るためのもの。ところが歌唱は、母音や子音の組み合わせ、音程や強弱のコントロール、表現としての声色など、はるかに複雑な要素が絡み合います。
そのため、検査では問題が見つからず「異常なし」とされてしまうことが多いのです。

-会話と歌唱の要求水準の違い-
会話に求められるのは「言葉が聞き取れるかどうか」。
一方で歌唱には、2オクターブ以上の音域を操り、声を自在にコントロールする能力が必要です。
つまり、会話で問題がなくても、歌唱では大きな支障が出るのは当然のことなのです。

-検査に映らない歌手の声の不調-
ある歌手が「G4とC5で地声、D4で裏声にするとザラつきが出る」と訴えたケースがあります。しかし医師は「そんな患者はいない」と通常の検査しか行わず、歌唱特有の問題は見逃されました。
研究でも「歌唱を前提とした評価体系が整っていない」ことが指摘されており、医療評価と歌手の現場感覚の間には大きな隔たりがあります。

-リハビリが難しい理由-
機能性発声障害のように診断基準が統一されていないものも多く、会話だけでは判断できないケースが数多く存在します。
そのため医療現場では「生活に支障がない」と判断されても、舞台やレコーディングでは全く声が通用しないという状況が起こります。
歌手に必要なのは、日常生活のための「リハビリ」ではなく、表現を取り戻すための「ハビリテーション」です。

-ボイストレーナーの役割-
ここで重要なのがボイストレーナーの存在です。医療検査だけでは掴みきれない「歌唱の中での異常」を具体的に評価し、改善に導けるのは専門的な指導者だからこそ。
声の専門医とボイストレーナーが連携することで、会話と歌唱の間にあるギャップを埋め、歌手の声を守る道が開けます。

-まとめ-
歌手にとって声は単なる「道具」ではなく、表現そのものです。だから「検査で異常なし=安心」ではなく、「歌唱の現場で問題が解決しているかどうか」が本当に重要な基準なのです。

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